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ラジカライズアワー  作者: 九郎士郎
漂流編
17/39

17# 戦後処理

 さあゴタゴタしてきましたよ!


 トゲ男(あだ名)が狂犬を背後から拘束しながら泣いている。向かって来たから殴ったけど、ちょっと力入れ過ぎたみたいだ。

 ニコの症状は元に戻っていて大丈夫そうだが、ハンパない出血に心配そうな表情で見上げている。マチゾーはやたらと興奮し俺の顔を舐めていて、ム○ゴロウさん状態である。


「テメェ!ブッ殺す!」

 狂犬が吠える。トゲ男が抑えてるにも関わらず顎を突き出して前進してくる。


「どうしたもんかねぇ?」

 うーんと唸り腕を組んで現れたのはベージュのトレンチコートに丸サングラスのガストだった。『爆』の字のトランクも持っている。


「ガスト。コレは俺の仕事だ」

 俺がそう言うと、ガストはニコと俺を見てニヤリと笑いトランクに腰を下ろした。コイツ……まだ俺をロリコン野郎だと思ってやがるのか?ムカつくから後でぶん殴る。絶対に殴る。

 俺はニコに目線を合わせ向かい合う。


「ニコどうする?話すか?」

 ニコは頷いて振り向いた。狂犬はニコを睨んでいる。


「なんだコラ」

「兄ちゃん!ニコ、ギルドで働く!」

「……」

「兄ちゃんもギルドで働こうよ!」

 ニコの発言にガストは驚いた後、ニヤリとまた良からぬ思案を巡らせていたようで。胸元から出した扇子でパシっと膝を打った。


「良い!狂犬よ。どうせアンタもタダじゃすまねぇんだろ?ギルドに来なよ。一緒に漂流街を守っていこうぜ!」

 ガストが頭に扇子を当てながら、さわやかな白い歯を輝かせて狂犬に握手を求めた。


「冗談じゃねぇ!誰がテメェ等と!天地がひっくり返ったってあり得ねぇ!俺はお前らに復讐する!絶対にだ!」

 狂犬は三白眼をギラつかせ噛み付くように叫んだ。


「ああ楽しみに待ってる」

 と俺が狂犬に言った。

 狂犬はトゲ男の拘束を力ずくで解き。俺の前に立ちはだかる。殴りかかるでもなく、ジッと睨んでいた。


「テメェの名前はなんだ?」

「改蔵 榊だ」

「カイゾウ=サカキだな」

 それを聞くと狂犬は踵を返し、歩きだした。


「ニコの事はまかせろ」

 そう俺が狂犬の背中に言うと、狂犬は一度足を止め「ブッ殺す」と呟いて去って行った。

 負け犬の遠吠え?いや、最後の『ブッ殺す』には怒りだけじゃない何か決意の様なものがあった、ヤツの牙は折れていない。狂犬がこれからギルドにとって脅威なるかもしれない。が、それは俺の知った事じゃない。

 俺は便利屋でニコの願いを叶えただけなのだから。


 終わった。戦いは終わったんだ。そう思うと急にズシリと身体が重い。足元もふらつき、左目の激痛が再びぶり返す。視界も歪み、なんだか気持ち悪い。ああ……クソ、俺の意識は暗転していった──。



side ガスト=ブライトリング 


「おい!ハウンドをたった一人で全滅させたって言う便利屋がいると聞いたんだが!」

「そうだガスト!そいつに合わせろ!」

「カイゾウさんのギルドに加えてくれ!」

「ガストさん是非!漂流街の名だたる族を壊滅させ、ギルドの威光を世間に知らしめたわけですが!そこんとこ一言!」

「カイゾウさんケガしたってのは本当か?!」


 午前九時──ギルドは便利屋、一般人、族、新聞記者でかつて無い程ごった返していた。

 今オレ様は中二階のドアの前で人波を抑えている状態だ。


「えー。コホン。カイゾウに会いたい方は、募金箱を回すので一人銀貨二枚を入れてギルドに貢献していただきた「うるせぇ!守銭奴!」「商売すんな!」……」

 このままだと暴動が起こりそうである。オレはドア開け身体を滑り込ませると鍵をかけた。なおも激しいノック。

 オレは慌ててある一室の扉を開ける。


「カイゾウ!ダメだ!オレ様の口先でも抑えきれん!」

 カイゾウは椅子に座り、マスターに包帯を巻かれてた。

 ニコは目を赤くして立ち尽くしている。


「そう言うのをなんとかすんのがテメェの仕事だろ?」

 カイゾウは包帯の隙間から赤い右目を向けて言った。


「カイゾウ。左目の出血は止めたが詳しく検査した方がいいな」

 そう言ったマスターが包帯を縛り終えて。オレに向き直った。


「カイゾウを『エース』の所へ連れて行ってくれないか?」

「嫌だ。どうしてあの変態医者のトコへ行かなきゃならんのだ」

「カイゾウの目が見えなかったらお前さんも困るだろう?」

「ぐ……」

「変態?」

 オレとマスターの会話にカイゾウが疑問顔を向ける。

 『魔女』の異名を誇る『エース』は医療技術は折り紙付きだが医師免許を剥奪された『闇医者』である。元々上流街の医者にかかる事の出来ないオレ達は度々厄介になるのだが……まあ、変態なのだ。説明するより、会った方が早い。


「会えばわかる。まあ……どっちみち中流街(ミッドタウン)には用事があるしな、だがその前にカイゾウには一仕事してもらうぞ」

 オレはヤンヤうるさい酒場を指差した──。


side end



 マスターとガストが部屋を出て言った後、俺は包帯の表面、左目の辺りをなぞった。

 どうしてA.Tが切れたのか?目に原因があるのか?よくよく考えれば時間が遅くなるわけじゃなく、動体視力が極限まで引き上げられたのがA.Tだとするならば、目に負担が掛かるのは必然だ。治るまでA.Tが使えないとすると非常にマズい。

 後で町蔵に相談してみよう。何か良い考えを貰えるかもしれない。

 椅子に腰かけながらマチゾーの耳を弄っていると、ニコが涙目でジッと俺を見つめていた。


「ニコがお願いしたから……神様は目をケガしたんでしょ?」

「だから神様じゃないって」

「神様だもん!兄ちゃん助けてくれたでしょ?」

 ニコは納得いかないのか眉尻を下げて、下唇をぷっくりと突き出した。

「……兄ちゃんを助けたのはニコがそう願ったからだよ。俺がケガしたのは調子に乗ったからだ。さ、俺は仕事をした。報酬を貰おうか?」

 ニコはハッとして慌てて部屋を出て行った。俺は寝ていたかったがそうも行かない。つーか町蔵とコンタクト取るのに、一方的と言うのは不便過ぎる。

 マチゾーの耳を引っ張ると「にゃ!」とちょっと怒った──。


 俺が酒場に顔を出すと一瞬の沈黙の後、割れんばかりの野太い歓声と拍手が辺りを包んだ。

 握手を求める人。拝む人。写真と取材する人など色々だった。


「ハイハイ!うちの便利屋は疲れてんだ。これ以上無闇に触らないように!仕事の依頼は明日から!便利屋と(トライヴ)以外は帰ってくれ!」

 パンパンと手を叩くガスト。ギルドに詰め掛けた人達はガストに文句をこぼしながら渋々帰って行った。


 一段落した所でガストは俺をカウンター席に座るように言った。自分はその脇に立ち、便利屋達、族達に向き直る。


「今日からここにいるヤツらは全員ギルドの便利屋だ!」

 便利屋、族とケガ人だらけの酒場は酷くごたついた。


「文句があるヤツは前に出ろ。カイゾウがボコボコにするぞ!」

 俺かよ!虎の威を借る狐とはお前の事だ。こんな躊躇もなく他力本願なヤツは見た事がない。

 しかしどうやら効果は絶大だったようで、皆背筋が伸びて俺と目を合わせない。若干一名だけキラキラとした細目で見つめる男がいた。トゲ男である。


「君、名前は?」

「ハイ!俺はブルーキングスのヘッド、バカラ=ハザードです!」

 馬鹿らハザード(緊急)?緊急馬鹿か。名前合ってるなぁなどと考えていると、ガストが大きな台帳を俺の横、カウンターに広げた。


「さぁ、新生ギルドのスタートだ。改めて名前を書いてくれるか?」

 ガストが万年筆を突き出す。

 俺は片手を伸ばし漢字で『榊 改蔵』と書き込むと、ガストは目を丸くして「東亜語か」と驚いていた。そして自らも筆記体で名前を下に書く。


「よし!じゃあ順番に名前を書いて行ってくれ!」

 ガストは扇子で顔を仰ぎながら酒場のヤツらに言った。


 それから新生ギルドの便利屋達は名前を書き込んだ後、俺と握手すると言う、訳の分からないルールの下。台帳を埋めて言った。


 ガストは満足そうに台帳を持ち上げると、俺に不気味な笑みを浮かべた──。






 

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