執事ライトの説得
「・・・と、言う訳で、臨時教師になって頂けませんか?」
嫌な顔をするジル様、ホムラ様。
ロート様は珈琲にミルクと角砂糖を2つ入れてかき混ぜています。
ネロ様は、ミートスパゲティを食べています。
お茶代は出すと言いましたが、食事代はちょっと・・・
「断る。」
「嫌です。ロートとネロは?」
「ジルに任せる」
「ホムラとジルに任せる」
「答えは否」
断れました。
「話は終わり、帰るぞ。」
ジル様の声で、ホムラ様、ロート様、ネロ様が席を立って店を出た。
「ダメ元でしたし、後は冒険者ギルドに報告ですね。」
私はテーブルの上の伝票を見た。
が、無い。
「あれ?あれ?おかしいです。一応店員に言っておかないと」
私は、レジに行きますともうお金はもらっておりますの一言。
「誰が払ってくれたんですか?」
「えっと、白銀髪の方ですよ」
(ジル様です。さりげなく紳士的に・・・カッコいいです。しかも払っていた事すら感じさせない。凄い方です。)
私は、お礼をいいに外に慌てて出ましたが、いるはずもなく、私は冒険者ギルドに向かいます。
「ジル、ご馳走さまです。」
「「ご馳走さま~」」
「いいよ」
「それにしても僕達が教師なんて」
「俺達がやるなら死人が出るよ」
「元々教師のガラじゃないからな」
「言えてる~」
笑い合いながら西町に消えていく4人だった。
「・・・と、言う訳で断られました。」
「会ったのですか?あの4人に!」
「合いましたよ。お茶も奢ってもらいました。」
受付嬢よ。そんなにビックリする事だろうか?
お茶だけだよ?
「彼らに会う事すら出来ない冒険者ギルドってどうなんだろう」
そんな死んだ魚の目をしないで下さい。
誰にも向き不向きはあります。
ま、まぁ、冒険者ギルドはやらかした面も有りますから
「依頼は達成しました。報酬を頂きたいのですが?」
「ああ、はい分かりました。ギルドマスターの部屋へどうぞ」
私はギルドマスターの部屋に行き同じ事をギルドマスターに再度話ました。
「報酬の金貨4000枚だ。」
ギルドマスター直々にドーンと麻袋に入った金貨を渡されました。
これで今日泊まるところが確保出来ます。
私は冒険者ギルドの近くにある宿屋に泊まる事にしました。銀貨5枚。
そこそこの値段です。
宿帳に名前を書いて一泊、泊まります。
お風呂は有りませんが、宿屋の後ろに有る水汲みの処で身体を洗う様です。
私は、使いませんが・・・。
恥ずかしいじゃないですか、人前で肌を晒すのは。
そりゃ、お屋敷の時は毎日お風呂に入ってましたよ。
執事だから汚いのは良くないので。
明日、小高目ですが、共用浴場に行きましょう。
今日は、さっさと寝ましょ。
疲れました。
・・・ベッドが硬いです。
まぁ、屋根の有るところで、硬いベッドに薄い布団で我慢して寝ます。
朝です。
ぐっすり眠れなかったです。
そう思うと、ブラウン家の布団はふかふかでした。
恋しいです。
ですが、私も男です。
お金貯めてふかふかの布団を買います。
宿屋を出て私は共用浴場に足を向けます。
が、・・・
「臨時休業」
何故ですか?
私の行くところは、何故臨時休業ばかりでしょう。
仕方が有りません。
何処かサウナに入って水風呂に入りましょうか?
・・・サウナが有りません。
サウナと言う物、事態が有りません。
ブラウン家はサウナ有りました。
やっぱり、腐っても貴族ですね。ブラウン家は。
「仕方が有りません。もう少し小高目の処に行きましょう」
私は東町を歩きます。
西町と東町では並ぶ屋台も違います。
東町は、主に貴族や裕福な家が並ぶ町です。
西町は、言い方が悪いのですが、貧乏人や亜人や奴隷がいる町です。
ですから、西町の人は東町に行きませんが、東町の人はたまにやって来ます。
ブラウン家も来ました。
どうして?ですか、
答えは簡単です。
鬱憤を晴らす為だけに来て、商館や女の子達が居るところで殴る蹴る侵すのは当たり前です。
はっきり言って、胸糞悪いです。
あの光景は・・・。
それで、子供も流れた方もいました。
幸いに元旦那様はそう言う事は手をあげる事はしませんでしたが、言葉の暴力は有りました。
ご子息は・・・はっきり言ってバカでした。
権力に溺れたアホです。
銀貨7枚の小高目の風呂屋。
やってました。
ここでは、西町と違って身体を洗ってから貸し出される服を着て湯船に入る風呂屋です。
ですから男女問わず入れます。混浴です。
「誰もいません。貸し切りです。」
ポツリと呟いた声に
「すまんな。出ようか?」
と返されたので、慌てて私は、
「そんな出なくていいです。御一緒にお風呂を楽しみましょう」
と回答しました。
まさか聞かれていたとは思いませんでした。
「何処にお泊まりですか?」
「我らは、東町のホテル蒲公英から来たのだ。仲間が風呂好きなんでね。」
湯気が立ち上ぼり辺りは真っ白です。
でも湯気で見えるシルエットは、龍の姿をしてます。
凄い!手の混んである演出です。
「ホテル蒲公英!」
有名なホテルです。
泊まるのに金貨3枚は必要です。
各部屋に専用の露天風呂があります。専用の露天風呂がある部屋はプラス金貨5枚で、計金貨8枚いる処です。
ちなみに、1人頭です。割高です。
今の私では、手足も出ません。
「昨日な、部屋の水道管が破裂して部屋が水びだしになって変えてもらったが、露天風呂付きが全室埋まってシャワー付きしかなかったのだ。朝から風呂に入りに行くと言って来たんだ。」
「そうなんですか。それは大変でしたね」
「ああ。大変だった」
言葉の端々から本当に大変だったのが伝わってくる。
しばしの沈黙です。
「そこにいたのか」
「こっちだ」
「おや、先客がいたのか?」
湯気で私のシルエットは見えないのに良く私がいると分かりましたね?
「あ"~~~。気持ちいい~~~」
「髪が、湯船についてるぞ。」
「本当だ。悪いな」
「我がワニで止めてやろう」
「ありがとう」
「2人は仲がいいですね。」
「ああ、夜に遊んでいるからな」
「商館ですか?」
「「商館?」」
「行ったことがないな」
「我は行ったことがあるが、中々の処だったぞ」
「(実際どうだった?)」
「(身籠った女が数人とアザだらけの女が多数と精神がおかしくなったのが少数だったな)」
「(つまらん所だな)」
「(ああ、つまらん所だ。)」
「何か気分を悪くさせてしまいましたか?」
「嫌。」
「そんな事無いぞ」
そうですか。それは良かった。
私は胸を撫で下ろしました。
「俺は出るが、どうする?」
「我も行く。」
「では、また」
「また会おう」
そう言って、2人は湯船から出て行きました。
「あっ、名前をお聞きするの忘れておりました!!」
湯船から立ち上がり振り返るとそこにはもう誰もいませんでした。
◇◇
「おやおや、ジルちゃんにロートちゃんじゃないか」
「おはよう、ミトばぁ」
「はよ~、ミト」
「朝からラブラブだね~」
「さすがミト!見る目があるな~」
「昨日はジルちゃんを抱き潰したのかい?」
「まぁ~な、あまりにも可愛くてつい、歯止めが効かないんだ」
「ほどほどになぁ」
ジルが咳払いをして話を変える。
「処でミトばぁ、話していたのは」
「はい。ジルさん、家の中でお話致します。」
先程のおばあちゃん口調は無くなり凛として背筋を伸ばしハキハキ口調になるミト。
彼女は情報屋。
ミトって名前もおばあちゃんの様に腰を曲げた姿も彼女の仮の姿。
ジルもロートも本当の姿は知らない。
彼女と言っているが、男なのか女なのかはわからない。謎に包まれた人物なのだ。
「・・・と言う訳で最近目撃している男性は元ブラウン家の執事ライトで間違い有りません。ジルさんやロートさん、仲間のホムラさんやネロさんに近付く為に執事を辞めた訳ではなく、雇い主の女癖の悪さと、その尻拭いに嫌になり辞めた、と言う方が事実となります。後、ディージー・ブラウンが、何やらよからぬ事をしようとしております。忠告は要らないかと思いますが、一応ご連絡をしようと致しました次第でございます。」
「そうか、頭の隅にいれておこう。ミト、ありがとうな」
「勿体無いお言葉です。ジル様」
ミトは笑いながら告げる。
「様はいらんよ。今回の報酬だ。受け取ってくれ」
ジルが麻袋に入った金貨300枚をポンとミトの手に渡した。
普通なら金貨20枚が妥当だし、王都で暮らすのなら金貨30枚あれば1ヶ月は暮らせる。
なのにジルはその10倍を上げてる。
それ程彼女の情報が制度がいいのだ。
ジルとロートは、部屋から出て帰る。帰ったのを確認してから襖がすっと開いて中からスラッとした脚が出て来る。
「ミト様、ジル様は…ジル様達は帰ったの?」
「帰ったよ。姉様。処でおもちゃの調子はどう?」
「兄様。おもちゃの調子は昨日より悪いわ。だんだん話さなくなって来たわ。」
見た目の姿も身長も全く同じ双子
報告書が終わり2人は部屋の窓を閉めて玄関に施錠をしてから服を脱ぎながら大きな風呂があるに向かった。
「何か聞き出せた、姉様?」
「聞き出す前に死んじゃったわ、兄様」
「今度は力加減間違えないで殺ろうね?姉様」
「そうしましょ。兄様」
「もう少し、綺麗に掃除の仕事を覚えさせないと」
そこには、背筋を伸ばしたミトがいた。




