水晶の迷宮
今日が王都にいる日の最終日。
明日の朝には王都を立つ。
何しようか?と4人で考えて出てきた案はネロとロートが冒険者登録をしたいと言い出したのだ。
理由は迷宮に入りたいからだ。
ジルとホムラは余りいい顔をしてないがネロとロートは乗り気だ。
渋々Okを出して僕達は王都の問題有りまくりの冒険者ギルドに向けて歩く。
馬車も有ったが馬が怖がってそれどころかじゃない。
さすが動物。
龍とドラゴンに見られて平然と馬車を引けないな。
ギルドに近付くとジルとホムラの顔付きが変わる。
プライベートの顔から冒険者の顔になる。
ギルドの扉を開け受付嬢のカウンターの前に立つ4人に新人受付嬢の顔がひきつる。
「冒険者ギルドにようこそ。
どう言ったご用件で?」
「彼らの冒険者登録をしに」
ホムラとジルの間にいるネロとロートを指を指す。
「あっ、はい。こちらの用紙に名前とこの板に一滴の血を垂らして下さい」
渡された紙に名前と運転免許証の大きさの透明な板に一滴の血を垂らした。
板には透明から青くなりロートもネロも大きくEと書かれている。
「魔力測定はどうしますか?」
『やらない』
『用事は終わった。ここには用が無い』
「帰るか」
「そうだな」
思い思いに言いたい事を言って早々に冒険者ギルドを後にした。
魔力数値が高すぎて水晶玉を破壊する恐れが有るからだ。
『これで水晶の迷宮に行けるな』
水晶の迷宮はクリスタル、アメジスト、シトリン、レモンクォーツ、モスキークォーツ、ローズクォーツ、アイリスクォーツ、ルチルクォーツ、グリーンファントムクォーツなどの種類に別れた迷宮で種類ごと出てくるモンスターも違う。
ただし、出入口は1つなのに迷宮の内部は9つに別れているが宝物が沢山出てくるで有名だ。勿論、死者数も多いから入りたがる冒険者はいない。
馬車で揺られて3時間。
お尻が痛くなった頃合いに水晶の迷宮に着いた。
「ここら1時間この獣道を歩いて見つけれたらいい方」
『見つけるとは?』
ネロが聞いてジルが口を出す。
「何十年か前にな、この水晶の迷宮の最奥のボスを倒すと宝箱に色んな水晶で造った宝飾品がわんさか出た。それを良くした領主が兵や農民、子供、動ける妊婦まで連れて宝探し、見つけたら3割は自分の物になるから皆探しに迷宮に入ったんだ。
動物と言っても鹿や熊位と思ってたら凶暴なモンスターがわんさか出てくる。
農民や子供、妊婦は戦う事が出来なくて次々と殺された領主の民は1日で消え、それでも持ち帰った宝箱からは大量のモンスターが出て来て、その領主も消えて今は建物だけが残されゴーストタウンになってレイスが居着いている。
綺麗に整備しとく人がいないと迷宮の入り口もわからんって事だ。こんな藪の中じゃね。さて行こうか?」
藪の中に入っていく4人はうろ覚えのジルを先頭で歩いて途中鹿や熊を見たがさすが龍とドラゴン。
野生動物は皆遠回しに離れている。
4時間歩いてクリスタルで出来た迷宮の扉に着いた。
水魔法で水を飲んで一息付いてから迷宮に足を踏み入れる。
中に入ったら真っ暗で扉が自動的に閉まり、突然床が抜けて僕達4人は一瞬で暗闇に落ちた。
『ふはははっ!!、これが迷宮かぁ!面白い、だが我に効かん!!』
笑いながら落下してフワリと飛行魔法で降りるロートは下を見てゆっくり降りていた。
その頃ネロとホムラは2人でクリスタルのトンネルに落ちていた。
『ぎゃぁぁぁ』
逆さまに足を抱き抱えたホムラは通常より早い速度で降りていく。
何せ、飛行魔法でもネロは重いさがプラスされて飛行魔法が十分発揮されて無い。
ついつい愚痴が出る。
「飛行魔法使えよ!」
『飛行魔法は使えないんだ!。浮遊魔法も使えないんだ』
「役立たず~!! それでもドラゴンかぁぁぁ~!!」
と言いながらキラキラ光るクリスタルのトンネルを落ちていった。
ジルが落ちたのはローズクォーツとアメジストの水晶のトンネルだった。
飛行魔法でゆっくり降りる。
アメジストの床に降りて足を床に2回打ち付けて強度を確める。
「2重のトンネルに来たのは初めてだな」
連なるトンネルを見て柄を握る。
フワリと降りて後ろから来る気配に剣を抜き斬りかかる。
どんなに気配を押し殺しても足音を無くしてもジルは気配を感じる事が出来る。
モンスターと思っていたらモンスターじゃなく赤い髪のロートが、剣で受け止めていた。
『怖っ!! 容赦無いな。ジル』
「ロート?」
『そうそう " 俺 " だ!』
「そうか」
一言言って剣を鞘に戻すし迷宮の通路を見るジル。
アメジストとローズクォーツの入り交じったトンネルだ。
顔が半分隠れて見えないが口元だけ光が当たりロートがニヤリと笑った。
ジルは勢い良く振り向き様にロートを袈裟斬りして胴体を2つに斬った。
「お前は偽物だ。本物なら・・・まず、剣で受け止めない。」
剣に着いた血がポロポロとかさぶたの様に剥がれ空中で小さくなり消える。
「彼奴の気配なら何処にいても分かるからな?
それに今は発情期だから嫌でも分かる」
誉めてんのか、貶してんのか分からないジルの言葉。
本物がいたら「嫌~。それ程でも」と言うだろう。
2つに別れた胴体を見て何言もなかった様に歩き出す
水晶の迷宮はミラーハウス見たいで方向感覚が分からなくなる
だからジルは少し歩いては止まり床に足を打ち付けて音の違う所に歩く。
ロートが落ちたのはグリーンファントムクォーツだった。
『ほぉ、我は緑の水晶か?
うむ。美しさな。さぞかし、その美しさで数多な人が集まっただろうな。だが、我はそんな美しさは関係ないぞ!! ミノタウロスよ。お前の肉を寄越せ!霜降りの肉を!!』
毒されていた。
ロートにジルはミノタウロスは霜降りの肉と教えられていたのだ。
『ブモォォォ!!』
逃げ惑うミノタウロスに笑いながらロートは水魔法で水を刃にして飛ばしていた。
『ふはははっ、肉が逃げるぞ!霜降りの肉の塊1つだけでは足りん!もっと寄越せ!水晶はいらん肉だ!肉肉肉肉肉肉・・・』
逃げ隠れるミノタウロスに沢山の霜降りの肉が欲しい龍の攻防戦が幕を開けた。
『これがクリスタルか?純度の高い氷みたいだな』
「ぜーぜー。貴方重すぎです。落ちても無事なら初めに言って下さい!」
魔力を使っていたホムラは肩で息をしていた。
床から30㎝の高さでようやく浮遊魔法が数分だけ使えるようになったネロは着地に失敗して、顔面を強打して直ぐに治癒魔法を使って悶えている姿をホムラに見せなかった。
『さっき使えるようになっただけだ。物の2分。俺的には凄いだろ?』
「貴方はブラックドラゴンでしょ?ドラゴンの時は飛べるのにどうして人の姿焼きだと飛べないのですか?」
『ドラゴンじゃ無いからだ。人が羽が無いのに飛べるか? 飛行魔法もここ最近出来た魔法だろ?』
「僕はジルからスパルタで教えて貰いました。だから飛べて当たり前なんです。龍が人の姿に変身しても飛べるのと同じです。」
『お前、夢見すぎじゃの』
龍なら人の姿でも飛行魔法が使えるが、ドラゴンは人の姿で飛行魔法が使えないのだ。理由は分からないが、大昔からそうなっていた。
「だから何です。貴方も飛べる様になりなさい」
無茶振りで有る。