現象
ジル、ホムラ、ロート、ネロの4人は、今、王都にいる。
料理に使う調味料が目的だが、新しい冒険があるか、確認の為、冒険者ギルドに来ている。
「いいの有るかな?」
「どうだろう?」
「我は、迷宮に生る幻の桃でもいいぞ」
「「「嫌。無理でしょう」」」
「ランクAだよ、俺達4人で踏破しても、食に関してうるさいホムラやジルが黙っているか? 絶対に食べる。 そして文句を付ける。」
ネロが、言うとジル、ホムラが、
「そうか?」
「そんな事有りませんよ?」
視線を明後日の方向に向けて言う。
図星である。
食に関してうるさいホムラとジル。
「味付けが濃い」だの、「薄い」だの、極めつけには、店主に「こうした方がいい」と口を出す始末。
それで店が繁盛するからジルとホムラが来たら店の店主は、「うちの店に是非来て」と言う始末。
目当てはホムラだ。
ジルはホムラが呼ぶから付いてきているだけの人と勘違いされるが、ホムラにとって味を見てもらう役目がジルなのだ。
処で何故こんなに食にこだわりが有るのか分からない。
食べれない時でも有ったのか?
………嫌、無いな。
どう考えても………。
あの2人が飢えてる姿が想像全く出来ない。
モンスターでも刈って、その肉を食べてる姿しか、想像出来ない。
「どーした?ネロ」
「何でも無い。ロート」
歯切れの悪いネロにロートはじっと見た後視線をジルとホムラに移した。
ミネストローネを食べたがら他愛ない話をしているジルとホムラ。
ロートがネロに念話で会話をする。
「(たまに思うのだがな)」
「(何だ?)」
「(ジルとホムラは、誰かの子孫じゃかなと思う。まぁ、龍やドラゴン以上強い奴なんてこの世界には、いないがな)」
「(いない。じゃなくて長老達が言っていた始姐族が全て始末したと聞いた。)」
「(始姐族は今でも恐怖の対象だからな)」
「(ああ。『始姐族』と言うだけで恐怖が支配する。)」
「(トヨハシの住人を殺害した王都の国王と第一王子は、最悪な人を出した)」
「(そうだな。『始姐族』の事を舐めきっていた当時の国王と第一王子と神官は『始姐族』の怒りを買った。ジェラルドと従者の人達に手を出したから)」
「(愚かだな)」
ジルとホムラがミネストローネをお代わりをする為に店員を呼ぶ。
「「良く食べるな」」
ポツリと呟くロートとネロの言葉にジルとホムラがロートとネロの顔を見てニッコリ笑って言葉を発した。
『美味しい物は正義だ』
ジルが子供の様に笑って言うと
『そうですよ。美味しい物は正義です。僕の料理の幅を広げるのに外の食事は、いい勉強です。始姐や彼らに食べて欲しいです。』
とホムラが嬉しそうに言うが、その顔は、ホムラでは無かった。
「「!!」」
ジルもホムラも瞬きをすると、いつものジルとホムラに戻ってお皿に並々に注いだミネストローネを食べ始める。
「美味しいな。ホムラ」
「はい。美味しいです」
何事も無かった様に会話をするジルとホムラにロートとネロは食事が止まる。
「食べないのか?」
「い、嫌~………食べるけど………パンのお代わりはいるか?」
ロートが、しどろもどろになりながらパンを注文して、ジルとホムラは、煮込みハンバーグの追加をした。
ジル、ホムラ、ロート、ネロは、煮込みハンバーグにミネストローネにパンのおかわりをして、食べきった。
店を出て、王都を歩くジル、ホムラ、ロート、ネロは、王の住む城を見る。
ボロボロに壊れている城の隣にまだ新しい一回り小さい城が有る。
「あれが噂の城か………」
ジルがボロボロの城を見て言う。
「殆ど瓦礫ではないですか(笑)」
ホムラが笑いながら言った。
「「………」」
ロートとネロは黙ったままジルとホムラを見ていた。
「どうしたんだ?ロートにネロ?」
ジルがコテンと首を傾けてロートとネロを見る。
「そうですよ。食事の時から可笑しいじゃないですか?どうしたんですか?」
ホムラもロートとネロを見て言った。
「………ジル………」
ポツリと呟くと人前にしても関係無くギュッと力強く抱きついた。
「ロート!?」
ビックリするジルにまぁまぁと見ているホムラとネロ。
ホムラとネロは互いに顔を見合せ「俺達もやる?」とアイコンタクトをして聞く。
ゆっくりと首を横に振るホムラを見て「そうだな」と声を出さず口パクでコンタクトを取った。
「ロート?本当にどうしたんだ?」
困惑していたジルと辛そうな顔のロートにその姿を見ていたホムラとネロの遥か遠くから風に乗って聞こえる「撃て!」の声と飛んで来る弾丸にジルは
『少しだけジルの身体を貸して』と幼い子供の声がロートの耳元で聞こえて、カバリと身体を離すと
ジルの顔で『ありがとう』と言った。
『誰を助けますか?』
ジルの足元にひざまつき、頭を垂れるホムラ。
『助けるのは、ジル、ホムラ、ロート、ネロの4名。人間やエルフ、ドワーフ、後は亜人は関係無い』
幼い子供の声なのに、言っている事は、怖いジルと、ジルの『起立せよ』の一言で立つホムラ。
『飛んで来るぞ』
ジルが左手を空にかざし指輪の魔力でジル、ホムラ、ロート、ネロを覆い、降ってた弾丸を弾く。
「魔法結界!?。 俺はそんな強力な結界魔法は組み込んだ事は無い!」
ジルの指にある指輪の宝石が割れて粉々になり指輪のリングが、真っ二つに割れて、地面に落ちたら硫酸でも浸かった様にどんどん溶けて消えた。
『うーん、まぁまぁかぁ。』
『そうですね。』
ジルの指から全ての指輪が取れた手の平を見ながら開いたり、閉じたりしていた。
『………戻りますか?』
『そうだな。戻ろう』
結界魔法を解く。すぅぅぅと溶けて消える様に無くなるとジルとホムラは後ろに倒れロートとネロは受け止めた。
「おい!しっかりしろ!!」
ジルとホムラの頬をパチパチ叩くが、2人は目を覚ませない。
これはヤバいか?と思い始めていたが、
「「う"~…」」
「「ジル!ホムラ!」」
「「眠い~」」
「凄く眠いです。」
「起きていられない。今日は、寝る」
「おやすみ………」
ジルとホムラは寝息を立てて眠り始めた。
「すいません!訓練中に砲弾がこちらに飛んでしまい、お怪我は有りませんでした?」
走って来た兵士にロートは指を指して砲弾が弾いた先を示した。
カフェ 雅は、壁に大穴を開けて店内の床に砲弾が、めり込んで、お茶をしていた客は、ガラスの破片や壁の破片で床や壁は血が飛び散っていた。
野次馬が集まる姿を見て、兵士は慌てて仲間を呼びに行く。
ロートとネロは、ジルとホムラをおんぶして去って行った。
「(何処に止まる?)」
「(ホテル漣にしよう)」
念話で会話しながらロートとネロの背中で気持ち良く眠るジルとホムラ。
ホテル漣に着いて4人部屋を取り、ジルとホムラの装備服から寝間着に着替えさせて寝かせた。




