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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

新への受け止め

掲載日:2026/03/01

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 いよいよ3月に入ったな。

 この月って学期の終わりって意味じゃ、義務教育を経ている我々にとっちゃあ、なんだが不思議なタイミングに思えないか?

 12月は新年に向かってひた走り、3月は新学期に向かってひた走る……一年のうちにダッシュしなくちゃいけない時期って印象だ。まあ、こちらはひょっとしたら一休みできるかもしれないけれど。

 一年の振り返りっていうのは、年末によくやるものだが、学期の振り返りっていうのはどうだ? お前はやることあるだろうか?

 学校とかのコミュニティなら珍しくないかもしれないが、個人単位だとそこまで多くないんじゃないかと思う。が、まとめのタイミングは大切だぜ?

 なにがくるか、粛々と受けとめる準備をすべし……とは俺の地元でしばしばいわれていたことだ。

 それにまつわる話を、少し聞いてみないか?


 3月1日から3日のひな祭りまでの三日間は、俺たちの地元の人にとって注意を払うべきタイミングだ。

 もっとも行事とかを執り行うわけじゃなく、普段通りの生活をしていればいいんだけどな。その間に、この一年間でのそれぞれの行動の判定を地元の神様が行ってくれるんだ。

 便りのないのは良い便り。問題がなければ、何事もなくその三日間は過ぎていってくれる。けれども問題があったなら、その便りは必ずなにかしらの形でやってくる。

 その年の俺は、ちょっと後ろめたいことがあった。細かい事情を話せば少し複雑なんだが、いわゆる仮病てやつだ。本来なら、自分が誰かに使うべき時間を、自分のために費やしたわけさ。

 当時としては、半年以上前の話だし関係者にだって特に迷惑がかかることはなかった。でも俺自身としては初めての経験だし、良心の呵責のほうがでかくてな。表には出さなかったけど、まあちょっとしんどかったんだ。


 そして迎えた3月2日の学校帰り。

 俺は通学路で、不意に赤い葉っぱにからまれた。顔全体を覆い隠すほどの大きなやつでさ。そばの車道で車が通ったときの風に吹かれて、俺の顔へ引っ付いてきたんだ。

 時期的に、もう紅葉のころは過ぎているのに? と色だけを見ても首をかしげたいところだが、それだけじゃない。

 葉っぱの赤は、自然に色づいたものじゃなかった。どうやら塗料を塗られていたようで、俺の顔の形だけ葉っぱから赤が抜け落ちしている。そこからは青々とした葉っぱのみずみずしい表面が浮かんでいたんだ。

 だがな、俺が鏡で顔を見てもこの赤みは全然映らない。いつも通りの自分の顔面があるばかりなんだが、周りの人はしきりと俺の赤面ぶりを心配してくれる。


 ここにきて、俺はこれがようやく「総まとめ」なのだと気づいた。

 一年の間における、俺のやったことの評価。つまりは抱いていた後ろめたさが、このような形であらわれたわけだ。もっとも、俺自身はじかに確認できないままだったが。

 家に帰ってからは、なおもその赤みは増すばかりだったようだ。事情を話して理解を得た家族にも心配されるくらいだったが、依然として俺が分からないというのがきつかったな。

 今さら、いくら反省したところで、自らこの色を引かせることはできない。そのことはすでに小さいころから教えられていた。

 ただ、「みそぎ」が行われることを待つのみなんだ。


 その夜、俺は自分の顔がにわかに焼けるように熱くなるのを感じた。

 意識はあっても身体は動かせない。声もろくに出せないまま、俺は布団の中でもがく。

 肌が焼けるかと思った、肉が焦げるかと思った、脳が骨を破るかと思った。

 死を覚悟するほどの痛みだったが、長さとしてはほんの数秒。

 水でも浴びせられたかのように痛みはたちまち引いていって、それ以降は誰も俺の顔を見てもなんともいわなくなったよ。

 懲りるには十分な仕打ちでさ。そっからしばらくは後ろめたさを覚えることはしなくなったさ。


 でも大人になって、こちらへ出てきてからは絶対にそれらをやっていない、とは言い難いからな。

 少なくとも3月のあの3日は向こうへ戻りたくはないが、いずれそれが許されないときがくるのかねえ。

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