4話
いい依頼が見つからず、僕は今、横道にそれて、持ち物整理の真っ最中だ。
「んーと、残り8000ゼニフと少し・・・」
それから、黒いペンダント、これだけか。
やっぱ、モンスター討伐にあたって、でっかい剣とか盾とかほしいよな。
今の残金だとやっぱり厳しいかな。
っていうか、忘れてたけど家に帰る方法も探さないと。
そんなことを考えていたら、入口の方からこんこんとノックする音が聞こえてきた。
孤児院に来客のようだ。
「どなたかいますか?」
ドアを開けるとそこには、我が学校のアイドル、優奈が立っていた。
「夏雄くん?!どうしてここに?」
「それはこっちのセリフでもあるよ?」
驚いたことに、異世界に来てしまったのは、僕だけではなかったようだ。
「なんだ、どうしたんだい」
少し遅れて孤児院の主も割って入る。
優奈は申し訳なさそうな顔をして尋ねた。
「あいている部屋はありますか?」
主は僕の方を見て答える。
「あいにく、この子に貸した部屋で最後なんだ」
「でしたら、夏雄くんと一緒の部屋でいいです。貸していただけませんか?」
「お嬢ちゃんは知り合いかい?お互いそれでいいなら構わないけど」
きっと僕と同じように寝泊まりする場所がないのだろう。
男女同じ部屋は、いささか問題がありそうだが致し方ない。
「友だちです。僕からもお願いします」
僕と優奈は、同じ部屋を借りる事になった。
部屋に入ると。
「また会うことができるなんて、やっぱり運命だわ」
僕の腕にはぐして微笑む優奈。
「はうっ」
驚嘆の声が漏れる。
そんなことより、今のこの状況だ。
迷子になった僕の前に、知人が現れた。
帰る手がかりをなにか知っているかもしれない。
「ここへはどうやって来たの?」
「歩いている人に寝泊まりできる場所を聞いたらここを教えてくれて」
「そうじゃなくて、今いるこの異世界にはどうやってきたの?」
素っ頓狂な質問だが、素っ頓狂な状況なのだ。
「死んだらこの世界にいたの、多分異世界転生だと思う」
「転生って?」
「死後生まれ変わることよ」
「そのままの姿だけど」
「そういう種類みたい」
「どこからの知識?」
「小説よ」
「僕は死んでないけど」
「いいえ、死んでるわ」
どういうことだかわけがわからず沈黙する。
すると突然。
「前田夏雄くん、私は君の事が大好きよ」
優奈は姿勢をしっかりして僕の顔を見て喋り始める。
「部活動の打ち込みが真剣なところ、放課後一人でのこって練習する姿勢、周りを気にして歩幅を合わせる協調的なところ、筋肉はついてないけどすらっとはかなげな体つきが素敵。私と話すときの緊張してこわばった表情とか、温かい声や丁寧な話し方、一緒にいると落ち着きを感じられるところが大好き。何か打ち込むと、一生懸命になりすぎなところがあったりして、うまくいかないと公園にベンチで缶ジュースを飲む癖とか、男の子ならB型がいいけど、やる時はやる男らしいA型の君が可愛くてたまらないわ。なにより君と私は運の愛称がとてもいいの。だから私は君を殺して、私も死んだわ」
美少女に色々と意味の分からない告白を受けた。
つまり僕は、優奈に殺されて異世界転生し、優奈も自殺でこの世界に転生したのだという。
さかのぼること食事中、優奈がスプーンを落としたとき。
新しいのと交換しようとして、席を離れたときにだ。
毒をもったらしい。
「もう僕を殺さないって約束できる?」
「もちろん約束する、式は一回だけだもの」
「優奈も死なないこと」
「わかってるわ」
案外すぎたことはどうでもよかった。
それよりも今である。
「モンスターを討伐するのに一人だと不安だったんだ、手伝ってほしい」
「もちろん君についていくよ」
なぜそんなに僕の個人情報を知っているの?
とか、付き合いないのにどうしてそこまで?
とか、聞きたいことがたくさんあるけど、聞きづらいので聞かないことにした。
こうしてパーティが一人ふえたのだった。




