ゆっくりすごそうって言ったよね?
今日はゆっくりすごそう。
そう言った。そう言ったよね?
何で、今、庭で穴を掘ってるの?
事の発端はネロの「果実の木が無くなった」の一言だった。
うん。全部燃えたからね。
遠い目をするジルにあらぬ方向を見てるホムラ、ロート、ネロ。
そ、そう言えば、ドンパチやり過ぎて果物の木が無くなったんだ。
アハハ………ごめんなさい。
今日は、果物の木を植える。
梨、林檎、柿、オレンジ、桃、油を取るためにオリーブの木を植えた。
その後は、ジルの時間魔法で成長させる。いつもながらこの時間魔法は圧巻です。
「すごい。すごい。」
梨、林檎、柿、オレンジ、桃、オリーブの木が大木に成長しました。
早い。早い。この時間魔法は本当に早い。
「やった~。大木になった。実は今度だね」
「処でジルの時間魔法を人にやったらどうなるんだ?」
「さぁ。やったことないな。」
話題を変えよう。
そう言えば、ジルが魔法を使うのをあまり見たことが有りません。
「はーいジル先生、何故魔法を使わないのですか?」
お玉をマイク替わりにして、ジルの口元に向ける。ジルは、なんの事だと分からない顔をしてますが、コツンと拳骨が俺の頭に落ちてきました。痛く有りません。軽く小突く程度です。ジルって意外と優しい?
「そう言えば、あんまり使っていませんね。」
「そうか?」
「そうですよ。だって………火を付ける時の火種として小さい火魔法。水をだすのに水魔法。そよ風が欲しい時に風魔法。穴を掘るのに土魔法。ランプの変わりに光魔法。虫が出た時に闇魔法を使っている。どれも小さい。魔法じゃ無いですか」
「そうか?」
今一、分かってないジルにロートが笑いながらネロに言った。
「ネロ勘違いしてるぞ」
「は?俺が勘違い?」
「そうだ。火魔法も水魔法も風魔法も土魔法も光魔法も闇魔法も小さくすればするほど制御が難しい。それにジルは今、研究中なんだ。魔法の展開の速さをな」
「知っていたんだ。」
「当たり前だ。魔法を使いすぎて、何度ヘバッていたか」
ロートはハハハと笑うが目は笑って無かった。
「すまん。以後気を付ける予定」
「そこは確定にしてほしかったな」
笑い合うジル、ホムラ、ロート、ネロ。
「そうだ。ジル、ホムラ、我、ネロ宛てに万年雪の婆さんから手紙が来たぞ。」
「へー珍しい。」
手紙の封を風魔法で切って中身を取り出す。
『ジルちゃん、ホムラちゃん、ロートちゃん、ネロちゃんへ。
久々でお手紙を書いてます。今年の雪はあまり降らなかったでしょ? だけど雪ん子の霙君がそちらに行くそうよ。なんかヤンキーに目覚めたと馬鹿の事を抜かしている奴に鉄拳をお見舞いしてすぐに帰ってこいと伝えて。宜しく』
ジル、ホムラ、ロート、ネロは、霙って誰だ?と顔をする。
誰も霙を知らない。
「ハーハハハ。我は万年雪の処の雪ん子の霙様だー」
林檎の木に乗っている霙に対してなんの反応もしない。
が1人反応した者がいる。
ジルだ。
ジルだけ反応した。
「そんな細枝に乗るな!木が折れる!!」
ジルの忠告に耳を傾けない霙。
ベキベキベキと木が折れる音と共に霙が落ちてきた。
折れた木を見たジルは、
「殺そう。」
「「「!!」」」
「ジル落ち着いて!」
「そうだぞ。たかが林檎の木ごときで………」
ネロの言葉は萎んでいく。ジルの突き刺さる視線で喋れなくなる。
「ごめんなさい。」
謝るネロにため息を溢すジル。だが、魔法の展開が終わった訳ではない。果物とオリーブの木に結界魔法が展開される。
「いてててぇ~………!!。うわわわ、火魔法に水魔法に風、闇魔法を展開すんな~」
「死ね」
「骨は拾うよ」
「万年雪の婆さんに送るよ」
「霙君。星になってくれ」
「俺の味方が誰もいない!!」
「そうだ。霙、お前に時間魔法をかけたらどうなるかやってみるか?」
ジルが霙を結界内に閉じ込めて時間魔法をかけようとしてロートが手刀を首に入れた。
カクンと倒れるジルを受けとめて、ロートがため息をついて言った。
「お前もう帰れ!!」
曇天の空に広がる怒号だった。




