負け犬
ベルカの足取りを編末毎に番外編として書いて行きます。
side:ベルカ=ウィンチェスター
負けた。突然現れた”赤いヤツ“カイゾウによって今まで積み上げてたものが簡単に消え去った。
まるであらかじめ用意された咬ませ犬の様に……。
ザスッ
地面を殴る。
なんのために俺は沢山の邪魔者を蹴散らして来たのか。騙し裏切って来たのか。全ては『力』を手に入れ、漂流街を支配するためだったハズだ。
なぜだか涙が零れた。いや、理由はわかってる。悔しいのだ。考え得る最強の猟犬部隊がヤられた事に清々しささえ覚えている自分の貧弱さに。俺とアイツの器の大きさを嫌って程見せ付けられた事に。俺は選ばれなかった事に。誰でもねぇ。”時代“に選ばれなかったんだ。
それに生き延びていると言う自分の女々しさにも腹が立った。死に場所を逃したんじゃないのか?そんな答えの無い疑問が逡巡する。
「負け犬か……」
認めてやる。現在の俺は自他共に認める『負け犬』になったのだと。もうフォンドの縄張りにはいられない。西か東かどこかへ行くしかない……。
砂海に吹く乾いた風で涙で湿った目元に砂がこびり付く。
何処など目指すモノもなく、誰など目標もなく。ただ野良犬の如く俺はアルティメアの大地をさ迷うだろう……。
「ニコ」
誰もいない。そうか俺は本当に全部亡くしたんだな。
ふと、思う。俺はどうして漂流街を統一したかったのかと。
金が欲しかったのか?偉くなりたかったのか?最初は違ったハズだ。
俺はニコに尊敬されたかったんじゃないのか?偉い兄貴に、強い兄貴に、成りたかったんじゃないか?
それなのにいつの間にか俺は──。
俺は東へ向かうキャラバンに相乗りさせてもらう事にした。
次に漂流街へ帰って来る時は、きっと──。
side end
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