23# 俺の物は俺の物、お前の物も俺の物!
なんかキャラクターのディテールばっかりこだわってたら、時間かかっちゃった(笑)
絵師さん募集中!!
遠くの方で銃声がする──。俺は微かに瞼を起こすと隣りのガストが、トラックの窓から身を乗り出しライフルをぶっ放していた。
「ガスト何やってんの?」
「バカ!やっと起きやがったか!盗賊団だ!前見ろ前!」
俺はシートに浅く腰掛けたまま、朧気な頭を起こす。
外は夕暮れで、砂漠のあちらこちらにはデッカい鳥に乗った人達がトラックを包囲せんと近づいてきていた。
俺はすぐさま医療用眼帯を外す。丁度良い。A.Tが発動するか試してやろうじゃないの。
『showtime!』
現状に不釣り合いな煌びやかな文字が虚空に浮かぶ。俺は安堵感を覚えながら、ベオウルフを手に取る。
騎乗の盗賊は敵総数から見て、二十人。前方に居るのは十人、targetマークを見ても画面の両脇を差して居ることから後方に残りが居るのだろう。
先ずは、前方の十人か。とトリガーを引き絞る。
連射でベオウルフで盗賊を騎乗から撃ち落としたのは良いが。うっかりフロントガラス越しに撃ったので、ガラスが散乱する。
ガストはスローで振り向いて驚いた顔を見せる。
俺はゴメンちゃい☆と右目を瞑るとガストが口を開いた。
「テンメェ!何やってんだよ!ざけんなよっ!」
あれ?なる程、片目ならどっちを瞑ってもA.Tは発動しないんだ。つまり片目なら体感時間が元に戻るのね。
俺はガストを無視して、弾切れのベオウルフをガンホルダーに差し込むと、蛮族ブレードを手にする。弾痕だらけで割れたフロントガラスを蹴り飛ばし、逆上がりの要領でトラックの屋根に登った。
するとすでに、荷台の荷物を手に掛けている盗賊達と目があった。
「人のモノを盗っちゃ、ダメだろ?」
片目を瞑りながら、少々余裕ともとれる事を呟くと盗賊達はさっと持っていたダガーを構え臨戦態勢を取る。流石は盗賊団と言った所で、連携を図るため俺を囲む様にジリジリと陣形を作る。
まぁなんて言うか……俺には関係ねぇしな。盗賊なんかの戦闘方法に興味もない。まとめてぶっ飛ばす!
と両目を見開きA.Tモード全開の俺は片っ端から蛮族ブレードで叩き伏せ、ブン投げた。
だいぶA.Tモードにも慣れて、完全に自分のモノに出来たといっていい。
少し遊んでみるか?踏み込む地面が砂地だと足が埋まる。その辺を加減しながらナイフをかわしショルダータックル。そのまま肩でかち上げ、真上に吹き飛んだ盗賊の腹を蛮族ブレードの切っ先で受ける。
こうなんか、昔の火消しとかが祭りで見せる梯子芸みたい。ちなみに蛮族ブレードの切っ先は平坦で盗賊の腹は分厚いレザーアーマーが覆っているのでケガすることはないだろう。
「え?うえ?」
俺は片目を瞑りながら、盗賊の様子を眺めてた。蛮族ブレードの上であたふたしている。そして回す。皿回し的な感じで。
盗賊は「あ゛あ゛ぁぁー!!!」と叫びながら遠心力で四肢を伸ばす。
いつもより多く回っております!
はははやべ、ちょっと楽しい。
散々回したあげくに飽きたので、地面に落とす。
目を回している盗賊の腹に腰を下ろし、首元に蛮族ブレードを擦り付けた所で『DESTROY(殲滅)』と視界一杯に表示するA.I。
周囲には苦しそうな嗚咽しか聞こえてこない。完全に押さえ込んだ盗賊も「え?あれ?」と言うばかりで現状を理解してない。
「あきれたな」
と、現れたガストに俺も「そうだな」と言うとガストは、「お前だよ」と溜め息を漏らした。
その後ガストは俺が尻に敷いている盗賊の前でしゃがむ。
「どうするかねぇ」
と微笑んだ表情は補食する者がどう調理しようか悩んでいるような歪さを含んでいた。
「お、俺達が”砂塵の竜“だと知ってんのか?ははは、お前は後悔するぞ?俺を殺せば後から俺の仲間がお前の殺しにやってくるぞ!」
尻の下でバタバタと暴れる盗賊。目を覚ましたみたいだ。
「だそうだ。どうする?」
とガストが俺に意見を求めた。
「うるさいから埋めるわ」
「そうだな」
すると盗賊は急に大人しくなり今度は「すいません!命だけは助けて下さい!」と耳をつんざく泣き声で命乞いを始めた。
典型的な小物だな……。
「ガスト、首から上だけ出して埋めるか」
「そりゃあ良い。ヴァンガードが見つけてくれるかどうかはコイツの頑張り次第ってヤツだな!」
「え?そりゃああんまりだ!」
「なんか不満みたいだな、やっぱ全部埋めよう」
「そうしよう」
「ソレでお願いしますぅぅ!!」
結果。砂漠の上に生首が並ぶ異様な光景になった。なんかスイカ畑みたいだ。ちなみにケガ人は応急手当てだけして、す巻きにされ同じく並んでいる。絶景かな絶景かな。
「二度目は無い」
そう何度も脅しながらトラックに戻った。
ガストはと言うとトラックに備え付けてあった電話みたいので連絡している。おそらくヴァンガードだろう。
乗る前にトラックの後部を見ると、なんか幌馬車?みたいのが連結されてる。
「ガスト、後ろの何だ?」
俺はガストが電話を切ったのを見計らって声をかけた。
「修理代だよ。誰かさんがフロントガラスぶっ壊したてくれたからな!」
ガストは顎でフロントガラスを差す。恐らくあの幌馬車は盗賊の持ち物だろう?
「盗品だろ?」
「心配ない、漂流街にゃ捌けねぇもんはねーんだぜ?」
ニヤリと笑うガスト。
ガストは俺の心配してる所がわかってないけど、まあ迷惑料と修理代で納得するか。そもそもこいつらが悪いんだしな。
「あいつら死なねーかなぁ?」
ほら、やっぱ夜は寒いしさ。
「賭けるか?俺は死なない方に千Cな」
「自信あるのか?」
「砂の中の方が暖かいんだよ」
なるほど、朝方にヴァンガードがやってくればめでたく逮捕か。
そこでようやく落ち着いた俺は、ダッシュボードに脚を投げ出す。
「じゃあ俺は死ぬ方にガストの命を賭けるわ」
「おーい!おーい!何勝手にオレの命賭けてんの?理不尽すぎないか?いろんな意味でショックだぞ」
「博打ってのはいつも理不尽だし。賭ける方が馬鹿だろ?」
ガストは「ちげーねーな」と言って笑い。トラックを走らせた──。
A.T復活しました。行きはよいよい帰りは怖い。怖いながらもとうりゃんせとうりゃんせ!(?)
次回へのヒント:王の帰還