いじわるな上司に絆されて
(この時間に、電気が付いている…誰かいるのか?)
「誰だ!そこにいるのは!!」
「わっ!」
「君、まだ残っていたのか。」
「す、すみません!仕事が終わらなくて…」
「しょうがない。2人で片付けた方が早いだろう。」
そう言って、上司である早野幸人は主人公である冴野灯の仕事を手伝う。
「あ、ありがとうございます…」
2人で協力して、全ての残業が終わった頃…「あっ、もうこんな時間!終電、逃しちゃった…」
そんな、灯を見て幸人は言った。
「良かったら、家に来るか?」
「ですが…」
「いいから。どうせ、タクシーでも捕まえて帰ろうとしてたんだろう。ここから、私の家まで近いから来るといい。」
「うっ」
「…図星だったか。」
「では、お言葉に甘えて…」
幸人の家に着き、こう言った。
「お腹が空いただろう。何が食べたい。」
「何でもいいです!」
「何でもいいが1番困るんだが…ハンバーグにするか。」
「ハンバーグですか!?」
突然、灯が大きな声を出すので幸人は驚いた。
「好きなのか?」
「大好物です!」
「そうか。」と言って幸人は続ける。
「作ってる間、お風呂にでも入るか?」
「お風呂、ですか?」
「ああ。温めてあるから直ぐに入るといい。」
「わ、わかりました。」
そう言って、灯は素直にお風呂に入った。
そして…
「お風呂頂きました…」
「髪が濡れているじゃないか。」
そう言って幸人はドライヤーを取り、灯の髪を乾かした。
「自分で出来ます!」
「いいから。」
髪を乾かし終わり、幸人は言った。
「よし。それじゃ食べるか。」
「は、はい!」
「…美味しいです!」
「口に合うようで良かった。」
「早野さんって、実は優しい人だったんですね!」
「どういう意味だ。」
「会社では、怖い上司のイメージだったので…」
長い沈黙が続く。
(ずっと、黙ってる…もしかして、怒らせちゃったかな…)
そう思い、灯は幸人の顔をチラッと見る。
「…私は、君が思っているほど優しい人間ではないよ。」
と幸人は、呟く。
「何か、言いましたか?」
「いや、何でもない。私もお風呂に入ってくる。」
「?」
「早野さん、今度は私が髪を乾かしてあげますね!」
「え、いらな…」
「いらない」と幸人は言おうとしたが、食い気味に灯に遮られてしまう。
「いいからいいから!遠慮せずに!」
「…」
「よし、乾きましたよ!」
「…早野さん?ずっと黙って、どうしたんですか?」
「いや、君と結婚したらこんな感じなのかなって思っただけだよ。」
「結婚だなんて、そんな…」
「本音だが?」
「やっぱり、早野さんはいじわるな上司です!」
「ふふっ」
と幸人は笑い、幸せな夜を過ごした2人であった。