常識が通じない奴ら
ボス部屋の前にやってきたジル、ホムラ、ロート、ネロは、大きな扉の前にいた。
ボスの前に繰り広げた戦闘に疲れを一切見せない4人。
タフで有る。
「じゃ、開けるよ?」
ネロが両手で軽く押すとゴゴゴっと音を立てて扉が開く。
中は暗く、壁に有るお皿に火が灯り、中央にネロ、ロート、ホムラそしてジルの姿の土人形がいた。
安全圏の処まで来たジル、ホムラ、ロート、ネロは、自分達の土人形を見て、言葉を発する。
「俺達の土人形?」
「ゴーレム?」
「本物の方が数倍格好いいぞ!」
「じゃ、戦闘開「ドゴン!!」」
先手必勝でホムラの掛け声の前にジルが、自分のゴーレムを無属性魔法の塊をぶつけ仕掛ける前に瞬殺した。
土人形はボロボロと黒い塊から崩れ、埃の様に小さくなり消える。
「ジ、ジルさん。」
「ジル?」
「ジル・・・」
「先手必勝♪」
フフンと腰に手をやって笑うジル。
ホムラ、ロート、ネロは、ポカンと口を開けて動きを止めていた。
ジルだけは、視線を土人形から外さない。
「動くようだ?」
土人形のホムラ、ロート、ネロが剣で向かって来る。
ホムラ、ロート、ネロも土人形に向かい剣を振り下ろす。
簡単に倒される土人形。
「呆気ない」
「簡単すぎる」
「本当に土人形だ。」
ボロボロと崩れる土人形の中から歪な黒い玉が出て来る。
キラキラと発光する核に何の疑いも無くネロは、触った。
「ほら、核が有ったよ」
ビー玉やおはじきが好きな子供の様に笑って指で挟んで見せるネロ。
「!。ネロ、触るな!!。捨てろ!!」
「えっ?」
ロートが止める間も無くネロは核は、黒いモヤモヤした物が核から出てネロに蛇の様に絡みまとわりつく。
腕を振っても走っても転げても消えないモヤモヤした物が色を濃くしてネロを覆い隠す。
「簡単に行くと思ったら、これか!」
ホムラの怒気を混ぜた言葉が出る。
「ネロのバカめ!」
苦々しい顔をするロート。
「さて、どうする?」
軽い口調のジル。
言葉は焦っているのを感じさせないドーンと構えてる感じだ。
スライムの様なにジワジワとネロに纏わり付き、ジル、ホムラ、ロートはその光景を見る事しか出来ない。
完全に纏わり付いて、モヤモヤした物がネロを中心に渦巻く。
風船の様に膨らみ繭の様になり、ジル、ホムラ、ロートは石畳を蹴り後ろに跳び距離を取り見続ける。
「嫌な感じがする」
剣を構えるホムラ。
「ああ」
睨み付ける様にロートは見て返事をする。
「処でどうしてもジルもロートさんも無事だったんですか?」
近くにいたのに何も起こらなかったジルとロート。
「指輪のおかげ」
ジルは、ロートがあげた指輪で守られていた。
ロートは龍としての力が強く弾き返す。
ホムラは、一番地遠くにいたから無事。
好奇心旺盛なネロが、ボスの罠に蜘蛛の糸の様にひかかった。
繭が霧の様に薄く消えてネロの姿が現れた。
肌の色は小麦色に髪が黒くなり、眼球が白から黒くなり瞳は茶から赤になった。
「何と一体化したんだ。」
「魔力の量が増えた。ジルどうする?」
「・・・考え中・・・」
ジル、ホムラ、ロートは焦る。
剣を構えて注視する。
「ふははは!!。やったぞ!!。やったぞ!!。手に入れたぞ、新しい身体を手に入れた!!。扱いやすい!!。」
天井を見て高らかに笑う黒ネロ。
天井からゆっくりと視線を下ろしてジル、ホムラ、ロートを見る。
口角を上げて黒ネロは言う。
「貴様らにはに感謝をしている。俺の復活の躯を用意してくれたのだ?」
(((何で、疑問系?)))
思いながら次の言葉を待つジル、ホムラ、ロート。
「怖じ気づいて言葉も出んか?」
ニヤニヤ笑う黒ネロ。
だが、ジルとホムラの視線が合うと肩がビクリと動き、ジルとホムラを交互に見て何かを思い出したかの様に次第に顔色が悪くなり冷や汗をかき焦り出す。
「「「?」」」
ジルとホムラを長い尖った爪で交互に指で指して黒ネロは高らかに
「何でお前達がまだいるんだーーーーー!!!!」
と、叫んだ。
「?」
「???」
「どう言う事だ?」
指が震え、言葉が裏返りガタガタと震え出しす黒ネロ。
異様な光景である。
「(誰かと勘違いしてるな)」
「(誰だろう?)」
「(分からん)」
ジル、ホムラ、ロートは黒ネロを見る。
「見るな!!」
嫌。ここ迷宮出し、敵が目の前にいて視線を外すと言うのはどうかと思う。
「そんなに!そんなに俺が憎いのか!?」
黒ネロは言う。
「お前の仲間に傷を付けたのが、許せないのか?!」
(((誰かと勘違いしてる気がする。)))
ジル、ホムラ、ロートは思う。
「ここは迷宮のボス部屋だぞ!!」
(((知ってる。)))
ジル、ホムラ、ロートは思う。
「ケガして当たり前だぞ!!」
(((当たり前ですが?)))
ジル、ホムラ、ロート・・・以下同文。
「散歩気分で来る処じゃ無いぞ!!」
(((散歩気分で来てません。観光気分です。)))
「それにたかが小さな切り傷だろうが!!着物が切れて肌に少し血がにじんだぐらいだろ!?」
(((意外と痛んだぞ)))
「毒付きのナイフで斬り付けた訳でもない!!」
(((良かった、毒なら解毒剤が必要だと思った)))
「毒何て卑怯な手段は俺は選ばない!!」
(((それは大変有難い。毒の事を考えずにネロとの分離の方法を考える事が出来る)))
「俺は剣や魔法で追い詰める!!」
(((それはこちらも同じ)))
「なのに、女から男の姿になってでも俺を復活するまで待ってたのか?!」
(((姿を変える?復活?)))
「まだ殺し足りないのか!?」
(((殺し足りない?)))
「従者の腕に傷を付けたのがそんなに許せないのか?!」
「シロエーーーーーー!!」
「(シロエ?!)」
「(知っているのか?ジル。)」
「(ああ。俺が今読んでる「始姐様と僕」と言うタイトルの本に書いてある女、児童でな。神の様に崇拝しているから、ってきり実在しない人物だと思った。書き手の妄想かと思っていたが・・・。)」
「(じゃ本当にいたんだ。)」
「(誰が書いたんだ?)」
「(ジェラルドって言う人)」
「(他に誰がいたんだ?)」
「(えーと、シロエ、ジェラルド、土方歳三、斎藤一、沖田総司、永倉新八、原田佐之助、山崎丞。)」
「何とか言え!!」
「「「・・・ネロの身体を返してもらおう」」」
ジル、ホムラ、ロートの言葉に黒ネロは高らかに笑う。
「無理だな!俺を倒すには宿主も倒さないと行けない。」
「「「・・・」」」
「俺が死ねば。宿主も死ぬ」
笑いながら黒ネロは、勝ち誇った様に言う。
だけど返って来た言葉は黒ネロが想像していた言葉を遥か上に行った言葉だった。
「別にいいけど?」
ジルが真顔で言う。
「えっ?」
目が点になる黒ネロ。
「リーダーがそう言うならそうだね。別にいいね!」
ホムラもうんうんと頷きながら言う。
「プクク。お前ら簡単に見捨てるな(笑)。まぁ、我も別にいいが?」
笑い声を必死に押さえながらロートは言う。
黒ネロが叫ぶ。
「薄情もの!!お前らには、仲間意識は無いのか?!普通、どう助けるか考えるだろう‼️」
「・・・囮には使えるな?」
ジルが感情を込めずに言う。
「また、ホワイトウルフの群に投げ込みますか?」
ホムラが笑いながら言う。
「また?」
黒ネロが呟く。
「今度はライガーウルフの群でいいんだろ?」
うんうんと頷きながらロートは言う。
「「また」と言うのはどう言う事だ?!」
「「「そのままの意味だが?」」」
ジル、ホムラ、ロートは首をこてんと倒して「何言ってんだ」と顔をする。
「な、なんだその顔は!!。「何言ってんだ」と顔をするな!!」
ブルブル震えながら黒ネロは言うが、ジル、ホムラ、ロートは、何が可笑しいか分からない。
「囮役はネロだろ?」
「頑丈ですし」
「高い所から落としても死なないし?」
ジル、ホムラ、ロートは、何が黒ネロがそんなに吠えるのが分からない。
「嫌。死ぬぞ?普通に死ぬぞ?お前ら頭大丈夫か?」
「「「失礼な!!」」」
ついつい黒ネロは、宿主のネロに同情をする。ネロの扱いの実態を知った黒ネロ。仲間のジル、ホムラ、ロートがその事に全く気付いて無い。
「さて、黒ネロ。ネロを返してもらいます。」
ホムラが笑顔で言う。
「嫌。待って。俺達がどれだけ強くなったか調べれるいい時だ。いい実験サンプルが目の前にある。」
ジルはニタァァァと笑い、その顔を見た黒ネロの背筋をゾクリさせた。
(怖い)
本能的に感じた黒ネロ。
「実験体・・・いいね~♪」
ロートもニヤニヤ笑う。
(ヤバい。こいつらヤバい。シロエ以上にヤバい。こいつらは根本的から何かがヤバい。常識が通じない!!目を合わせては駄目な奴らだ!!)
「「「さぁ~、俺(僕)(我)達を楽しませてくれ!!」」」
黒ネロVSジル、ホムラ、ロートの戦いの幕が上がった。
逃げる黒ネロ。追いかけるジル、ホムラ、ロート。
魔法攻撃を容赦無く打ちまくるジルとホムラ。
打撃戦を繰り出すロート。
逃げ続け力尽きて抵抗出来ない黒ネロ。
迷宮 : あぁ・・・。容赦無いな。普通手加減するし、何なら攻撃出来ないのが普通。何か見ている此方が不憫でならん。悟ったはずだ。彼奴ら普通じゃ無いんだと・・・。ボスに教えるべきだったか?。・・・彼奴生意気だったからな~。いい気味だ。ふははは。
迷宮も意外と酷かった。
迷宮すら黒ネロを助けない。
哀れな黒ネロだった。




