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*014*ドキドキ☆ギルドデビュー!?

 目が覚めると、毛布に寝かされていた。

 いつの間にか気絶していたらしい。

 ますたーと契約してから、頻繁に意識を失っている気がする。



「情報量が急増して、処理が追いついてないんだろう。そうユエが言っていた」



 心に浮かんだ疑問に即レスしたのは、ますたーことキリクさん。

 キョロキョロと顔を動かすと、自机(と思われる)に座った背中が見えた。



「狭い世界がいきなり広がったら、大人でも卒倒する。少しずつ慣れていけばいい」


 

 ご主人様たちのところにいた時は、どんな時でも意識を保っていられたのに。

 無力さに打ちひしがれていたら、ますたーに声をかけられた。

 


「気分はどうだ?」


「………ぺこぃ、です」



 本能的に空腹を訴えてしまった。

 慌てて、語尾を丁寧にして誤魔化す。

 ますたーには、無理した言葉つがいをするなと命令されたけど、従魔ファミリアとしてやはり許されないコトだと思う。

 そこら辺にいる子供だったら別だけど、わたしは契約者のために命を賭して使える義務がある。

 出てくる言葉は拙いし、ツギハギかもしれないけど

 。紛いなりにも従魔ファミリアとして教育を受けてきた矜恃というものがあるのだ!



「晩飯、付き合ってくれるか」


「…………あぃ」



 感覚接続(リンク)とやらで、思考がダダ漏れになっていたかは分からない。

 ますたーに言及されなかったことを考えれば、聞かれていたのだと思う。

 晩飯――ごはんにお供するという意味を込めて大きく頷き、毛布から出る。



「おいで」



 ますたーに手をさしのべられ、一瞬躊躇する。

 また肩に担がれて、移動するんだろうか?

 ご主人様の中には俊足の人もいたけど、ちゃんとペースは合わせられたのに。



「ラビを軽んじているわけじゃない。認識されずらい体質だと前に言ったのは覚えているか?」



 頷くと、ますたーは言葉を続けた。

 要約すると、魔力や気配の機微に長けていても認識がされずらく、一般人なら踏み潰しても気づかないという。

 ギルドの人は、気配に敏感だが注視しなければ気づくのは難しいらしい。



「過保護と思うかもしれない。だが、従魔ファミリアが雑踏に紛れないか、常時気を張るのも疲れる」



 ますたーの言葉にハッとする。

 契約者に、従魔ファミリアの生存確認を強いるなど言語道断の所業である。

 自分のことばかり考えていことが、恥ずかしくった。



「そこまで言ってないんだが。まあ、快適とはいかなんだろうが、気負わないでくれ」



 今度こそ、大人しく肩に担がれる。

 ますたーは肩幅が広くて安定してほとんど揺れない。

 移動が快適すぎて、申し訳ないくらいだ。



「食堂があると言ったな。そこで食おう」



 たしか、ギルドの1階にあると記憶している。

 美味しそうな匂いと、たくさんの人の匂いが入り交じっていて、パンクしかけた。

 ファミリアを頑張ると決意したけど、人混みは苦手だ。

 また、気絶したらどうしよう。



「この時間帯ならほとんど無人だから、世界の終わりみたいな面するな」



 ますたーに諭され、顔を平然とさせようと四苦八苦する。

 悪戦苦闘している間に「ついたぞ」と声をかけられ、我に返った。



「あら残念。百面相終わっちゃった」



「面白なったのに」と笑うのは、支配人その1ことユエさん。

 どっから湧いて出たんだろうか。



「休憩がてら散歩してたら、2人を見かけたから」



「来ちゃった」とブイサインをするユエさん。

 考えるのは疲れたので、放っておこうと思う。



「仕事はいいのか」


「ラビちゃんのドキドキ☆ギルドデビューでしょ。見逃せないじゃない」


「ただの晩飯なんだが」



 二人の会話は、緊張でほとんど入ってこない。

 たしかに。受付窓口も食堂も売店も、人が疎らで空いている。

 24時間営業とはいえ、早朝と深夜は早出組と帰投組が利用するくらい。

 一般人がはけてしまえば、平日はほとんど人がいないんだとか。



「これなら、踏み潰される心配もないな。おりていいぞ」



 ますたーの許可がおりたので、肩から飛び降りる。

 でも、人混みは怖いというか人がそもそも慣れないので、ますたーの後ろに隠れてズボンを掴む。

 闇市はともかく、まともに人前に姿をさらしたことも無く接点もないので、逃亡したくなるのを何とか堪える。



「アイテムバックからライセンスを出してみろ。収納しまうのと同じように思い浮かべて念じればいい」



 ウエストポーチ(異世界辞典より)のチャックを開けると、黒い空間が拡がっている。

 ますたーに言われた通りに「ライセンスでろ!」と念じてみる。

 すると、黒い空間からニュっとライセンスが飛び出してきた。



「アイテムバックに収納したものは念じれば基本的に取り入れできる。ファミリアと契約者は基本的に共有することになる。私物は分けておくといい」



 アイテムバックは、魔法で作られた異空間が広がっているらしい。

 ますたー曰くアイテムバックには「共有スペース」と「私物スペース」の2つに大きく分けられる。

 ファミリアライセンスはこれから私物スペースに収納するようにとの事。

 原理はともかく、魔法というのはすんごいらしい



「晩飯の前に、初仕事だ。準備はいいか」



 準備などできるはずも無いけど、とりあえず頷く。



「ライセンスとギルドの認証魔具の同期手続きをするぞ」



 なんて?

 聞きなれぬ言葉に思わず首を傾げる。

 説明はなく、ますたーは先に進んでしまい、慌てて後を追う。



「あれ――ユエ支配人マネージャーじゃね、キリク支配人マネージャーもいる」


「後ろになんか、ちっさいのいるな。うちの制服着てるけど」


「そういえば、キリク支配人マネージャー従魔ファミリアと契約したって言ってなかった?」


「アレが? まだガキだろ」



 好奇心の視線が辛い。

 存在が認識しづらいって聞いたのに、バレバレじゃないか!



「気づければ、ばっちり見えるからねぇ」


「人気もなくここまで騒いで知らぬ存ぜぬじゃ、早かれ遅かれ脱落する。気づいて当然だろう」


「あーね。辞めちゃうか殉職だねぇ」



 せ、世知辛い。

 とはいえ。ご主人様たちのところにいた時も、鈍い子から死んだ。

 ご主人様の命令をいち早く察し、ご機嫌を損ねようものなら容易く殺される。

 命の価値が軽いのは、どこでも同じらしい。



「ようこそ、ダンジョン*ワークへ」



 聞き覚えのある声と匂いに、思わず顔を上げる。

 黒毛の猫っぽいおねーさん――タマキさんだ。



「………タマキ、さま」


「ようやく、名前を覚えていただけましたか」



 辛辣な物言いは、間違いなく従魔ファミリア長のタマキさんだ。

 ()()()()なのは、従魔としてのなけなしの矜恃が故。



「どうしてタマちゃんが、受付やってるの?」


総支配人ギルドマネージャーの指示です。新人従魔(ファミリア)のライセンス同期をするように、と」



 どうやら、ここは受付をする窓口らしい。

 受付はご主人様のところにいた時にも見聞きしたことがある。

 ますたー曰く、ギルドにおける受付とは依頼の受注をはじめ来訪者やメンバーの問い合わせの初期対応をする所だという。



「ライセンスにはギルドIDの他ありとあらゆる情報が搭載されています。IGOのデータベースに自動更新されますが、ギルドから個人のデータベースに問い合わせるには、専用の認証魔具とライセンスを同期する必要が――」


「訳分からんって顔してるわねぇ」


「目の前に水晶があるだろう。そこにライセンスをかざしんさい」



 言われるがままライセンスを、半透明の球体に翳すと、魔法陣が展開された。

 周囲一体が静寂と眩い光に包まれ、文字や記号が螺旋状に宙を舞うこと数分。

 光は突然消え、世界に色彩と音が戻った。



「同期完了です。以後、ギルドへの帰投及び派遣の際には必ず記録してください」



 尚、外出の際には不要とのことだ。

 私用でのダンジョン潜行の場合は、別途申請がいるらしい。



「ユエ支配人マネージャー、急患が5分後に転送されるとのこと。詳細は、添付資料をご確認ください」


「はーい」



 のんびりと伸びをしたユエさんは「じゃーお仕事いってくるねぇ」とやっぱりのんびりと去っていった。



「では、私も通常業務に戻ります」


「ラビが知ってる奴が対応してくれて助かった。ありがとう」


「では、また」



 どうやらタマキさんは、ライセンスの同期とやらの為だけに出張ってくれたらしい。

 慌ただしく、走り去る後ろ姿に、深く頭を下げる。

 本当はお礼を言いたかったのだが、言葉にできなかったからだ。



「おつかれさん。飯にしよう」



 ますたーの言葉に返事をするように、腹の虫が大きく鳴いた。

 恥ずかしくて慌てて下を向いたのだが、一瞬ますたーの頬が緩んだ気がした。



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