2人はトラブルメイカー
蝦夷に着いたジル、ホムラ、ロート、ネロは駅から出て外を見た。
一面真っ白な銀世界。
そう雪が降っているのだ。冒険者の装備服だから多少の寒さには耐えれるけど、早めに毛皮のコートが必要になる。
「ホワイトウルフの毛皮をコートにして良かった」
蝦夷に来る前に寄った迷宮。
蝦夷は雪国だからその対策として氷と雪の迷宮に4人で行った。
迷宮の入り口かからの豪雪地帯になって足を取られ、なかなかいつもの様に動けないのを狙ってやってくるホワイトウルフ。
彼らは、雪の暗殺者と別名があるが、見た目は本当に可愛い姿をしていて、彼らのぬいぐるみは、マニアやコレクターとって欲しい物上位に位地にいる。
ホワイトウルフは雪や雨を操り冒険者を苦しめる。が、ジル、ホムラ、ロート、ネロには関係無かった。
一方的に蹂躙する。
取り合えずボスを3回倒し、4回目の時は、ジル、ホムラ、ロート、ネロを見た時にしっぽが股の間にしまわれガタガタ振るえていた。
まぁ、ジル、ホムラ、ロート、ネロは毛皮の事しか見ていないので気付きもしない。
5回目の時は、4人の気配を感じてボスがボス部屋を逃げ回る。水晶の迷宮と同じ事が起こった。
だけど、あっさりジルがホワイトウルフの首を切り飛ばし倒した。
その時手に入れたのが、毛皮とホワイトウルフのミニチュアのぬいぐるみだった。
今回はホワイトウルフだったが、たまにイエティも出て来る。イエティの毛皮は暖かいので、ジル達はそれ狙いだったが、最後までイエティは出て来なかった。
粘ったのになぁ~。
蝦夷には、右を見ても左を見ても白い髪の人がいっぱいいる。
アルビノじゃなくて、蝦夷は万年雪。狩りで生計を立てている。
その為か、目立たない様に髪も白くなった。
黒髪じゃ目立つし動物に命を狙われる。自然と白い髪が多く生き残り自然と黒髪の人が消えて行った。
ホムラ、ロート、ネロの髪の方が珍しく行き交う人々が、ジロジロ見てくる。
ちらりと、ちらりじゃなく、物珍しさにがっつり見てくる。
その視線が嫌になり、ホムラ、ロート、ネロは先にホテルに行こうとジルの手を引っ張ってホテルに向かった。
ジル、ホムラ、ロート、ネロは、ホテルにチェックインをする。
二人部屋を2つ頼んで、ジルとホムラ、ロートとネロで別れて部屋に入る。列車の旅の時に作って当たりくじにより、もう部屋割りは決まっていた。
「久々の一緒の部屋ですね。ジル」
「そうだな」
冒険者時代の名残で、ジルもホムラも受付嬢に手を焼いた2人は扉を閉めるとすぐさま鍵とロックを掛ける。
そして直ぐ様部屋を調べる。額縁の裏、壺の中、棚の間。
部屋には備え付けの露天風呂が有る。風呂好きなジルとホムラは、冷えた身体を温める為には丁度いい。
勿論、室内にも備え付けの風呂があるが、どうも入りたく無い。
ジルとホムラは顔を見合せ何も言わず手で外の露天風呂を指を指して頷き合う。長い間コンビを組んでいただけはある。
バスユニットから大判タオルとタオルを持って露天風呂に行く。
濡れない所に装備服を脱ぎ、かけ湯をして先に身体と髪を洗い流してから湯船に入った。
「「あ"~」」
ついつい声が出てしまう。
タオルで髪を纏めて湯に付かない様に配慮する。
「凄いね。ホテルの人も街の人も僕やロートさん、ネロ意外黒髪の人がいない。やっぱり土地柄からそうなったのかな?」
「蝦夷の人は、狩りで生計を立てているからな。雪国では、黒髪の人は生きて行けなかったのかもな」
「狩りが主流ですから銃剣が至るところに有りますね。」
「そうだな。でも俺は、水晶の迷宮で見たマスケット銃の方がいい」
「ああ、あの銃ですか」
「そう」
目を閉じて露天風呂の縁に頭を乗せるジルとホムラ。
ゆっくり入ってると隣から声が聞こえる。
「おお!露天風呂か!!ネロ入るぞ」
「本当だ!ロートさん入ろう」
そんな声と服を脱ぐ音と共にドボンと水面を叩く音が2回する。
「彼奴らかけ湯したか?」
「音からして多分してないと思いますよ?」
「「・・・」」
「気付かなかった事にしよう」
「そうしましょう」
ジルとホムラはゆっくり露天風呂を楽しんだ。
隣では、川で遊ぶ子供の様に騒がしい。
音が次第に大きくなる。
情緒溢れる思いは無かった。
「・・・出ようか」
「・・・そうですね」
隣の騒がしさでゆっくり露天風呂を楽しむのも数分しか出来なかった。後で、乗り込むのも考えたけど、何かロートとネロの手の平で踊ってる感じで嫌。
露天風呂かろ出て、身体を拭いていつもの装備服を着る。
魔石冷蔵庫を開けて、珈琲牛乳を飲む。
「風呂上がりに一杯だね!」
「はい。美味しいです。」
グイグイと飲む珈琲牛乳の甘くてほろ苦い味が身体に染み込む。
珈琲牛乳を飲んでソファーで寛いでるジルとホムラの耳に何かが割れる音がし、その数秒後扉を叩く音がするが、ジルとホムラは、関わりたくないのか居留守を使う。
「お客様どうかされましたか?」
「おお!中居か?」
「いえ、ホテルのスタッフですが、何かお困りでしょうか?」
「うむ。もう一人が部屋に居るのだが、透明な板を割ってしまってな」
「透明な板?」
「そう、板」
女性スタッフはロートの言ってる事が分からず、ロートに続いて部屋に入り、数秒後悲鳴が聞こえた。
「・・・悲鳴だね」
「・・・悲鳴だな」
ソファーに繕いだまま隣の部屋から聞こえて来る女性スタッフの声。
良く、女性スタッフに性的暴行をするお客が居ると聞くが、ロートとネロは女性に興味が無い。
そこは安心出来る。
「・・・何か有りましたね。」
「・・・何か有ったな。」
「大方、窓ガラスを割っただろうな?」
「透明な板と言ってましたからね」
「弁償は?」
「きっとまた、どちらが多く払うかで揉めるな」
「「はぁ~」」
ジルとホムラは深いため息をついて、隣から聞こえて来る言葉に耳を両手でふさいだ
((どうにかこちらに来ませんように。))
そんな考えが無駄の様に扉のチャイムが鳴り扉を叩く音がする。
ジルとホムラは同時に扉を見るが、居留守を決め込む。
「お客様?扉を開けて貰えませんか?」
連打するチャイムに扉を叩く音。そのうち扉を壊す勢いだ。
仕方なしにホムラがソファーから立ち、扉をに近付いて言葉を発した。
「何ですか?」
扉を開けず扉を閉めたままホムラは話す。
「ああ、お客様扉を開けて貰えませんか?」
女性スタッフが、言うとホムラは、
「えっ?!嫌だけど。」
拒否してくると思わず、女性スタッフは「えっ?!」と言った。
関わりたくないのだ。ジルもホムラも
「僕達もう寝るのです。問題起こした張本人に言って下さい」
「そうしたいのは山々ですが、本人に伝えても伝わらず、困っております」
何処から来るのかスタッフの数が、徐々に多くなる。
ジルとホムラの部屋の前には2人のスタッフにロートとネロの部屋に3人のスタッフが来て「うわ~」って声が聞こえて来る。
仕方なしにジルもソファーから立ち上がり、扉の前に行く。
「ロート」
「ジルか!」
「ここを開けて「仲良く折半しろよ」」
ジルは言うとまた部屋に戻って今度は、ベッドに入る。
「ホムラ?」
助けを求めるロートの声にホムラは、
「僕も眠いのでここら辺で失礼します」
ホムラも言って部屋に戻りジルのベッドに潜り込む。
ロートとネロの部屋は、嵐が過ぎ去った様に壁紙は破れ、窓ガラスは粉々。備え付けのメモ帳やペン、壺は割れ、テーブルは、ズタズタ、ソファーは破れ中のスポンジが出てる。
弁償は、金貨150枚。ジルの言った通りに仲良く折半して金貨75枚づつ払った。痛い出費だ。
ロートとネロは別々の部屋に案内された。
勿論、素泊まりの部屋だ。
弁償金も即金で払い、ホテルの従業員はビックリ。これでブラックリストには、入らないだろう。多分。




