天に唾を吐くと自分に戻ってくる
龍の国に着いたロート。
人の姿にならず、龍の姿で帰還命令の手紙を門番の龍に見せる。
渋々、嫌々、手紙を預かり、中を確認する門番龍は、びっくりした顔でロートを見る。
しかも二度見。
2等士と1等士が、奥にいる士長に声をかけて話会う。
赤いのロートを見て士長は、1等士と2等士の様に二度見をする。
元々真っ白のロートが赤くなって帰って来たのだ。
門番からは、何度も繰り返し確認されて、イライラするロート。
『帰る』
ロートの一言で慌てて門番は龍の街に通す。
本当は、門番何て関係無しに突破出来るが、あえてそれをやらなかったロート。
ジルとホムラから「人形になるなと言われている。」
理由は分からなかったが、とりあえず街に入るロート。
街の龍から『赤い龍が来た』と言われているが、そもそも赤い色の龍は見た事が無い。
龍の間で、「白い龍は厄災、赤い龍は幸福をもたらす」と言い伝えられてる。
びっくりした顔で二度見され、街の龍からは " あれが " 、" あの問題児? " と囁かれていた。
はっきり言って居心地の良い処では無い。
むしろ、イライラする。
ジルに出会ってからは、大人しいロート。
偏見も無く、ありのままを受け入れる、ジル。
初めは、厄災の龍だからと言う偏見の目で見てたホムラもジルの「もし、同じ目に合い、同じ様な目で見られてホムラは、嬉しいか?」と言われ、気が付き、それから色眼鏡無しで、見る様になったホムラは、ロートとも初めは、ぎこちないが、仲良くなった。
「まぁ、時間が解決してくれるだろう」と思っていてが、お互いの能力に気付いたホムラとロートは、握手をして頷いた。
ジル、ホムラ、ロート、ネロで色んな処に旅行や迷宮に行ったりピクニックや庭でキャンプをして楽しんでいる。
退屈の無い毎日を送っていた。
そんな楽しんでいた時に届いた帰還命令の手紙にロートは激怒した。
今まで、龍族の者たちは散々陰口を叩いて居たのに、人の姿になれる情報を何処から手に入れていたか1週間に1回のペースでの帰還命令の手紙。
が、最近には、毎日来るようになった手紙を料理の火種にして燃やす。
ジルに「また、来た。」と手紙を渡されて、「一度帰ったら見たら鬱陶しい手紙も来なくなると思うよ?」と言われ、「それに、嫌なら途中で帰って来たっていい」と言われたから、我は龍が住まう街に帰って来た。
蔑む視線から好機の視線に替わる龍達の視線。
イライラする。
だが、今日は、ストッパー役のジルとホムラがいない。
「大暴れしたやろうか?」と思うロートだった。
実は、果樹園の処で、ホムラとロートとネロが喧嘩して、一部の果樹園がぶっ飛んだ。
残ったのは、栗の木だけだった。
その光景を見たジルは、お盆の平の所でホムラとロートとネロの後頭部をひっぱたいた。
それから続く説教は4時間は続いた。
ホムラとロートとネロは地べたに正座して説教を聞いていたが、反省の色は無し。
「テヘペロ」でかわすホムラとロートとネロにジルは盛大なため息をついて膝をついて悲しんだ。
『長老帰って来たぞ。何の用だ?』
『帰ったか。話が有って帰還命令の手紙を送ったが、3ヶ月以上無視するとは何事だ? 龍族としての立ち振舞いを忘れたか? だいたいなぁ・・・』
10体の長老の話は続く。
(龍族? 散々毛嫌いしていたのにか?)
ブッスとした顔で聞いているロート。
『龍族の掟は、何が有っても『まだ、続くのか?』
長老の言葉を遮ってロートは言う。
『儂が話しているのに言葉を遮るのは何事だ!』
『お前は、黙って儂らの話を聞いて是の回答だけで良いのだ!』
『厄災の分際で口答えするな!』
『例え、幸福の龍になっても、お前は、厄災の龍だ!』
『そうだ。そうだ。』
『お前は、人形になれるらしいな。そこでだ。』
『我らに人形になれる術を教えろ!』
『厄災でも、唯一儂らに恩返しが出来るのだ有難いだろ?』
(恩返し?はっ!何言ってやがる)
長い沈黙にロートはゆっくりと答えた
『否』
『『『『『なっ!?』』』』』
絶対に「是」と返って来ると思っていたのに「否」の回答に長老達は鳩が豆鉄砲を喰らった顔をしている。
『ハハハ。そりゃそうだろうな。厄災、厄災と言われ続け、無視をして、存在しない扱い方をうけて、上からの偉そうに人形になる方法を教えろって言われても答えは否だな』
『なっ!?』
どんなことが有っても見方でいてくれた一番年寄りの龍が喉の奥で笑い、年若い龍の長達に話をする。
『長老!』
『儂らは今、食糧難に有ってる。今、人形になれば食糧難も解決する!』
(成る程。食糧難か。だから人形か。誰が教えるか!)
『無理だろう。彼が教えてくれるはずが無い。儂だって同じ事をされたらこの国ごと滅ぼすだろうな。ハハハ』
最も古い長老は言う。
『最長老!?』
『何を!』
愕然とする長老達。
『それにだ。』
『まだ何か有るのですか?』
頷き。長い髭を触りながら最長老は言う。
『彼を守っている人が、彼の目を通して儂らを見てる。』
『そんなの龍の力で』
最長老は深いため息をついて年若い長老に分かるように話す。
『勝てんよ。儂はあの人。あのお方、「○○ 」に・・・。 嫌。何でも無い。』
意味ありげに言うのやめて、何かを恐れる最長老はそれっきり黙る。
(殺される)
『『『『『?』』』』』
長い沈黙を破ったのはロートの言葉だった。
『もう帰っていい?』
ぶっきらぼうに言うロート。
その言葉に文句を垂れる長老達。
ロートのイライラ感が増す。
『すまなかったな。帰っていいぞ。』
『『『『『最長老!』』』』』
『許せない。自分だけ生き残ろうとするその根性。儂らが根性を叩き直してやる!』
『龍族の危機だ!』
『力を貸せ!』
『昔の事は、水に流せ。命令だ!』
散々言いたい事を良い続け、ロートの怒りが臨界点を迎える時に
ロートの身体が揺れ、ロートの声とは違う声で言葉で
『黙って聞いていれば、いい気に成りやがって!?』
『!?』
最長老は、ビクリとしてロートに頭を垂れる。
最長老がロートに頭を下げて、いる意味を分からず、「何でこんな厄災に!!」と本音が出て来る。
『人形はあんたら龍族は成れんぞ。やっても無駄。無駄。無駄。教える義理も無い。またあの時の様に46cm砲弾でも撃ち込もうか?』
『も、申し訳ございません。年若い長老達に話をしておきます。どうか、どうかそれだけは無いよう願います。』
冷や汗ダラダラの最長老を見て、厄災とは違うと思う長老達は、視線をロートに合わせて見る。
パチリと瞬きをして、長老達を見る。
視線が合った時のゾゾゾと身体中に駆け走る悪寒。
本能でガツンと頭を殴られた様に感じる龍達は、一斉に頭を垂れた。
(こいつは駄目だ。)
(勝てない)
(殺される)
(あんなのがいるなんて)
(厄災の身体をのとって何をする気だ?)
(怖い。怖い。怖い。)
ロートはフンと鼻を鳴らして、龍の国を後にした。
次にロートの意識を取り戻していたのは上空を飛んでいた時だった。
◇
ネロは、ドラゴンの国に帰って来た。
門番は、嫌な顔をして、ドラゴン族の皆は、すこぶる嫌な顔をする。
たまに、外に出ると、ネロを触った処をマークを着けて、後で消毒液で掃除をする。
あれは触れないで下さい。
これも触ってはいけない。
あれも駄目。
これも駄目。
駄目。駄目。駄目。
駄目のオンパレードだ。
ネロのドラコン族では、ネロに触らせては、駄目。
座敷牢に入れられ、話しかける者も少し、食事や排泄の処理する下女のみと、動けなくなるまで暴力を振るう下男だけ。
ただ、殴られているばかりのネロでは無い。やられっぱなしばかりでは無い。ネロも抵抗をする。
そんな事が続いて、ネロは強くなり、座敷牢をぶっ壊して、自力で外に出る。外にいるドラゴン族をかたぱなしから反撃して壊滅的させてから外に出て行った。
『薬の元が!!』
『追いかけろ!』
『奴がかろうじて生きていれば良い』
『大事なのは奴の血肉だ!』
ドラゴン族からは色の白いドラゴンが生まれた場合座敷牢に閉じ込め定期的に血肉を接種する。
ネロ以外の白いドラゴンは、幼くして死んだ。
目の当たりしたネロは、そうならない様にして暇な時間に能力操り逃げ時を探し続けた。
定期的に外に出る時、頭に街並みを頭に叩き込んで、活路を見いだす。
そして満月の夜に逃げ出した。
座敷牢を撃ち破り、下女、下男を殺し尽くしてドラゴン族の街を破壊して逃げ出した。
『来たぞ。化け物ども』
門番を蹴散らせ戦闘不能にしてから街に入る。
街の奥に豪華な家が有る。玉座に座るドラゴン族の王。
『戻ったか!儂に取って大事な』
『違うだろ!お前が欲しいのは俺の血肉だろ? たまに産まれる青いドラゴンから血を、薬草と肉と血で薬を作り長く生きられる為に多くのドラゴンが亡くなった』
『ククク、話が分かるなら、尚良い。儂の為にその命を寄越せ。儂は後500年生きる為に!』
(化け物かよ)
『所詮長く生きてきた儂にかなうドラゴンはいないのだ!ハハハ』
(どうする?ジルとホムラとロートならどうする?)
ジルなら「首を切り落とす」と言うだろうな
ホムラなら「袋叩きにする」言うだろうな
ロートなら「老いぼれの肉何かいらん。輪切りにして豚の餌にしてやる」と言うだろうな
『ククク』
『何が可笑しい?』
『嫌。クソジジイの戯れ言だな。俺の仲間なら今頃あんたは地べたに倒れてる』
顔を赤くする長はブルブル怒りで身体が振るえてる。
『馬鹿にしおって!!』
口をパカリと開けて火の玉が作られるが、久々過ぎて火の玉が放たれる事はなかった。
『昔は、賢くて仲間思いのドラゴンなのに私の血を与えて長になったら自分勝手にドラゴン族を恐怖で支配しよって、お前の役目は終わった。消えろ』
ネロの身体を使い、言葉を発した何者かに怯える長
『お待ち下さい。「○○」!!』
長が 「○○」 と言ったらぐしゃりと何か圧倒的な力により押し潰されたいた。
『族長?帰っていい?』
『ああ、いいぞ。たまに帰って来てくれれば』
(怖い。あの方は、消えてもいまだにあの方が残した物は残っている。)
新しい長は、目の前の光景に唾を飲み込み、平常心でネロに言う。
『じゃ、またな』
そう言うとネロは来た道を戻る。
姿が見えなくなってようやく新しい長は息をついて、座敷牢に繋がれているドラコンを外に出す。
怯えるドラコンの子達に頭をなぜて長は、笑う。
『もう大丈夫だ』
『天に唾を吐くと必ず自分に帰ってくる』
ポツリと呟く長は、物言わぬ姿になった前任者の長を視線を送り、すぐに外した。
(私もああならない様にしないと)
" いつでも見ているから " そんな声が聞こえた気がする。




