王都からの手紙
ロートから渡された一通の手紙。
ペーパーナイフで封を切り、中を開けてホムラ、ロート、ネロの4人の前に出す。
1人づつ読むと時間がかかるので、貰って来たロートが代表として読む。
「我が朗読しよう。えーと何々?
毎日暖かい日々が続きます。お身体の方はいかがでしょうか?」
ロートが声を出して手紙の内容を話す。
「何言ってんの?この手紙の主は?」
間髪を入れずネロは言う。
「「「・・・」」」
その通りと思いジル、ホムラ、ロートは何も言わない。
「大変不躾ですが」
「不躾なら手紙何て寄越すなよ」
ネロが不満を口にする。
ジルもホムラもロートも頷く。
「実は、この度、新入生の近衛兵の卵と騎士の卵に関して相談したいのですが」
「相談する相手が違うな」
頷くジル、ホムラ、ロート。
紅茶を淹れて口をつけて喉を潤す。
「相談する相手が、違うなと思っている事は、重々承知しております。」
「重々承知してるなら、書くな。出すな。関わるな。」
透かさずネロが言葉を発する。
うん。うん。と頷くジル、ホムラ、ロート。
「私は教師ですが、私がいくら言っても聞き入れて貰えません。」
「じゃ、教師の才能が無いのかもな」
ケラケラと小馬鹿にした様に笑うネロ。
「王都の近衛兵の卵と騎士の卵の若僧どもの心を軽くへし折ってくれませんか?」
思ってない文章にジル、ホムラ、ロート、ネロは、間抜けな声が出た。
「「「「はっ?」」」」
手紙の内容に何言ってんだと理解が出来ないジル、ホムラ、ロート、ネロ。
「先輩の騎士や近衛兵の者に勝って浮かれ鳶なのです。ここは、最強冒険者と言われているのジル殿とホムラ殿の2人とその従者の方々に自分達より強い者が居る事を身を持って体験して欲しいのです。」
「俺達は、従者か。」
ポツリと呟くネロに、ジルは紅茶を飲んで一言言った。
「訂正が有るな。まず、ロートとネロは従者では、無い」
「そうだね。」
ホムラの不満な顔にマグカップを握る手に力が入り、ピキッと音がすると、ヒビが入り中の紅茶が、漏れ出す。
「依頼料は弾みます。どうか聞き入れて頂けないでしょうか?
もし来て頂けるのであれば私の名前を言ってもらえれば分かります。・・・だって、どうする?」
テーブルの中央に投げ捨てる手紙を手に取るホムラ。
「僕は乗る気無いです。王都に行きたく無いです。」
ホムラが言うとジルも
「俺も乗る気無いな。そちらの事はそちらで解決しろと思う。それに名前が書いてない。名前を言えばと言うが知らんし、面倒だ。」
と言う。
「ジルやホムラが行かないなら我も辞める」
ロートが言うと
「右に同じ」
とネロも言う。
満場一致で行かない事になった。
「手紙の返信はどうしとく?」
ロートが、ジルとホムラに聞く。
「そこなんだよな。」
「うーん」
背もたれに背中を預けて天井を見るジルと唸り出すホムラ。
関わりたくない。手紙の返信をすると、足が付く。ここに住んでるを良く調べたなと思う。
「俺は、返信の手紙は書かない、出さないに1票」
ジルが手紙に視線を向けて言う。
「僕もジルと同じ」
ホムラがジルの意見に同意する。
「そうだな。我も同じだ。ジルの意見に賛成だ」
ロートもジルの意見に同意する。
「俺は返信してもいいと思う。」
ネロだけは違った。
「「「えっ!!」」」
ジル、ホムラ、ロートほ一斉にネロを見る。
「報酬は弾む。と、書いてあるし、吊り上げてやればいいんじゃない?それに王都の騎士の卵や近衛兵の卵の心をがっつりへし折ってやりたい。二度と剣を持つことが出来ない程に」
ケラケラ笑うネロ。
ネロの背中に悪魔の羽が見える。
「処で、ネロ。聞きたい事が有るんだけど」
テーブルに両肘を付いて手を組、顎を乗せてネロに聞く。
「何?ジル?」
「文字は、書けるのか?」
「あ!」
そうなのだ。ネロは、文字が書く事が出来ないのだ。読めるけど書けない。
「ホムラ~」
猫なで声でネロは、ホムラに代執を頼むけど、ホムラは嫌な顔をして拒否した。
「ジル~」
「嫌だぞ。そもそも書きたくない」
「そこを何とか」
両手を合わせて拝むネロにジルは、ため息を付いてガラスペンとインクとレターセットをマジックバックから取り出しサラサラと書き始める。
「何て書いてるんだ?」
字が読めないネロはジルに聞く。
「ん?ああ、断る。と書いた」
ジルの文字は達筆だ。
「相変わらず、綺麗な字だね。」
うっとりと眺めるホムラ。
自分の字が好きじゃないので羨ましく思う。
スラスラと紙の上を滑るガラスペンを眺めポツリとネロが言う。
「文字を覚えようかな?」
「我も、覚えようかな?」
ロートとネロが、ジルの文字をみて唸る。
「覚えるなら1ヶ月である程度覚えろ」
ジルは、スパルタだ。
「いえ、龍とドラゴンです。2週間で覚えて下さい。」
ホムラは鬼だった。
まずは、ペンを持つ事から始めないといけない。
「龍やドラゴンでも向き不向きが有るぞ、ホムラ」
「根性で解決して下さい。」
ホムラの容赦ない言葉にロートとネロはジルを見る。
カップに口を付けたまま固まるジル。
必死にすがるロートとネロ。
「甘やかさないで下さい。」と目で訴えるホムラ。
3人の視線が集まり変な汗が出るジル。
「えーと、ま、まぁ、向き不向きが有るからな1ヶ月で見といてやれば?」
「ネロは飽き性です。2週間です」
ズバッと言うホムラにネロが顔を背ける。
「・・・。ネロ、ロート、諦めろ。」
「諦めるな!」
「諦めないでよ!!」
ロートとネロが叫ぶ。
「うるさいですよ。」
ホムラはマドレーヌを口の中に入れて咀嚼する。
黙ったロートとネロは、ジルを見る。
だが、ジルは小さく首を横に振るだけ、諦めるしかない。
それからロートとネロの文字の勉強が始まった。
龍とドラゴンだから握力が有りすぎる為、鉛筆をボキボキと折る。
1ダースはあっという間に終わった。
鉛筆代のお値段がいいので、たった1日で文字の勉強は終わった。




