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怖い笑顔

食事が終わって、食器の洗い物が終わったら東屋で思い思いに過ごすジル、ホムラ、ロート、ネロ。アユとススムはどうしたらいいのかソワソワしていた。

「ゆっくり過ごしな?」

ロッキングチェアに揺れながらジルは言う。

「そうです。せかせかしても駄目です。ジルの言うとおりゆっくり過ごしなさい。貴方達の主人は僕達です。僕達が『ゆっくり過ごしな』って言っているのです。それとも主人の命令に逆らう気ですか?」

ホムラの言葉の刺が、アユとススムの心に刺さる。

主人の命令に逆らう気など無い。

ただ、どうしたらゆっくり過ごせるのかわからないだけだ。


「ジル、ハンモックを着けたぞ。あの2匹に使えと言っておけ」

「ありがとう。ロート、ネロ」

そう言ってロートとネロは家に戻って行った。

「アユ、ススム。ロート、ネロが君達にハンモックを作ってくれた。昼寝。昼寝。」

四苦八苦しながらアユとススムはハンモックに寝そべり瞼を閉じた。

ジルの太ももにある本がペラペラと風によって捲られる。


蓄音機から音楽が流れる。

音楽と穏やかな風にアユとススムはうつら~うつらして眠りに入って行った。


「ジル、ホムラ」

小声で2人を呼ぶネロ。

「ん?どうした?」

「ちょっと、ちょっと、来て」

手招きをするネロ。隣には腕を組んでるロートがいる。

ジルとホムラは顔を見合わせてから席を立ちロートとネロの方に歩くジルとホムラ。勿論読みかけの本は、マジックバックに入れてる。


「どーした?」

「我らは少し出掛けてくる。」

「帰ってくるのは何時ですか?」

「分からん。1ヶ月なのか1年か2年か分からない」

「急にどうして?」

「色々あるのじゃ」

「何時たつの?」

「出来次第だ」

ジル、ホムラは慌てる事もなく淡々と聞く。

龍やドラゴンはねぐらを変える時がある。ジルもホムラもそんな事だろうと思っていた。


それから2週間。

夜中に誰も見送りが無いままロートとネロは龍とドラゴンの姿になって真夜中空を飛んで北の方に消えて行った。

「(行ったか?)」

「(行きましたね)」

「(二条迷宮で手に入れた食材を大量に渡した。食べてくれるといいのだが)」

「(食べてくれるといいですね)」


◇◇◇


朝早くから起きたジルとホムラは、東屋でコーヒーを入れて目覚めの一杯をチビチビと飲んでいた。

「目覚めの一杯ですね」

「紅茶の方がいいけど」

「紅茶の茶葉を切らしていましたからたまたま合ったコーヒーで我慢してください。」

「ヘイヘイ」

ストーブの中で薪がパチパチと燃えている。

「あの2人は朝が苦手なのでしょうか?」

「苦手かも知れないな。起きて来ないし、でも夜は早く寝ていたけど?」

「まぁ、家には時計と言う物は有りませんからね」


それでも寝すぎだろ?と思うジルとホムラはコーヒーを飲んでかるくため息を着いた。

「ロートもネロも出掛けていなくなりました。さみしいですね。」

「本当に、さみしいな。処でところてんを食べないか?」

「いいですね。食べましょう」

ものの5分でロートとネロの話が終わった。ジルもホムラもさみしいから話を変える。

三杯酢のところてんを食べるジルとホムラはむせながらもところてんを食べた。

「今日のお昼はBLTサンドにしませんか?」

「いいね。BLTサンドにしよう」

この前に蝦夷で食べたBLTサンドを食べて美味しかったのを忘れて無い今度家で作ろうと話をしていた。


◇◇◇


「ふんんん~…姉さん朝ですよ」

机を挟んだ隣のベッドに寝ているアユをゆっさゆっさと身体を揺らして起こす。

「ん~~~………あら、ススムおはようございます。」

「おはようございます、姉さん。朝です。もうジル様やホムラ様より早く起きないと行けません。」

「分かっております。支度をして、起こしに参りましょう。」

アユとススムは服に着替えた。

アユは、メイド服。ススムは使用人のスーツの姿になって部屋を出た。


大広間………いない。

トイレ、風呂場にも………いない。

各自の部屋の扉をノックしても………いない。

何処だろう?と思い玄関を出て東屋を見る。

動く人影にアユとススムは、もしかしたらと思い走って東屋に行った。


東屋に向かったアユとススムの視界に入ってきたのは、朝食を食べているジルとホムラの姿で合った。

「「すみません!!」」

来てそうそう頭を下げるアユとススム。

その姿を見ながらジルとホムラは魚のフライを食べていた。

「朝が苦手なの?」

「いえ………」

「早く寝てるよね?」

「………はい。」

「もう一度聞くけど朝が苦手なの?」

「そうかも知れません。夜は怖いので早く寝てしまおうと直ぐに布団の中に入るけど怖くて、中々寝付けないのです。」

「ふーん」

フォークで魚を刺してパクリと食べるジル。

ジルとホムラの対応の温度差。ホムラは優しく言うが、ジルは、興味無さげで答える。

「朝食を作りましょうか?」

アユが言うが、ジルがバッサリと答えた。

「朝食なら今、食べてる。」

困り顔をするアユ。

アユもススムも寝坊しまくりで、ホムラも助ける気がおきない。

「………何時まで突っ立ているつもり?さっさと席について君達も食べなさい。」

アユとススムと名前で呼ばれていたが、今日、今、この時に君達に格下げしたと思ったアユとススムの2人は、まず、信頼から取り戻さないと行けないと思う2人だった。


無言の食事が終わり。水魔法で食器を洗い籠の中で水を切る。

食後にコーヒーを入れて飲むジル、ホムラ、アユ、ススム。

いつもならロートとネロがいたら何か話題を作るだろう。

だが、ジルは、コーヒーをチビチビ飲みながら本を読んでいる。

ホムラは、コーヒーをチビチビ飲みながらジルから借りた本をペラペラ捲り本を見ている。

アユは、コーヒーが苦かったらしく砂糖とミルクを入れてどうにか飲んでいた。

ススムは、コーヒーが苦かったらしく砂糖を入れて飲んでいた。


「部屋のお掃除をいたしま………」

「もうやった」

「洗濯物やシーツ交換を………」

「もう終わってる。」

ことごとく全てを遣っているジルとホムラ。アユとススムの出番が無い。


「ジル様とホムラ様」

「「何だい?」」

本から視線を外さず答えるジルとホムラ。

「お聞きしても宜しいでしょうか?」

「「何?」」

本のページを捲る音がする。

「お二方はいつも何時頃に起きているのですか?」

アユが疑問に思っている事をジルとホムラに聞く。

「僕達の家には時計と言う物が無いので分かりませんが、朝の4、5時頃には、起きています」

ホムラが答える。

「ほぼ日の出と共に起きて、日の入りで寝るって感じですか?」

「「違う」」

「鳥が鳴く前に起きてる」

ジルが言う。

今でも現役な冒険者。冒険する頻度は極端に少ないが、それでもギルドマスターから一目置かれている。困った時の………と言う奴で、ランクはBのままなのにSクラスの依頼も軽くこなしてしまう。

本人達は、隠居の冒険者と言っている。

「どうしたら早く起きれますか?」

「「どうやって?」」

「普通に目が覚めるけど?」

「明日からジル様とホムラ様が起きる時間帯に起こして貰えませんか?」

「「………」」

「どうしますか?ジル。」

「どうしようか?ホムラ。」

「どうせなら今からで良くない?」

「そうですね。今から遣りましょう」

「「えっ?」」

「今から俺達の1日を教えるよ」

「安心して下さい。無茶振りなんてしませんよ」

とホムラは笑顔で言うが、ホムラの笑顔が怖いと思うアユとススムの2人だった。


お昼になったが、ジルとホムラは椅子に座ったまま動かない。アユとススムがいた奴隷商人の処では、お昼になったらちゃんと食べる様になっていたが、ジルとホムラは、昼になっても食べなかった。

「お昼は食べないのですか?」

「朝が遅かったからね。食べないよ。お腹が空いたらそのうちジルが動き出します。」

ホムラが言って温くなったコーヒーを飲んだ。


それから時間がたち、ジルが、本をマジックバックにしまい、席を立つ。

「アユ、アユ、ジルが、動くよ。ついて行きな」

と小声でアユに伝えるとアユも頷きジルの後を追った。

倉庫に入って行くジルに慌てて入るアユ。


「ジル様は私達の事がお嫌いなのでしょうか?」

「そんな事はないと思うよ。ただ、どうやって話せばいいのか分からないんだと思うよ。」

「そうなんですか?アユを殴ったりしませんか?」

「殴ったりしないよ。殴るぐらいなら首と胴を切り離す。その方が手っ取り早い。あっ、帰って来た。」

ジルは薪を持って肉、野菜は、鍋の中に入れてアユが持ってきている。


「少し小腹が空いた。ご飯にしよう」

テーブルに乗せた鍋からまな板の上に冷凍の肉を切ってじゃがいも、玉ねぎ、人参、かぼちゃを切り鍋の中に入れてマジックバックから氷の塊をナイフで砕き、ストーブに薪を追加して、鍋をセットし蓋を閉めて後は煮るだけ。

「醤油の方がいいかも知れませんね?」

「味噌の方がいいかも?」

「この前は、味噌でした。今回は、醤油にしましょう!」

ホムラが言うとジルは、頷いて醤油をお玉一杯分入れた。

「濃すぎるかも?」

「濃いなら砂糖を入れましょう!」

そうやってアユとススムを置いてきぼりにしてジルとホムラの会話は、続いた。


「あの~」

「何?、言ってごらん」

「温玉ならまろやかになると思います」

「すまない。家じゃ卵は無いんだ」

ホムラはすまないと頭を下げる。

アユは慌てて首を横煮る降った。

ご主人様に頭を下げさせたのだビックリ物だった。腰の低い主だとアユは思った。

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