手立て無し
「会って欲しい方々がいます。」
と言われて待っていると山崎が2人の若者を連れてきた。
彼らはジルとホムラを見て、
「「「「始姐、ジェラルド!!」」」」
とはっきり言った。
ジルとホムラ、ロートとネロは顔を見合せる。
どうやら土方歳三を初めとする新撰組の面々は、目の前の事に集中しすぎてロートとネロが見えてないようだ。
王都の中にある小さな部屋に響く言葉。
始めに言葉を発したのは、ロートだった。
ジルもホムラも呆気に取られて返す言葉が見つからない。
「始姐とジェラルドって、始姐族の最後の1人とその右腕のジェラルドの事か?」
ロートが質問を質問で返す。
ビクリと肩を揺らし剣の柄に手をかける新撰組達。
幾度となくジルに凄い凄いと言われ、聞いていたロートは確認として、目の前の男に聞いた。
その言葉で初めてロートとネロを見る。認識する。仲間なんていたんだと顔をした。
目の前にいる新撰組達は、今は何処にいるか分からないが、始姐とジェラルドが大人になったらこんな姿になるだろうなと思い描いた姿がそこにはあった。
「す、すまない。俺は、土方歳三。隣に沖田総司、永倉新八、斎藤一、原田佐之助に貴殿方をお連れした山崎丞だ」
順番に名前を言って頭を下げる新撰組の面々。
王都では、土煙が舞い上がり、人々の声や、瓦礫が散乱する音、泣き叫ぶ声、母を求める子供の声と泣き止まない赤子の声が、BGMの様に聞こえる。
なのに、この部屋だけは、ピリピリとした空気が充満している。
「御丁寧にどうも、ロートだ」
「ネロ」
ぶっきらぼうに名乗るロートとネロ。
いつもなら窘めるのに窘める事をしないジルとホムラはようやく事態が飲み込めジルとホムラが名乗る。
「ジル」
「ホムラ」
小さい部屋だが、と前置きをして椅子とテーブルが用意される。立ち話はなんだし座ってくれと促された。
「ここに連れてきたって事は、何か策でもあるのですか?」
ホムラが、無いとは言わせないと言わんばかりの顔をして話をする。
「俺たちの主、始姐様と右腕のジェラルドさんにジルさんとホムラさんが余りにも似てて、来てもらったのです。」
と山崎は言う。
「もしかしたら彼奴を倒す手掛かりが有るかも知れないと思ったがそちらも手掛かり無しか?」
山崎と土方が言うが、ジルもホムラも首を横に振る。
知るはずもない。
知っていたら怖いくらいだ。
何故なら始姐もジェラルドも互いに傷を負えば山が街が都市が消滅してしまう。
それで潰された街、村、都市、山が消えたのは始姐の両手でも足りない。
例えジェラルドの両手を使っても足りないのだ。
長い間、共に生きてきた始姐とジェラルドは、互いに出来ない事をカバーしあい、いくつもの困難に立ち向かって歩いて来た。
新撰組が中々越えることの出来ない困難をいつも斜め上で突破していく。
山が越えれないなら山の中腹のあたりに穴を空けて突き進む。
回り道でも、地べたを這えずり回るってもいい。この山が越えれるならと考えでやっている。
その為かジェラルドも一緒に行動しているためか始姐と同じ斜め上に行く考えだ。
「そうか。知らないか…」
新撰組達はため息をこぼした。
「その始姐って言う人はどうやって倒していたのですか?」
ホムラが土方に聞いてくる。
「分からないんだ。」
土方がポツリと呟き、沖田がその続きを言う。
「俺達は、何も知らない。ただ、目の前の敵が死んでいた。それだけ。どうやって倒したのかボク達も分からないんだ。」
外は相変わらずの叫び声のBGMが流れてる。
「あのさ。ここも安全じゃないから一旦出よう。ジル、ホムラ、ネロ」
ロートが立ち上がりジル、ホムラ、ネロもそれに続く。
「そうだな。俺達もここを出よう」
「「「「了解」」」」
外に出て行くジル、ホムラ、ロート、ネロと後に続く新撰組達。
土方は扉の前で立ち止まり振り向く。ジル、ホムラが座っていた椅子とロートとネロが座っていた椅子を見てまた視線を戻して歩いて外に向かった。
ロートとネロが座っていた椅子は動いていなかった。




