何も見なかった。何も知らなかった事にしよう
例え女でも、食糧を大切にしないアホな人間に容赦しないジルと騒がしく、人の迷惑を顧みず、例え命令でもやる人間に容赦しないロートの蹴りが炸裂した。
しかも巨乳の女性は「女は顔が命」と言う程、顔は化粧水やクリームに日焼け止めを塗り、ニキビや吹き出物が出来る食べ物を取らない様に細心の注意を払っていた。
だが、今は、その面影が無い。
鼻は潰れ、歯は折れ、目に青たんが出来て、まるで四谷怪談のお岩の様になっている。
方やもう1人の女性は右側が腫れ上がり目が開かないし上手く喋れない様子だ。
「あーあ。綺麗なな顔が台無しだな」
ケラケラ笑うネロ。
「顔が綺麗でも、常識知らずの上、見下しているアホは死滅して欲しいです。ジルはどう思います?」
冷たく言い放つホムラ。
「あれが王都の役人かと思うと落ちたなって思ったのが感想だな。」
興味も湧かないジル。
「まだ役人とは決まって無いよ。何しに来たか聞いてないし」
ロートの思いがけない言葉にジル、ホムラ、ネロは
「「「あっ!!」」」
と言って、延びてる2人を見てジル、ホムラ、ロート、ネロは、アイコンタクトを取り頷き、「何も見なかった。何も知らなかった」事にして、玄関の扉を閉めた。
日の入りで辺りが薄暗くなってきた時に右側が腫れ上がった女性が目を覚まし唸りながら起き上がり口の中から奥歯を吐き出した。
「痛い。」
口の中と顔に回復魔法を掛けて傷を治す。
元の綺麗な顔に戻る。
明かりの魔法で辺りを照らして隣で倒れてるサラを見る。
お岩さんの様になっているサラを見て、喉の奥から悲鳴を上げそうになったが根性で堪えてサラの身体を揺する。
「サラ様?サラ様?」
何度か目の声でサラが声を出す。
「うー。痛い。顔が痛い」
「サラ様大丈夫ですか?」
術師が声を掛けて、サラが怒りを現して言う。
「大丈夫な訳ないでしょ!」
(そんなに言うなら元気だわ)
術師は内心思い事務的に声をかける。
「お顔に回復魔法をかけます。」
「早くかけなさいよ!」
あまりにも傍若無人の為、回復魔法をかけるが、歯だけは元に戻さなかった。
「この役立たず!」
鏡を見て潰れた鼻、お岩さんの目は元どおりにもどったが、前歯だけは、元に戻らなかった。
(いつも、いつも奴隷扱いして、本当は、綺麗な顔に出来るが、誰がやるか!。一生苦しめ。)
この国では、
差し歯は無い。歯が折れて早めに回復魔法をすれば元に戻るが、意図的に回復魔法をかけなければ治す事は出来ない。
これからサラは、不細工と影で陰口を叩かれるだろう。
何故なら今までサラがやって来た事が本人に帰って来たのだから。
術師は、呪文を唱えて転移魔法を発動させるが、ジルが、パチンと指を鳴らし魔方陣を書き換える。
「えっ?」
「何?」
「魔方陣が」
「魔方陣がどうしたか答えなさい!」
「書き換えられて・・・発動した」
「はぁぁぁ?なとんかしなさい!」
「無理です!」
「この役立たず!」
「「きゃー」」
魔方陣が発動してサラと術師は王都では無い地方の山の奥に飛ばされた。
『上手いなですね。魔方陣をのっとるの。彼奴らは中々帰って来れないでしょう。術師は王都に帰れても、あのサラとか言う女は無理でしょうね。』
ホムラの顔でホムラの声で日本語で言うが、ホムラはそもそも日本語は話せないし、使えない、知らない。
『生きて帰って来たならばそれなりに高く評価してやるさ』
ジルの顔、ジルの声で、いたずらっ子の様に笑い日本語で言う。
ジルも日本語を知らないし、話せないし、使えない。
本にも載ってない。
まるで長い年月共にしていた人の様に呼吸をするように言葉を口にする。
「ジル、ホムラ何語でしゃべってんだ?」
ネロが恐る恐る聞く。
聞いたこともない言葉に恐怖が大きくなる。
いつもは、共通語をしゃべるのに今日に限って聞いた事もない日本語で話す。
ネロの声にジル、ホムラがゆっくりと振り返る。
ロートとネロは唾を飲み込み冷や汗が出る。
黄昏の為顔ほ拝めないが、きっと無表情で見てるだろう。
ただじっと見られる事に恐怖を感じた。
ジルとホムラも瞬きを2、3回して
「どうした?」
「どうたんですか?」
と何事無かった様に言う。
「ジル、ホムラは未知の言語を話せるのか」
「「未知の言語?」」
「神代文字じゃなくて?」
ジルが、聞くと頷くロートとネロ。
「知らないな。文字なら読めるけど古代語なら」
「古代語って神代文字の事か?」
「そうだ」
「神代文字、日文、阿比留文字は何となく分かる程度だそ」
ジルが言うとホムラは、
「僕も、少し分かる程度です。」
((じゃ、あれは何語だったのだ?。文字マニアのジルが知らない言語とは何だ?。))
ロートとネロは黙ったまま動かない。
(あのお方がいれば分かったかも)
ジルとホムラが二人で笑いながら共通語を話す。
その姿を見て、長老達の昔話を思い出すロート。
見た目10歳前後の児童と20前後の青年と侍と名乗る男性と女性と龍の国で戦争が合って、白旗を降った龍の国に観光で来てた時、異国の言葉を使っていた事。
児童の底知れない雰囲気を出して、手土産で持ってきた焼き菓子が、異様な雰囲気を醸し出してる。
それもそのはずだ。
作ったのは児童。
それを食べた龍は、胃腸風邪を引いた様に、嘔吐の繰り返しに熱に意識混濁の者が続出して、青年に聞いた処「あー、食べちゃったんだ」と共通語で苦笑い。
そして、「ようこそ。○○の世界へ」と笑って言ってたが、目は泳いでいた。
長老は言っていたな。
「龍族はあの方のおかげで助かった」と、何から助かったのかは言わなかったが、少し懐かしく、悲しい目をしていたのは覚えてる。
そして、児童からもらった焼き菓子の事を聞いたら、長老は、寝込んだ事は言うまでもなかった。




