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戦闘メイド ユーリ

「夜分遅くにすいません。一晩泊めてもらいませんか?」

 僕に言って来たのはどっかの屋敷か城で働いてるメイド服を着た女性だった。

 もしかしたらコスプレかもしれない。


 微動だしない事を不思議に思いジルは席を立ち僕の方に歩いて来て、肩越しに玄関をのぞく。

 そこにいたのはやっぱりメイドだった。


 服は破れて、手足には切り傷もある。

 なんか関わるとろくな事が無いのは目に見えている。

「あー少し待っててくれ」

 ジルが言うと僕の腕を引っ張り玄関のドアを閉めた。

「「どうした?」」

 ロートとネロが椅子に座ったまま聞いてくる。

 僕はありのまま話す。

『一晩泊めてもらいませんか?』と言ってた事。

「なんか訳有りなんだよね。切り傷もあるし、厄介ごとが口を開けて待ってる感じなんだよ」

 と、ジルが付け足す。

「ジルの勘は良く当たる」

「ここはお引き取りをするか?」

 ロートとネロは泊めない方への方に考えが行ってる。

「女の子かも知れない!」

「コスプレかも知れないよ?」

「でも………これから寒くなるのに追い出すのはどうかと思う」

 つらそうな顔をしてホムラは言う。

「本心は?」

 切り捨てる様にジルは言う。

「敵軍が来てもあの女を出せばこちらは被害ないかも知れない。が、それは、楽観的な考えだ。それに外の国の事、も知りたい。」

 リーダーであるジルに視線を離さずキリっとした目で話すホムラを見て大きなため息をついてジルは言う。

「仕方がない。情報を代価にして泊めるしかないな。このままにしても後味悪いし」

 ジルの言葉にホムラ、ロート、ネロの顔が、花が咲いたように明るくなる。

「食事は余り物で我慢してもらおう」

 ジルは鍋に入ってる料理を見て言った。

 大食らいが2人もいるからそれなりの量を作る。

 玄関の扉を開けてホムラがメイドを家の中に連れてきた。

「話の結果一晩泊める。勿論只では無い。代価を払ってもらう」

「私は、払えるお金は有りません。払えるなら身体だけ………私は2人同時に相手できますよ?」

「身体で払ってもらわんでもいい。欲しいのは情報だ」

 慌てずにジルは情報が欲しいと言う。

 メイトも情報が代価になるとは思わなかったみたいだ。

 そもそもジル、ホムラ、ロート、ネロは女性に興味が無い。

「とりあえず、風呂があるから風呂に入ってから次に傷の手当て、最後に余り物だが食事だな」

 見知らぬ自分に暖かい手解きに涙を流して、「ありがとうございます。」といい続けた。


 湯船から出る腕。

 切り傷が染みて痛いが、何週間ぶりの風呂だ。

 髪を洗い、身体を洗い、じっくりと身体を温める。

「バスタオルと寝間着を置いときました」

「あ、ありがとうございます」

 湯船から出て脱衣場に出るとふっくらとしたバスタオルで身体を拭く。

「すごいふかふかだ。どんな洗剤を使っているのかな?」

 身体を拭き、寝間着に着替えてリビングに来た。

「お風呂はどうでしたか?」

 ホムラが優しく言う。

「お風呂ありがとうございます」

「傷の手当てをしますね。脱いでもらってもいいですか?」

「えっ?」

 男が4人いる前で脱ぐ事に若干抵抗をするメイド。

「傷の手当てだ。どうこうするつもりは無い。それでも心配ならロート、ネロ」

「「はーい」」

 椅子に座ってメイドを見てたロートとネロはジルに呼ばれて席を立って声の元に行く。

「これなら安心だろ?」

 そう言ってジル、ロート、ネロはメイドから見えない処に行った。


 メイドの傷は擦り傷程度だと思っていたが、ナイフや剣を斬りつけられた傷もある。

 手際良く手当てするとホムラは何もなかった様にジルの処に行った。

 裸を見られるのはいつもなのにホムラに見られて胸がドクドクする。

(もしかして私、恋をしてる?)


 ホムラがジル、ロート、ネロを連れてきた。

 テーブルに「余り物だけど」と言って食事を出してもらった。

 ミネストローネと黒パンとジャガイモの何か。とりあえず一口食べた。

「美味しい………」

 マナーの事を気にせずガツガツ食べる。思ったよりお腹が空いていたようだ。

 メイドの前には、ホムラ、ネロがいて暖炉には、ジル、ロートが薪を入れて鍋は氷の塊を入れてお湯を作る。

 出された食事を残さずペロリと食べきった。

「ご馳走さまです」

「はい。片付けます」

 ホムラが木の食器を洗い場に持っていき、そのまま洗い、篭の中に入れた。

 ポットにジルが鍋に入れた氷が溶けてお湯になっていたのをお玉でポットの半分ぐらいよそい、アルミ缶の中にある水をお玉でよそって白湯を作った。

「白湯だ。」

 普段なら紅茶を飲んだりするジル、ホムラ、ロート、ネロだが、見知らぬ女性がいるからか、紅茶を出さずに白湯をだした。

「ありがとうございます。」

(白湯なんて、何年ぶりかしら。でも客が来てるのに白湯なんて、ここは経済的に厳しいのかしら?)


「私の名前はユーリ。隣国の王城で戦闘メイドをしてます。」

「「「「戦闘メイド?」」」」

「戦闘メイドは、メイド服を着て戦うメイドです。大昔に私のご先祖様が王城で働いていた時に族に入られメイド服のまま剣を持って戦った事から後に戦闘メイドと呼ばれる様になりました。

 当時かなりの反発があったのですが、当時の王様から王城で助けて欲しいと泣きつかれまして、それから我が家は、歴代の戦闘メイドを出してきました。

 それからここの土地、始姐族の森と呼ばれています。

 始姐族の森と言われる処は全て中立と私達の国ではそう呼ばれています。中立と呼ばれている由縁は、ここに良からぬ考えで来た者は、帰ってこなくなったり、足を踏み入れる事すらできません。

 貴方達は平気でこの中立の場所で住んでいます。

 お願いが有ります。

 この土地を私達に頂けませんか?」

「貴様は何か勘違いしておるのではないか?。

 ()()お前ら人間どもに豊かな土地を奪われたぞ。それを食い潰したのはお前らではないか?。戦闘メイド、ユーリよ。王城に行って王に伝えよ。答えは否だと。もし私達の答えを変えて是と答えたなら、お前らの国が消えると思え。」

「そうですか。王からは、もし否だったら少し痛い目に合わせて、必ず是の答えをもらう様にしろと言われてます。」

 鞘から剣を抜き切っ先をジルの喉に向ける。

(ジル!)

「そう・・・」

 見えない位置でジルは指を鳴らした。


 パチン


 大きくない音。耳を澄ましていれば聞こえるぐらいの小さい音。

 音がなったのと同時にユーリの腕が突然無数の切り傷が現れ一滴の血がテーブルの上に落ちた。


 ガシャン!!


 ユーリの指から剣がゆっくりと離れてテーブルの上に落ちた。

「えっ!?何がおこったの?」

 袖を捲り腕の見るが、傷痕も血が流れた後もなかった。

 たけどユーリの腕は前と動きが悪い。剣の握る握力も無くなった。

「国とか王様とかどうでもいい。俺達が、ゆっくりと隠居生活が出来ればいい。この土地は()()が気に入って買った。金を積まれてもこの土地を売らない。答えは否だ」

「そうですよ。黙って聞いていたけど僕達を貧乏人扱いしないでもらえます?僕達は隠居生活を楽しんでいるのですよ?」

「隠居生活って………」

 ジルとホムラの口から出た言葉は、否だった。

 隠居生活を壊すなとまで言ってくる。

 しかも自分(ユーリ)の腕が思うように動かない。

 一度持ち帰るかと考えて、その前に内情を調べ、秘密を握る為に

「一晩泊めてもらいませんか?」

 とユーリは言う。

 ニコニコ笑いホムラが核心を付く。

「僕達の内情を調べる為にか?」

 黙ってしまうユーリ。

(図星か)

 バレバレで、誰でも分かってしまう。腹芸はユーリは向いて無いようだ。

「いいだろう。」

「いいのか?」

「ただし、寝る為に作った客室じゃ無い。少し談笑する処だ。」

「それでも構わない」

「そうか。」

 一言って席を立つジルとホムラ。

 ちらりと彼女(ユーリ)を見る。ユーリは慌てて席を立つとジルとホムラの後に続いた。


「ここが客室だ。トイレは家の外」

 本当は、ジル、ホムラ、ロート、ネロが使うトイレは、ある。

 客人に使うトイレは家の中に無い。早く出てもらいたい為にあえて作らなかったのだ。

「寝る前にトイレは行っとけよ」

 ジルに言われて玄関の扉を開けてトイレを指を指す。

(遠いなぁ…)

 ユーリが1番初めに思った言葉だった。だが、尿意を感じて慌ててトイレに駆け込む姿を見てその間にジルがロートとネロに話して来た。

 ロートとネロはニつ返事でok承諾してくれた。

 トイレから出来てジルとホムラに促されて家の客室に入った。

 布団は無いから座布団を敷布団にして、掛け布団は無いからタオルケットを持ってきたそれでお願いといい粗方用意されていた。

「外は寒いの。タオルケット1枚じゃ寒いわ。掛け布団は無いの?」

「あったけ?」

 ジルが、ホムラに聞くと

「客用はないね。タオルケットがあったのがすごい事ですよ。まだ処分出来て無かったのですね。ジル?」

「悪い。今度処分しておくよ。」

「いえ、今回の事ももしかしたら有るかも知れません。残しておきましょう。」

 玄関の前で、ボソボソ話すジルとホムラ。この2人を見ていると絵になるとユーリは遠くから眺めていた。

 ジルの笑った顔。

 ホムラの嬉しい顔。

 このどちらかが女性ならばいい夫婦になるだろう。


「お待たせしました。」

「意外と長かったな」

「ちゃんと流して、手を洗って来ましたか?」

 平気で聞いてくるジルとホムラ。

「失礼です。ちゃんと流しましたし、手もちゃんと石鹸で洗いましたよ。」

「あそこのトイレは水が出ないし石鹸もおいて無い。どうやって洗ったんだ?」

「そ、それは、魔法で」

「魔力の揺らぎは無かった。嘘は良くない。」

「浄化」

 ジルが、ポソリと呟く。

 ユーリの身体に淡い青色の光に包まれる。

「浄化魔法!今のは、浄化魔法ですよね?」

「「さぁ?」」

 ジルとホムラそう言って、家の中に入る。慌ててユーリも入った。

 先程案内された部屋に通すジルとホムラ。ユーリは頷き入った。

 障子を閉めて2階に上がり各自部屋に戻った。


「ただいま~。ネロ~」

「お帰り~。ホムラ~」

 バグをするホムラとネロ。

「大変だったね。隣国の戦闘メイドだったけ?。」

「そうなんだよ。本当に嫌になる。だって僕達の土地を無償で渡せだよ。」

 ホムラとネロの話は尽きない。


「戻った。」

「お帰り~ジル。」

「ロートに聞きたい事があるのだが」

「まぁ、座れ。」

 椅子に座らせ結んでいた髪をほどき、ブラシで髪をすくう。

(ユーリ)が、剣を向けた時、殺してやろうかと思ったよ。」

「そんな事あったか?。どうもその時の記憶が曖昧なんだ。気が付いたら(ユーリ)が剣を落としていたし、ホムラがびっくりしてた事しか覚えて無いのだよ。」

(始姐様だな。)

「そうか。ジルが無事なら我はいいのだ。だが、奴は早く退場してもらおう。」

「利尿作用の白湯を出しておいた。全部飲んだから夜中にもう一度行きたくなるだろう」

 ロートがふわりと髪を三つ編みにしてリボンで結ぶ。

「確信犯だな」

 ニカっと笑うロートにジルは微笑む。

「それにな奴がいると念話が出来ない。物理的では無いよ。盗聴もされていたら嫌だし、新しく改良しておこうかなって思ったりしてた。」

「でも、奴は剣士だろ?」

「剣士でも魔法に疎い奴もおれば敏感の奴もおる。一概(いちがい)に剣士=魔法使えないと楽観視しない方がいいとおもってな」

「それで念話を使わなかったんだ」

「そう言うこと。さ、寝よう」

「そうだな。寝よう」

 ジルとロートは眠りに着いた。


(行きたい。行きたい。トイレに行きたい。)

「あーん。トイレに行きたい!!」

 ジルがだした白湯の中に入ってる利尿作用の薬が効いてきたようだ

「う"~。トイレに行くか」

 剣を持って部屋を出る。

 玄関で靴に履き替えて外のトイレに行こうとすると

「トイレが無い?」

 玄関のドアから手が離れてバタンと大きな音を立てて閉まる。

「えっ!?扉が閉まった?。ま、まぁ、普通よね。トイレに行きましょ」

 ユーリは、外に出て行った。

 砂漠のオアシスの様に近くて遠いトイレを目指すユーリ。

 結局、尿意を我慢出来なくて岩場に隠れて用をたした。


「帰ったようだな。」

「そうだね」

「これで、心置きなく眠れる。他人がいるだけで眠れないからね」

「ジルとロートはもう寝てるかも」

「ジルやロートはもう寝てるよ。多分。起こすと地獄を見るから行かないように。」

「はーい」

 カードゲームは飽きて、ババ抜きをしてユーリが出て行くまで起きていたホムラとネロ。

 もう、ババ抜き、スピード、大富豪も飽きた。2人じゃ麻雀も出来ないし、やり方も分からない。なので、結局トランプになる。

「飽きた。眠む気も無い。」

「まだまだ、夜は始まったばかりだよ。ホムラ。色んな話をしていれば眠れるからベッドに入って語ろう。」

 ネロはホムラが寝付くまで話をしてやったし聞いていた。

 でも、朝方になっても眠れないホムラは変なテンションで起きてきた。

「おはよう。ロート」

「おはよう~。ジル~」

「まぁ少し寝てなロート」

 クスクス笑いジルはベッドから降りていつもの服に着替えて1階に降りる途中で、魔法を使おうとするがやめた。

 魔法使いと知られてはいけない。面倒な事になる。

 ジルは普通に1階まで降りてユーリが止まった部屋の障子を開けた。

「いないか。薬効きすぎたかな?」

 ジルが入れた利尿作用の薬は、キッチンハ◯ターと同じ形の瓶でピンク色のキャプ1杯分の薬をいれていた。

「入れすぎだったかな?」

 とりあえず、ユーリが使った、タオルケットと座布団カバーを魔石洗濯機に入れて標準コースで洗う。その間に座布団を天日干しをして、朝食の用意をする。氷室から氷と肉の塊とジャガイモ、玉ねぎ、人参、パプリカを用意する。

 東屋に行って薪をストーブにセットし木の皮に火魔法で火を着けて薪の間に入れて優しく風を送り込む。火が大きくなったら鍋の中に肉と氷を入れて蓋をする。氷が溶けるのを待ち鍋の中で肉を茹でる。

 その間ににジャガイモ、人参、玉ねぎ、パプリカを切って鍋の中に入れて煮込むたまに灰汁を取り、肉が煮えたらフォークで肉を取り出すとまな板の上で一口大の大きさに切ってからまた鍋に戻して塩、胡椒と鷹の目で味を付けて終わり。

「「「おはよう~、ジル~」」」

「おはよう。ホムラ、ロート、ネロ。朝食が出来てるから食べよう」

 ジルの掛け声で席に付くホムラ、ロート、ネロ。眠たい目を擦り朝食を食べながら頭が覚醒して行った。

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