ジルだから
五稜郭迷宮の心臓部の核に着いたジル、ホムラ、ロート、ネロ。
薄暗いかと思っていたら、なんと明るい部屋だった。
地下なのに。
部屋の中心に台座が有り、赤い玉が鈍い光を出して浮いてる。
一部。ひび割れてる所も見受けられる。
あれはセロハンテープか?
ひび割れの所にこれ以上割れないように貼ってる。
「明るいね」
「もっと暗いと思ってた」
「あれが核か? 中に浮いてる。あのひび割れは何だろうか?」
「イヤな予感がする。また、俺に持てと言ってくるのか?」
ネロがボソリと言う。
「「「ひび割れしてるから割って持って帰ろうか?」」」
ジル、ホムラ、ロートはハハハと笑っている。
「辞めろーーー!絶対に俺に持たせる気だろ!」
ジル、ホムラ、ロートは答えた。
「「「当たり前じゃん?」」」
「変態共でも嫌なのに迷宮の核何て嫌だ!何か合ったらどうする?!」
必死に抵抗するネロ。
「迷宮の核。このひび割れは何なのか聞いて見てよ?」
ジルがネロのマジックバックを指で指して言う。
「人の話を聞けーーー!!!!!! ジルーーー!!!!!!」
必死に言っても助けてくれる仲間は居なかった。ホムラもロートも関わりたく無いのか空気の様に気配を消す。
「は?うぇぇ?。誰に?聞く?」
ネロはこてんと頭を倒してジルに聞いて来る。ジルは「何言ってんの?」と当たり前に言う。
「変態共に」
「・・・。」
定期的に瓶を見るネロ。
変態共の合体をこれでもかと見せつけてくるのではっきり言って関わりたく無い。
ジル、ホムラ、ロート、ネロは迷宮の核から扉の方に移動して、胡座をかいてネロのマジックバックから白くなった瓶を出す。
「水蒸気?」
「あれから何時間も合体してる」
「疲れないのか?」
「飢えてたみたいで、たまに見せつけてくる」
ネロがげんなりして瓶をジルに渡す。
ジルは「ふーん」と答えてから手渡された瓶を思いっきり上下左右シャッフルする。
「「「!?」」」
ホムラ、ロート、ネロがびっくりして、慌ててジルに言う。
「死んじゃうよ!」
ホムラが言う
「悪魔と妖精だよ?」
ジルが淡々と答える。
「突然のシャッフルは、辞めた方がいいよ?」
ロートが「瓶が割れたらどうする?」と聞いてくる。
「案外、丈夫に作られてるから大丈夫」
気にせずジルは振り続ける。
「死んだらどうする?」
ネロが聞いてくる。
「死なん。死なん。気にしてたら駄目だよ。これは、こうするのが一番。」
有る意味怖い。
瓶の中で縺れ合う変態共。瓶を覆っていた水蒸気は、魔法で消して、外から見る。
絡み合った躯に悪魔と妖精。
うん。目を回している。着ていた服も散らばってる。
「あっ、遣ることはやってんだ」
感心する様に言うジル。
一連の行動に着いていけないホムラ、ロート、ネロだった。
「何をする気ですか?」
「ん?。だってあのひび割れが気になるし、持って帰れるなら持って帰ろうかなって思ってた。変態共に聞こうと思ったんだ。」
「あー、やっぱり」って顔をするホムラ、ロート、ネロ。
ジルは興味を持ったらとことん調べる。が、今回は資料が無い。だから変態に聞こうと思ったのだ。
瓶をコンコンと叩く。
だが、瓶の中では、変態共はのびてる。
「起きるまでネロが持ってて」
と、ジルはネロに瓶を渡す。
イヤイヤな顔のネロ。ジルに言い返せないから渋々、蓋を確認してまたマジックバックに戻した。
それから一仕事が終わったかの様な顔をして紅茶タイムが始まる。
「茶請けのクッキーです。」
「保存食だけどな」
「やっぱり、デリバリーは出来た方がいいよ」
「無理だって。ここ迷宮だよ?」
「迷宮だから出来ると思うのだけど?」
「「「イヤイヤ。無理でしょ?」」」
出来て当たり前の考えのジル。
ホムラ、ロート、ネロは、ジルを見ながら「何言ってんだ」と顔をする。
最近分かって来たが、ジルは少し天然かも知れない。
変態共が目を覚まして瓶の中ギャーギャー騒ぐ。
ジルが、満面の笑顔で再び瓶をシャッフルする。
大人しくなった変態共は正座をしてジルを見てガタガタ震え上がる。
リーダーのジルが、聞く。
8個の目が変態共を見下ろす。
変態の話はこうだ。
「迷宮の核のヒビは、1000年前に、シロエと頼もしい従者とシロエを神の様に崇めているジェラルドが迷宮に散歩感覚で来ていた時に、たまたま、偶然にモンスターの攻撃が従者の腕にかすり傷を負わせた。その時、激昂したシロエが魔法で46cm砲弾を撃ち込みその衝撃は外まで響いた。迷宮の核はその時に付いた物です。」
身振り手振りで話す悪魔とそんな化け物がいたのかと思ってる妖精。
(フフフ。今に見てろ、白銀髪の男よ。ここは迷宮の核が有る所。俺の力が増すのが分かる。ん?)
視線を感じて悪魔が視線の方を見る。そこにはネロの顔が合った。
(丁度いい。こいつの躯を操って・・・)
「ネロ。そんな変態を見てると此方まで変態が移るぞ?」
ネロの目が赤く光る。
ホムラ、ロートは、警戒をして剣を掴む。
『フフフ。乗り移るだけが全てでは、グホッ!?』
ジルの裏拳がネロの顔面にヒットしてネロは後ろに倒れる。
「考え中に大声を出さない!」
((容赦無いな))
瓶の中でも悪魔は後ろに倒れ、すぐさま起き上がりいい放った。
「お前!?仲間だろ?」
悪魔が言う。
「仲間だが?」
ジルがこてんと首を倒して言う。
「普通、思いっきり裏拳で殴るか?」
「・・・普通、殴るだろ?」
ジルが「何言ってんだこいつ」と言わんばかりの顔をする。
ホムラとロートは真顔で首を横に振る。
「ネロ」だから出来る事で、ホムラやロートだったらやらない事は・・・
((やるな!あの顔はやる。絶対にやる!。この世に絶対は無いが、確実にやるな。))
「お前には、仲間を大事にする心が無いのか?」
「?。有るから、力を加減して殴っただろ?なにが不満なんだ?」
ムスッとするジルに悪魔は焦りながらホムラとロートを見て言った。
「あの男は、仲間意識は有るのか?無いよな!確実に無いよな!何でお前らは止めないんだ?」
必死に話す悪魔にホムラとロートは、
「「ジルだから」」
と言って遠い目をする。
何か諦めの境地だ。
「その一言で諦めるな!男なら教えてやれよ!」
悪魔が説教してくる。
「ネロなら大丈夫。」
「ああ、大丈夫。今に始まった事でもないし、囮もやってるし、頼もしいぞ?」
「何で疑問系なんだよ!」
悪魔から同情されるネロだった。




