Chapter11ターヘルVSディネックス大佐
ディネックス大佐は、ターヘル・アナトミアをスパイクで貫いたまま、各階の床を次々と突き破りながら落下を続けた。
落下の最中、ターヘルはディネックス大佐の顔面に拳を連打で叩き込む。
ディネックス大佐は彼女の頭を掴み、激しい頭突きを加えたあと、膝を腹部に深く沈めた。
さらに脚を捕らえ、十階の床へ全力で叩きつける。
もう一度持ち上げて叩きつけようとした瞬間、ターヘルは義足の内部から「スローン・ヴェックス・ダガー」を引き抜き、敵の手を斬りつけた。
ディネックス大佐が激痛に絶叫し、二人はそのまま一階まで墜落した。
瓦礫の中から這い上がったターヘルは、額のオイルと血を拭い、ゆっくりと立ち上がる。
息苦しさに耐えかね、胸部のプレートアーマーを外し、肺ユニットに空気を送り込んだ。
徐々に回復の兆しが見え始める。
その時、金属の擦れる音が響いた。
ディネックス大佐が瓦礫を掻き分け、這い出てくる。
口元からオイル混じりの血を吐き捨て、彼女を睨みつけた。
「お前は、夫や息子よりよほど勇敢だな」
その言葉が、ターヘルの理性を吹き飛ばした。
激昂した彼女は跳躍し、胸部へ向けて強烈なフライングニーを叩き込む。
ディネックス大佐は変形した双刃でそれを防ぎ、邪悪な笑みを浮かべた。
続けて、ターヘルを真っ二つにしようと横薙ぎの斬撃を放つ。
彼女は後方へ大きく跳び、間一髪で回避。
着地と同時に側面へ回り込み、死角を狙った。
ダガーを逆手に持ち、頭部の背後から突き刺そうとする。
だが、ディネックス大佐はターヘルの動きを完全に予測していた。
背中を硬直させ、無数の大型スパイクを一斉に射出。
ターヘルは咄嗟に横へ転がり、大半を避けたものの、数本がアーマーを削り、肩と脚をかすめた。
背後から射出された無数の大型スパイク。
ターヘルは咄嗟に身体を捻り、回転しながら間一髪でそれをかわした。
しかし勢いが止まらず、近くの柱に激突。
「ぐっ……!」
左脚の側面を強く打ち、彼女は片膝をついて痛みに耐える。
ディネックス大佐は高らかに笑い、両腕の双刃を融合させ、巨大なバトルアックスへと変形させた。
斧の刃が青白く輝き、周囲の空気を震わせる。
「家族の元へ行け!!」
ディネックス大佐は斧を高く掲げ、ターヘルの首を刎ねようと振り下ろした。
だが、ターヘルは決意の瞳を輝かせ、横へ転がる。
斧が柱を真っ二つにし、コンクリートが粉々に砕ける。
ターヘルは低く蹴りを入れ、ディネックス大佐の内腿を狙う。
続けて逆方向へのハイキックが、金属の顔面を捉えた。
衝撃でディネックス大佐の頭部が後ろへ跳ね、火花が散る。
ディネックス大佐は苛立ちを隠さず、再び斧を横薙ぎに振るう。
ターヘルは連続でその攻撃を紙一重でかわし、ダガーを閃かせて反撃。
刃がディネックス大佐の装甲を削り、浅い傷を何度も刻んでいく。
激しい戦闘が続き、ターヘルの息は荒く、脚が震え始めていた。
義肢の関節が軋み、傷口から血が滴る。
ディネックス大佐も首筋の損傷を押さえ、オイル混じりの血を斧の柄に塗りながら、ターヘルを睨みつけた。
ターヘルはダガーを強く握りしめ、再び突進。
側面へ回り込み、死角を狙う。
ディネックス大佐は即座に反応し、バトルアックスを解体――無数のスパイク付きチェーンへと変形させた。
チェーンが蛇のようにうねり、ターヘルへ向かって射出される。
ターヘルは捕食者のごとき動きで、ほとんどのチェーンをかわした。
低く滑り込み、ドロップキックをディネックス大佐の左膝に叩き込む。
重い衝撃で膝装甲が凹み、ディネックス大佐が片膝をつく。
怒りに満ちたディネックス大佐は、チェーンを乱暴に振り回した。
ターヘルはチェーンをダガーで弾き、一瞬の隙を突いて跳躍。
ダガーがディネックス大佐の右肩を深く貫き、固定した。
「ぐあああっ!!」
ディネックス大佐が初めて本物の苦痛の声を上げる。
ターヘルはダガーを捻り、傷口を広げながら、冷たく低く呟いた。
「……これで、終わりよ」
だが、ディネックス大佐の赤い光学センサーは、まだ消えていない。
肩を貫かれたまま、彼の左腕がゆっくりと動き始めた。
ターヘルの表情が、わずかに硬くなる。
戦いは、まだ終わっていなかった。




