ホテル・ハマナス
ホテル・ハマナスに帰って来たジルとホムラ。
部屋に入り二重施錠とドアロックを確認して、コートをマジックバックに入れてソファーに座ったジルの前に暖かい缶コーヒーを出したホムラ。
「ありがとう」
「いえいえ。それにしてもコート、すごく暖かかったですね」
ソファーに座り缶コーヒーを一口飲む。
「そうだな。オオクロクマとオオシロクマの毛皮をたまたま手に入って良かったよ。」
カーテンを閉めっぱなしのまま、魔法で盗聴機や監視カメラがないか調べる。
どちらも付いてなかった。
「相変わらずの石橋叩いて渡れですね。それにしても冒険者ギルドの受付嬢や荷物運びの少年は、屑でしたね。」
「俺達の後を付いてきていたからな」
「(どうします?)」
「(付いてくるなら付いてきてもいいが、助けは求めるな、だな。)」
「そうですね」
「だろう。(迷宮について来るなら踏破もしくは脱出出来る力を付けないとな?)」
聞かれたくない話は、念話で話をするジル。
「それも、そうですね。(で、奴はどうします?)」
「(放置………と言いたい処だけど、うざっとい。早めに対処しよう)」
コーヒーを飲みきって缶の中身を濯ぎ、ゴミ箱に捨てた。
浴槽にお湯を溜め初めているとドアのチャイムが鳴った。
ドアに近付きドアスコープでホムラは外を見た。
そこにはカートを引いて来たボーイの姿。
「はい。誰ですか?」
「お食事を届けに来ました。」
部屋の外では、はっきりとボーイが言う。
「「(?。料理?)」」
「(ジル?)」
ジルは顔を横に振り頼んでないとアピール。
そもそもジルもホムラも喫茶店で食べたモーニングでお腹いっぱいなのだ。頼むはずがない。
「頼んでませんけど?」
「えっ?。こちらに届ける様にと頼まれたのですが?」
「じゃ、頼んだ人に渡してください。」
そう言ってホムラはドアから離れた。
「困ります。お客様!。お客様!」
ドアの外で騒ぐボーイにホムラはジルに聞いた。
「ジル。どうします?」
少し考えたジルは、
「………しかたがない。貰おうか?」
「いいのですか?」
何時もと違う答えが帰って来てビックリとしたホムラは、ジルに聞いた。
「(後を追って来た屑だと思う)」
「(どちらの屑ですか?)」
「(ガキの方)」
「あー」
思わず言葉ご出てしまったホムラに笑顔を向けて笑うジル。
「(招き入れてガツンと脳に畳み込もう)」
「(そうですね)」
ジルとホムラはボーイが持ってきた食事を部屋の中に入れた。
これでこのボーイは上から何も言われないだろう。
「失礼します。」
そう言って出ていくボーイを見て銀色の半球の蓋を開けた。
中からは色んな種類のケーキと銀色の円柱に沢山の氷に浸かってある赤ワインが有った。
(異常物質は入ってないか調べろ)
とジルが、分からない様に魔法を使う。
異常なし。ワインは年代物
「折角のケーキです。食べましょう」
と言ってお皿にトングでケーキを取りフォークを付けてジルに渡す。
「ありがとう」
そう言って、フォークで一口サイズに切って食べる。
「うん。まぁまぁだね。ホムラが作るケーキの方が美味しい」
「ありがとうございます」
「ワイン飲みますか?」
「頂こう。」
なんだかんだ言って8個有ったカットケーキを完食と赤ワインを飲みきったジルとホムラ。
「さてと、出て来たらどうなんだ?」
がたりとクローゼットの扉が動いた。
「出て来なさい。」
でも、少年は出て来なかった。………嫌。出て来れなかったが、正しい。
何故ならクローゼットの前には、ケーキを載せて来たカートがある。出口を塞いで出て来いは無理の話だ。
ジルもホムラも気付かない。
出て来ないなら仕方がない。
ジルとホムラは、お湯を貯めた浴槽に行ってお湯を止めてお風呂に入る順番を決めようとしたが、意外と大きい浴槽に「2人で入っても大丈夫じゃないか?。」と話し合い少年はを放置してお風呂に入りに行った。
(ト…トイレに行きたい………)
そんな事を考えている少年。
そんな事は梅雨も知れず2人は、脱衣場に鍵を掛けて装備服を脱いで湯船に入る。
「あぁぁぁぁ」
お酒で暖まるが、ワイン1本じゃ飲んだ気がしない2人は、平気で湯船に入る。普通は酒に酔って風呂に入ると酔いが回ると言うが、それすら感じさせないジルとホムラ。
何だかんだ1時間も長く入っていた2人は、「湯だった」と言いながら何時もの装備服で出て来た。
ジルは白の装備服にホムラは、半袖の装備服だ。
カートお皿にフォークワイングラスを返却しないといけないのでボーイを呼んだ。
ドアのチャイムが鳴りホムラがドアスコープで覗きボーイを入れる。
「すまないが、1つ頼まれてはくれないか?」
ジルが言い、ボーイは頷く。
「実はな、このクローゼットがガタガタ動いてな、ちょっと怖いんだ。一度開けて中を確認しては貰えないだろうか?」
無茶なお願いではなく普通のお願いにボーイは「分かりました」と答えてクローゼットのカートを退かし意を決してクローゼットの扉を開けた。
中には、尿意を我慢している少年が入ってる。
「「誰だこいつ?」」
ジルもホムラも分からない顔をしている。ボーイも呆気に取られていた。
「ト、…トイレ……か、…貸して下さい」
少年は青い顔のままトイレに駆け込む。
その間にジルとホムラは宿泊部屋を変えてもらう様に頼んだ。
宿帳にも記載されてない名前。
不法侵入で入ったのは間違い無いだろう。
ジルとホムラはボーイから社長に連絡が行き、「二度とこんな事が起きないようにします」と伝え、警察が来るまでの間にジルとホムラは部屋を変えて貰った。
「他人が使ったトイレは使用したくない」、「また入ってきたら嫌だ」と言い、VIPが泊まる部屋を紹介して貰った。
ジルとホムラは最初は部屋を変えるだけで言いと言ったが、明きの部屋がVIPの部屋しかなく、内心ビクビクしながら入ったけど、その部屋が眺め最高の部屋だったので「本当に良いのか?」と何度も聞いてしまった。
社長も初めはVIPの部屋に難色示していたが、「明きはこの部屋しかない」と聞き、閉めっぱなしより誰かが使ってくれた方がいいと言うことで社長がOkを出したのだ。
「ジル見てください。ガラス張りのお風呂です。浴槽が先程より大きい!」
はしゃくホムラ。
「ベットもクイーンサイズ」
「別々のベッドで眠りますなら新たにお部屋を用意致しますが?」
「大丈夫です。一緒に寝ますので」
にっこり笑うホムラ。
「ですよね。ジル。」
「ああ、そうだな。一緒に寝た方がいい。」
「分かりました。」とボーイはいい、「何か有りましたらまだ御連絡下さい」と伝えてきたので、「不法侵入してきた少年を徹底的に警察できっちりお灸を据えて貰って下さい。それと内通者がいるかもしれません調べて下さい。」とジルは伝えた。
内通者がいるの言葉にボーイは不快な思いをしたが、そもそもこの顔は癖のある記者でボーイの中でも屑としてしれわたっている。
「かしこまりました。」
ボーイは頭を下げて部屋から出て行った。
見送ったホムラは、施錠とドアロックをしてソファーに座るジルの元に戻ってきた。
「お疲れ様」
「大した仕事では有りませんが、何であんなにも屑に当たるんでしょうか?」
実は、ジルもホムラも着ている装備服やコートで、金持ちも見られている。
龍やドラゴンで作った装備服に迷宮からたまにしか出ないオオクロクマとオオシロクマの毛皮。
着ているもので金持ちか判断をされる。ジルやホムラはどっちとも装備服しか持ってないのだ。
普通の私服が無いのだ。
服だけでお金持ちと見ないで欲しいが、ジルもホムラも迷宮踏破は過去12回程やっている。
ジルもホムラも知られたく無いから勝手に迷宮に入り、踏破して戻ってくる。誰にも言わない。
だから誰も知らない。
ジルもホムラもあまり目立つ事をしたく無いのだ。
王都の問題の受付嬢。
今は地に落ちたと風の噂で聞いてるが、ジルもホムラも何も思わない。
テーブルの上に冒険者ギルドで貰った二条迷宮の地図と攻略本を広げて間違いは無いか、書き損じは無いか調べる。こう言う地道な作業はジルもホムラもかなり好きな方だ。
特に地図が好きなジルは、何時間でも調べる。
ホムラが呆れる程に。だけど、そのお陰で助かっているのもまた事実なので、切りのいい処でお茶の時間を設けるのだ。
「どうですか?」
「うーん。鮭に鮪、ホタテ、蟹の他にいっぱい出て来るけど、めっちゃ寒いて」
顔を上げてホムラに言うと、柱に隠れたり、隠れなかったりしているボーイを見つける
「(ホムラ?!あれは何?)」
ジルが念話で指を指す方にホムラが視線を送り見る。
そこにはボーイがいる。
「(ああ、お茶の為に呼んだのです。自分達でやるって言っても規則ですからと言われちゃって、上にも確認したけど、専属のボーイが付くみたいですよ)」
ニコニコ笑顔で念話で答えるホムラ。
ボーイから見れば見つめ合う2人である。
「紅茶でございます。」
広げた地図をまとめて本の間に挟んでテーブルの端に置き紅茶をもらう。
「あ、ありがとう。」
ぎこちない声で、言うジルを見てホムラがクスクスと笑う。
「(仕方ないだろう?他人の相手何てあんまりしないのだから!)」
「(そうですね。ジルは慣れて来ると話しますが、その前は警戒心バリバリですから)」
「(無いよりマシだろう?)」
「(そうですね。その警戒心で何度助けられた事でしょうか)」
ボーイから見れば視線だけで会話している様に見える。
(す、凄い。視線だけで、会話している)
等々、思っているに違いない。
「ご用意が有りましたら、またお呼び下さい。」
一礼して、部屋から出て行ったボーイを見てジルは、軽くため息を吐いた。
「で、どうです?」
「違いはなかったよ。」
紅茶をテーブルの端に避けて、先程挟んだ地図を引っ張り出す。
「かなり広いエリアで………」
ジルは話を始める。
かなり広いエリアがある。
ドロップする品は各所違い、鮭や鮪、ホタテ、蟹はかなり奥のエリアに有るのだが、中々見つけれない処に有る。
「しかも滑りやすくて、足場も悪い。」
「敵は、魚人だそうだ。」
本に載っていたページをホムラに見せる。
「顔が魚で身体が人。どうなっているんですかね?」
どうやって人の身体と魚の頭がくっついていいるのか不思議に思うホムラだけど、ジルの「迷宮だから」で全てを片付けた。
他の冒険者に聞いたら「深く考えない事」と言われる始末だ。
「話が分かる冒険者で良かったよ。あれが何処かのお偉いさんだったら、このホタテも危なかった。彼らに感謝だわ。で、坊やは、どうして彼らに付きまとったの?話す気になったかしら?」
彼女の前には拷問を受けた1人の少年がいた。
「不法侵入にお客様の許しが無いのに勝手に部屋に入り、何をする予定だったの?」
少年は黙ったまま話さない。
「黙ったら許されと思って無いわよね?」
「………」
「話す気が無いみたいよ。処分して、目障りよ。」
屈強な男達につられられていく少年。
少年は話さなかった訳ではない。
鼻は折られ歯を抜かれて、生爪を剥がされて顔は、腫れ上がり目を簪で突かれて失明をしていた。
少年は、大きなシュレッダーに入れられぐしゃぐしゃになって出て来た。
「これで宜しかったでしょうか■■■」
「すまんな。無理難題を言って」
「宜しいのです。■■■からの依頼は、私達にとっては神からの啓示を受けた事になります。これ程嬉しい事は有りません。」
「そ、そうか。予期に計らえ」
「し、社長?どうでしたか。■■■は何て言っておりましたか?」
「あの2人の冒険者はそのままVIPの部屋にお泊まりして、対応が良かったと宣伝して貰いましょ。」
社長の声に社員一同が、頭を下げて
「「「「了!!」」」」
と集まった従業員全員が言った。