Chapter1息子と夫のため
オナルムス市では、ギャング同士の抗争が市内全域で爆発的に広がっていた。
フォーセイクンズとアイボリー・ヴァルチャー・カンパニーが激しく衝突しているのだ。
無垢な市民たちは命からがら逃げ惑う中
フォーセイクンズは重プラズマガンを建物に向けて乱射し、数多くの一般人を殺害していた。
一方のアイボリー・ヴァルチャー・カンパニーはフュージョンキャノンで反撃し
フォーセイクンズのLWSSウルヴァリンを次々と撃ち落としていく。
965フラックス・タワーの頂上では、金髪の女性が怒りと決意に満ちた瞳でアンチタンク・ガトリングライフルを装填した。
彼女は躊躇なくタワーから飛び降り、空中でLWSSウルヴァリンに照準を合わせ、引き金を絞る。
轟音とともにウルヴァリンが爆発し、炎を纏った残骸が街路へと落下していく。
アイボリー・ヴァルチャー・カンパニーのメンバーたちは呆然として空を見上げた。
金髪の女性――ターヘル・アナトミアは、優雅に着地すると、両ギャングの前に立ちはだかった。
瞬時にアンチタンク・ガトリングライフルを掃射し、敵の隊列を次々と粉砕していく。
彼女が両勢力を相手に猛攻を続ける中、通信機から上司の声が響いた。
「ターヘル・アナトミア! ギャングとの交戦は命じていない!」
しかしターヘルは返事をせず、攻撃の手を緩めなかった。
インファーナル本部では、司令官のトーマス・ブルックスが苛立ちを抑えきれず拳を机に叩きつける。
「我が隊で最強の二人を派遣しろ。ギャングを片付け、同時にターヘルを本部へ連れ戻せ!」
そのころオナルムス市では
ターヘル・アナトミアは、残るアイボリー・ヴァルチャーとフォーセイクンズの構成員を容赦なく仕留めていく。
アンチタンク・ガトリングライフルを連射しながら、彼女は静かに呟いた。
「これは……私の息子と夫のためよ」
巨大な足音が響き渡り、ターヘルは警戒した。
闇の中から、巨大な影が現れる。
彼女が顔を上げると、そこにはキースボット・プライムが立っていた。
融合キャノンをこちらに向け、照準を合わせている。
決意の瞳を輝かせたターヘルは、即座にキースボット・プライムへ突進しながら、ガトリングライフルを連射した。
キャノンの砲口を狙い、弾丸を叩き込む。
キースボット・プライムは巨大な手を振り上げ、全力で彼女を押し潰そうとする。
ターヘルは素早く横に跳び、足元へスタンダード・プロトン・グレネードを投げつけた。
爆発が巻き起こり、敵はバランスを崩して地面に倒れ込む。
ターヘルは倒れた隙を逃さず、顔面へ向けてガトリングライフルを浴びせ続ける。
するとキースボット・プライムはガントレットを開き、フラッシュバンを発射。
強烈な閃光がターヘルの顔面を直撃し、視界を奪った。
ターヘルは両手で顔を覆い、必死に視界を取り戻そうともがく。
キースボットは再び融合キャノンを構え、今度こそ発射態勢に入る。
その時空からエンジン音が響いた。
派遣の高速艇STSアレクサンドリアだ。
「ターヘル・アナトミアは援護が必要みたいだな!」
側面ハッチが開き、インファーナル本部屈指の格闘戦士が飛び出した。
ターヘルは迫る死を覚悟していた。
しかし次の瞬間――
鋭い斧のような蹴りの音が響く。
目を向けると、そこにはパンサー中隊の隊員がいた。
「ニキ……? どうしてここに!」
ニキは返事の代わりに、倒立からの回転蹴りを繰り出し、融合キャノンを粉々に破壊する。
「助けに来たのよ、ターヘル・アナトミア!」
ニキはキースボット・プライムを睨みつけ、迷わず突進していった。
STSアレクサンドリアがターヘルの背後へ着陸すると、ドアからニキの姉のラキが飛び出してきた。
「ターヘル・アナトミア!!!」
ターヘルが振り返ると、ラキはすでにバキューム・ドライブ・ジェルを起動させていた。
「腕を直してあげる!」
ターヘルは素直に腕を差し出し、ラキに治療を任せる。
「司令官は一人で動かないでって言ったのに! 奴らと同時に戦うなんて!」
ターヘルは口元に溜まった血を吐き捨て、再び戦場へ視線を戻した。
その頃、ニキはゴーストのような動きでキースボット・プライムのミサイルの弾幕をかわしていた。
肩の上に跳び乗り、中段蹴りでミサイルショルダーキャノンを破壊。
キースボットは反対の手で叩き潰そうとするが、ニキは肩から飛び降り、落下肘打ちでその右手も粉砕する。
怒ったキースボットは融合キャノンを構える。
照準を合わせ、今まさに発射しようとしたその瞬間――
「よし、腕の修理完了よ、ターヘル!」
「ありがとう、ラキ!」
ターヘルは素早くガトリングライフルを手に取り、融合キャノンへ正確に狙いを定める。
そして引き金を絞った。
放たれたアンチタンク弾はニキの頭すれすれを通過し、キャノンの中心を直撃。
轟音とともに融合キャノンが爆発し、キースボットの左腕が木っ端微塵に吹き飛んだ。
「助かったよ、ターヘル!」
「まだ礼を言うのは早いわ、ニキ!」
二人は同時にキースボットを見据え、互いに頷くと――
同時にとどめを刺すべく、猛然と突進していった。
ターヘルはガトリングライフルを連射し、キースボットの胸部装甲を次々と貫いた。
弾丸が集中した箇所に、明らかな弱点が生まれる。
「今よ、ニキ! とどめを!」
ニキは即座に反応し、キースボットの胸の中心へ突進した。
ロケットレッグを起動させ、地面を蹴る。
空中高く跳躍したニキは、全身の力を込めた残虐なフライングニーを弱点に叩き込む。
轟音とともに、コアが粉砕された。
キースボットの両眼が光を失い、巨体が地響きを立てて崩れ落ちる。
ニキは長い青い髪と顔に飛び散ったオイルを拭いながら、ターヘルのもとへ駆け寄り、強く抱きしめた。
「一人で戦っちゃダメだよ!」
だがターヘルは静かにその腕を振り解き、無言でSTSアレクサンドリアの方へ歩き出す。
ラキとニキは、そんな彼女の背中を見つめていた。
二人の姉妹にははっきりとわかった。
ターヘルが、暗い道へと踏み込もうとしていることが。
「ねえ、ニキ……本当にこの街を片付けたら、ターヘルは心の平穏を取り戻せると思う?」
「そう願うしかないわ、ラキ姉……」
二人は急いで後を追い、STSアレクサンドリアに乗り込んだ。
ターヘルは操縦席に座ると、ガトリングライフルを脇の小さなテーブルに置く。
ポケットからネックレスを取り出し、そっと開いた。
中には、家族の写真――夫と息子の笑顔が収められている。
写真を見つめるターヘルの頰を、静かに涙が伝った。
「ごめんね……あなたたちを守れなくて……」
小さな声で呟く。
組織間の抗争で、夫と息子を奪われたあの日の記憶が蘇る。
金属の身体が震え始め、悲しみに満ちていた瞳が、徐々に激しい怒りに変わっていく。




