*021*タマキ従魔長の基礎教育〜ギルド編〜
あぁ、夢だったらいいのに。
ギルド公式迷宮配信者なんて、無理ゲーにも程がある。
「お、戻ったか」
ますたーに頭をモフられているのに、全然嬉しくない。
罪悪感と胃痛で、もうなんというか死にたい。
「では、早速ですが。教育の時間です」
「よろしく頼む、タマキ」
「私はあくまでキリク支配人の補助ですので、ゆめゆめお忘れなきよう」
いつの間にか、ギルド運営会議なるものも終わったらしい。
支配人室――ますたーの仕事部屋に戻ってきてるし、記憶にないのが不安すぎる。
「まずはダンジョン*ワークの基礎知識からです」
スーツ姿で教鞭を握るタマキさん。
ノリノリだなーなんて思っていたら、1枚の紙が前に差し出された。
「これはギルドの組織図です」
「……おぉー」
「総長を筆頭に、ギルド運営を担う総支配人。総支配人はギルド運営に携わり各部門を根幹から支え統括します」
情報の多さにプスプスと煙が出てくる。
お偉いさんという認識ではダメなんだろうか。
「各部門の統括は部門支配人が担います。特定の分野に特化したメンバーで構成された『専門室』と依頼や業務を行う『チーム』に細分化されます。支配人は自部門の全業務を単独で遂行する技量を持つ、上級ライセンスホルダーです。専門室の垣根を越えた選抜メンバーを配下に持ちます」
「ギルド毎に、若干の差異がある。一概にはいえないが、組織図としてはどこも似たようなもんだ」
「更に、副支配人や中級〜上級ライセンスホルダーの幹部クラスが名を連ねます」
「専門室管理者やチーム責任者。現場における主任など。役職名がついたメンバーを幹部クラスと総称している」
ますたー曰く、ディルク副支配人の他にも、幹部クラスが何人かいるらしい。
「マカウェストも元々はロジスティクス寄りだが、ガイドも兼任してもらっている」
「慢性的な人手不足の部門ですから。例外として認めています」
迷宮案内・ロジスティクス部門は他の部門に比べて所属数が少ないらしい。
その為、マカウェストさん以外の所属メンバーも兼任していることが多いとのこと。
なり手が少ないのもあるが、ライセンス取得の難易度が高く、不人気なんだとか。
「他にも、希少な専門スキルを持つ所属員は、総支配人の管轄となります」
「…………はえぇ」
「従魔の契約者は各メンバーや職員ですが、事務手続きや管轄はギルドが担います。従魔長を拝命しておりますが、私は総支配人の指示の元、動きますので悪しからず」
「タマちゃんは契約者ラブだからねぇ。忠猫なところがカワイイくて弄りがいあるわぁ」
「総支配人が拾ってきた子猫が、後進の育成に勤しむとは……感慨深いな」
「黙っててください、アホコンビ」
「ギルドに来た頃のタマキがこれだ」
「………おぉー」
ますたーが見せてくれた写真には、小さい頃のタマキさんと思われる幼女と、今となんら変わらない総支配人さんの姿があった。
違う所と言えば、胸元のバッジの色とデザインが異なることくらい。
「……バッチ。ちょっと、ちがぅ?」
「お、よく気づいたな。白バッジは副支配人の証だ」
「当時はキリクくんと同格だったのよねぇ。なのに今は総支配人と名ばかり支配人。どこでこんなに差がついちゃったの?」
「知るか」
ますたーと総支配人さんは旧知の仲だったのか。
姉弟弟子だったことは、聞いていたけれど。
「それを踏まえた上で。まずはキリク支配人が率いる迷宮案内・ロジスティクス部門について深堀します」
「…………ぁの」
「質問は簡潔にお願いします」
「どーして、2つぁる?」
「ふむ。いい観点です。飴ちゃんを差し上げます」
アメはイチゴ味であった。
とても美味しかったです。はい。
「かつてはロジスティクス部門は独立していました。ガイドは業務が多岐にわたるだけでなく所属数が少なく、総支配人が管轄となっていたのですが……」
「総長が代替わりした時に、統合したんだよねぇ」
「ガイドとロジスティクスの業務内容は近いモノがあるが、畑違いのことも多い。おかげで現場は大混乱だったよ」
そんな背景があったのかぁ。
大変だなぁ。というか――お腹空いた。
「迷宮案内はギルド所有のアイテム管理と主に調査を。ダンジョンに関する情報収集と情報提供。派遣チームに帯同し先導及び後方支援を担います。また、ダンジョン攻略本の作製をIGOより委託されています」
「……がぃどぶっく?」
「ダンジョンの構造・生態・環境・トラップ及びギミックの配置(etc.)ありとあらゆる情報が詰まってる。ダンジョン来訪者の道標となり時に窮地を救う――なんて言われてるが、地図みたいなもんだ」
「………おぉー」
今日一番、分かりやすかった。
「ロジスティクス部門は物流と資材調達を担う。各部門からの必要物資の受注と納品。派遣先への物資運搬(etc.)縁の下の力持ちと思われがちだが、調達には魔物の採狩も多く、ダンジョンに出向くことも多い。腕っ節は派遣組にも劣らない」
淡々と語るますたーが、どこか自慢気なのは気のせいじゃないと思う。




