3話
チラシの中の最も簡単な討伐依頼を達成するために、とある洞窟に来ている。
そんなに暗くはなく、人の歩く道がしっかりできた場所だ。
多少じめじめしていて臭い。
「ふっ、ていっ」
ふわふわとした塊がポワポワと浮かんでいる。
目や口が付いていてなんかきもい。
みるかぎり、ゲームで言うところのスライム的なモンスターなのだろう。
こちらに興味関心はなく、相手側から襲ってくることはない。
この塊が洞窟に大量繁殖してこまっているらしい。
僕が引き受けた依頼はこのモンスターの討伐だ。
ノルマは100匹。
こんな簡単そうな依頼なら他の人が片づけていてもおかしくないはずなのに、おかしいな。
このモンスター殴ると分散して跡形もなく消える。
軽い打撃だと分散せず噛みついてくる、痛くもかゆくもないが。
コツはいきよい良くだ。
倒すとポンッと気持ちのいい音が鳴る。
最初のうちは、なんか抵抗あったのだが、慣れてくるとそうでもない。
単純な肉体労働で、作業のように進めて行く。
1時間経過。
「よーし、おわったぁ」
後は地図に書いてあるギルドにいき報告するだけ。
給料はなんと日払いで1万ゼニフ。
洞窟はほぼ街の中だったので、ギルドにはすぐ着いた。
ギルドはにぎやかで、冒険者のような身なりをした人がほとんどだ。
内装は、相席居酒屋のような飲食店と一緒になっていて、映画に出てきそうな趣である。
「まずい、ニット姿はさすがに浮く。近いうちにこっちの服買わないとな」
僕は受付にチラシを見せ、モンスターを討伐したことを伝える。
「初めての方ですね、こちらで簡単な必要書類の記入をお願いします」
えっと、名前、前田夏雄。
血液型、A型。
星座、やぎ座・・・・。
僕は書けるところだけ記入して、受付のおねえさんに渡す。
「それでは、カビカビ討伐お疲れ様でした。詳細を調べるので、こちらの水晶に手を添えてください」
手を近づけると水晶はまばゆく光だし、中に文字が浮かび上がる。
「確認いたしました。これで、依頼のお手続きは完了です。お受け取りください」
初給料!
僕はお金を受け取り、ギルド付属の飲食店で少し遅めの昼食を取ることにした。
A,B,Cと定食があり、A定食の苔イノシシ煮込みハンバーグにしてみた。
席は相席できるのだが、一人の冒険者らしいおじさんが同じ席に座り、ココの実ビールを注文し話しかけてきた。
「少年、装備を見る限り駆け出しかい?」
「まあ、そんなところです」
「どうだい、この稼業大変だろ」
「んー、まあ、そうですね。給料高いんですけどね」
「そうだろう、勇者様くらい強ければいいんだけどな」
「勇者様って?」
「聞きたいかい?勇者様の言い伝え」
いるんだな勇者。ゲーム好きの僕からしてみたら興味をそそられる。
「いいんですか?ぜひ聞きたいです」
「いいだろう、話してやろう。遠く昔の話だ・・・・・。たくさんの魔物は人の村を襲い苦しめ、多くの死人を出した。勇者様は恐ろしい魔物の王から民を守るため、死力を尽くして戦い、そして、長い戦いの末勇者は魔王に深手をおわせ、民に平和が戻ったのだという、今もその子孫がどっかで活躍してるんだとさ。こうして今話しているのも、うまいビールが飲めるのも勇者様のおかげってわけだ」
おじさんはビールをたいらげて去って行った。
僕は小中高と右ならえ式に学生生活を送り、可もなく不可もなく生きてきた。
刺激の強い話だった。
勇者?魔王?胸が躍るような世界観だ。
こんな僕にも、剣や魔法が使えて、大活躍が出来たりする時が来るのだろうか。
定食を食べ、僕は孤児院に戻ることにした。
今は簡単な依頼だけしかやらないけど、ゆくゆくは強いモンスターとの熱い戦いを繰り広げてみたいものだ。
このファンタジー異世界の事はまだ何もわかっていないが、ゲームだと今の段階では、とりあえずレベル上げと装備の購入だと思う。
初心者でも安全なもっと高めの依頼をこなして、ギルドにいた人たちみたいに、かっこいい装備を購入することをとりあえずの目標にしたい。
だが、チラシを探してみるが、そんなうまい話があるわけもなく、高額で簡単な依頼は見つからなかった、僕はつかれていたのでその日は眠りにつくことにした。
淡い期待を秘め前田夏雄の冒険は始まったばかりだ。




