笑顔
買い物を済ませて二条都市を後にして、一路南に向かって寝台列車に揺られていた。
「今日から2週間は列車の旅。部屋は2つに分かれているから、僕達とアユ達で分かれてるから安心して。」
ホムラの言葉に頷くアユとススムは、この場に来てないジルの事について聞いた。
「ジルは、珍しく睡魔に襲われて今、気持ち良く寝てます。」
違います。
睡魔では、ありません。
ジルは集中して念話をロートとネロに送っていた。
ロートとネロに連絡が取れなくなって1ヶ月。気にはしていたが、二人共、大人だから、大人の関係があると思い連絡を入れなかった。
「(ジル?どうした)」
「(やっと繋がった。今から帰るよ)」
「(何!?もっと遊んでこい!)」
念話から必死に聞こえるロートの声。
「(わかった。直帰する)」
そう言って一方的に念話を切ったジルは、水を一口飲んだ。
扉が開いてホムラが帰って来た。
「念話が繋がりましたか?」
「繋がった。ロートがもっと遊んでこいだって、確実に何かやったね。」
「やりましたね~。で、何てお伝えしたのです?」
「直帰すると」
「あちゃー!大丈夫ですかね?」
「さぁ?帰れば分かる事だよ」
顔を見合わせてフフフと不気味に笑うジルとホムラだった。
◇◇◇
戻って来て一番に目に着いたのは大きな屋敷が建っていた事だ。小さいこじんまりした家ではなくジル、ホムラ、ロート、ネロ以外で後10人程住める大きな屋敷だ。
「何これ?」
「家だ!」
「それは見れば分かる。あの小さな家は何処に行った?」
「「・・・」」
顔を背けるロートとネロ。
そうです。やらかしました。
家の側面を見に行くとただの板に絵が書かれているだけで裏には焼けた建物が有った。
うん。やらかしました。
旅行から帰ったら家が無い。
何で無いか聞きましたよ。
そしたら、回答が「覚えていない」そうです。
そんなのあるか~!
覚えてないで通用するか~!!
僕達の家が~
「あの~ジル様とホムラ様は、誰と話をしているのでしょうか?」
「「えっ?!」」
アユとススムに確認したら2人共、ロートとネロが見えていないそうだ。
「あー、最近見えなくなる魔法を開発してな、これなら見えるだろう?」
何でもない様に姿を見せるロートとネロ。
だが、長年連れ添ったジルとホムラはつらそうな顔を見逃さなかった。
「ロート、ネロ。大丈夫か?つらそうだぞ」
「我が辛いわけなかろう。元気じゃ」
「そうたよ。俺達は元気だぜ?」
まぁ、元気ならいいけど・・・なんか腑に落ちないなぁ~
「で、つらそうなのは分かりました。家はいつ元通りになるのですか?」
そんな事はすっ飛ばして、ホムラは言う。
「半年」
「「はっ?」」
「2ヶ月でやってください。休みなしならできるでしょう?アユもススムもいるのですから」
ホムラが笑顔でえげつない事を言う。
まぁ、そうなるよね。家が無くなっているんだから。
「ホテル代はロートとネロの財布から出して貰います。」
「「そんな~~~」」
ホムラ、ロート、ネロのやり取りを見ていたアユとススムはクスクスと笑っていた。
奴隷として買ってきた時から一度も笑わなかったがアユとススムが、笑ってしまう程、ホムラ、ロート、ネロの話が可笑しかったのだ。