酒豪
何事も無く順調に列車の旅を楽しむジル、ホムラ、ロート、ネロ。
酒場の一件以来ジル、ホムラ、ロート、ネロは余り部屋から出なかった。
ただ単に、ジルの部屋で始めたカードゲームに白熱して夜通しババ抜き、7並べ、ポーカーをしてホムラ、ロート、ネロはジルの部屋に居座り続けた。
「ムムム。ネロ早くハートの9を出せ。我がハートの11が出せないだろう!」
(ネロが持っていたんだ。ハートの9)
(ロートが持っているのはハートの11かぁ)
顔の表情を見せない様にジル、ホムラが心の中で呟いた。
言い合いをする横でコンコンと扉を叩く音がする。だが、カードゲームに夢中なジル、ホムラ、ロートとネロは気付いていない。
「何か音した?」
「さあ?」
ホムラが音に反応してジルに聞いたが、ジルもあまり気付いていなかった。
コンコンコン
また叩く音がする。
次はロート、ネロも気付いてジル、ホムラ、ロート、ネロは、顔を見合せる。
「誰か来たよみたいだね?」
「誰が出る?」
「我は無理だぞ」
「俺も無理~」
「じゃ、僕が出ます」
ホムラが言い、扉に向かって歩く。
「はい、誰ですか?」
扉に向かってホムラは、言った。
「切符の拝見です。」
「切符?」
ホムラがオウム返しに言いジル、ロート、ネロを見る。
「切符?」
「切符だって?」
「切符かぁ」
「さっき来たけど?」
ジルが鎌をかける。
ホムラが念話に切り替える。
「(どうする?)」
「(開ける?)」
「(開けても良いが血の海にするなよ)」
「今開けます~」
ガターナイフを袖に隠して扉の鍵を解除して開ける。
扉を開けて笑顔のホムラが乗務員の胸ぐらを掴んで中に入れた。
ここは列車の中で個人部屋。人知れず何かをするには丁度いい。
◇
何事無く列車は、走る。
窓から見える景色を見ながらジルは、ロートとネロの会話に耳を傾ける。
話してるのは大した事ではない。ただ、お菓子を多く食べたとかないとか話しをしている。
はっきり言って、実に下らない。
「ジル、紅茶です」
「ああ、ありがとう。」
冷たい紅茶を受け取り一口飲む。旨い。
「僕は、ミルクココアです。」
ホムラもミルクココアを一口飲む。
「どちらが折れるでしょうか?」
「知らん。菓子の1つや2つ多く食べた何てどうでもいい。」
呆れた様に言うジルは流れる景色を見てる。何もない。只、山が遠くに見え、山の裾には水田がが辺り一面に広がってる。
「ジル~」
「ん~?」
呼ばれ、気のない返事をして声が聞こえた方を見るジル。
床には、乗務員が倒れてる。どうやら無理やり酒を飲ませたようだ。仕事中に。怒られるだろうなと思うジル。助けないけど。
ロートとネロは、ホムラが連れ込んだ乗務員にしこたま酒を飲ませ、内部情報を聞き出そうとしたが、只のしたっぱには何も知らない。捨て駒当然か、本当に知らないだけか。只、分かる事は、酔い潰れて寝ている。新しい乗務員が来たら引き取って貰おう。
「縄有る?」
ネロが聞いてきたのでマジックバックから縄を出し渡す。
何に使うんだ?
手早く結び、乗務員を簀巻き状態にする。
「こいつは何かしたのか?」
「したぞ。この乗務員はしたぞ。我らに断り無しに酔い潰れた。」
「・・・そうか」
何とも自分勝手な言い分だ。あんなに酒を浴びる程飲ませて先に潰れるなと言う方がおかしい。
「ジルは酔わないじゃん!」
待て、待て、待て!!
酔うぞ。俺だって酔うぞ。
「そーですよ♪。ジルの旦那は余り酔ったとこ見た事無いです。」
酒瓶に口を付けてらっぱ飲みをするネロ。
さっきまでキリッとしていたのに何で、そこで飲んじゃうの?
「何の酒飲ませたんだ?」
「「スピリタス」」
「アルコール度数が96以上ある酒じゃん!飲ませたの?」
「「飲ませた♪」」
ロートとネロの声がハモった。
消毒液用に買って常備していた酒を飲ませた何て、ヤバい。こりゃ水と間違えて飲ませたと言う話にしておくか?
ちらりとホムラを見るジル。
ホムラとアイコンタクトをしロート、ネロを見る。
うん。ダメだな。見事に2人共酔ってる。
床には、スコッチ、ウイスキー、ブランデー、バーボンの空瓶が転がってる。部屋に広がる酒の匂い。ホムラは窓を開けて匂いを外に流す。床にある1つの瓶に目が行く。そこには、エバークリアの瓶が有った。
「ホムラ?こいつらこれを飲んだのか?」
「エバークリアってアルコール度数が95も有って、スピリタスの次に度数が高い酒だねよ?」
「ああ。」
「「・・・」」
無言になってエバークリアの空瓶を見つめる2人。
「どうする?」
「どうしようか?」
床に転がって寝ているロートとネロ。ある意味、大物だが、面倒な事は全てこちらに丸投げ。
ついつい、この転がってる空瓶で頭を殴りたい衝動に狩られる。
「ジル、気持ちは分かります。僕だって、今非常に腹立ちますが、どうにか押さえて」
ため息を吐き出して、浮遊魔法を使ってベッドに運び寝かせる。案外優しいなと、ジルを見て思っていたが、置き方が乱暴だった。
イライラが伝わってくる。
うん。余計な事言わないでおこう
密かに思うホムラだった。
部屋の酒の空瓶を水魔法で中身を洗いゴミ箱に捨てる。一番上には、スピリタスとエバークリアの酒がアピールしていた。
「今日は、ロートの部屋で寝ようかな?」
ジルが、ボソリと呟く。耳にした僕は付かさず、ジルには言う。
「僕の部屋に止まりませんか?酒の匂いもしませんよ」
「そうだな。そうする。」
ホムラは、ジルに見えない様にガッツポーズを取る。片思いが実る
「俺はベッドを使う」
「僕もベッ「ホムラはソファーを使え」」
僕の部屋なのに!?
僕はソファーなの?
「僕もベッドを使います。一緒に寝ましょう」
「!?」の顔をするジル。
えっ?!そんなに意外だった?
「何もしませんよ?」
(何もしないアピールをしないと)
訝しげな眼差しで数秒間僕の顔を見て、軽いため息をして
「・・・。じゃ、ホムラの部屋に行く」
「はい」
(やった~♪ロートさんにネロ、酔い潰れてありがと♪)
ホムラはジルに抱きついて寝ようとあれこれ考えていたけど連日の完徹のカードゲームの為か、ベッドに入ったら直ぐに寝てしまい、結局あれやこれやをする事は無くジルはソファーで寝る事になった。
次の日、ロートとネロは目覚めた時にお互いの顔にびっくりしてベッドから落ちた。
頭が痛い。完璧な二日酔いである。
「あれ?。ジル達は?」
「いません。居るのは簀巻きの乗務員だけ。イテテ」
「取り合えず念話でイテテ」
ガンガンする頭で念話をするロート。
「(ジル?)」
「(ああ、起きたか?)」
「(今何処に?)」
「(ホムラの部屋にいる)」
「(ホムラの部屋?)」
「(そっちに行く)」
「(来なくていい。二日酔いで頭痛いだろ?スピリタスやエバークリア何て飲むのだから、少しは加減しろ、仲良くネロと寝てろ)」
そう言ってジルは念話を切った。
ロートとネロは液体頭痛薬と胃薬を飲んでネロはソファーにロートはベッドに寝た。
2人が回復したのは昼過ぎてからだった。
その後、ジルから雷が落ちたのは言うまでもなかった。




