2話
僕は、目が覚めると、遺跡のような自然が融合したような街の路地に腰を下ろしていた。
たいがいの建物は自然の生命力でひびが入り、不気味な雰囲気があるはずなのだが、人がごった返しているのでそうでもないといった感じだ。
自然の隙間からさす光がまぶしい。
少し虫が目立つ。
「さっきまで家で昼食を取っていたはずなんだけど。ここはいったいどこだ?」
今いる場所、どう見ても日本じゃない。
さらに驚くことに、すれ違う人の髪色が黒だけじゃなく、赤色、黄色、青色と他にもいろんな色の髪色でとてもカラフルなのだ。
初めは、コスプレ会でもやっているのかな、さすがにかつらだよな、と思っていたのだが、すれ違う近場の人を観察してみるに、どうやら地毛らしい。
変わった人だと剣や杖を持っている人とか、鎧や民族衣装を着ている人までいる。
ちょくちょく通る乗り物が、見たことのないような生き物の引く馬車だというのも気になるところだ。
まるでマンガやゲームの世界に入り込んでしまったかのような風景である。
さてどうしよう、持ち物は、上着とポケットに入っていた残高2万円の財布。
知らない地理に、変わった人達、道を聞くにも話しかけずらい。
僕はひとまず、近くの店で情報収集を試みた。
「あのー、少しお聞きしたいことがあるんですけど、いいですか?」
「お客様なら構わないよ」
よかった、取り合ってもらえた。
「そこのそれ、黒いペンダントください」
「まいど、知ってることなら答えるよ」
「ここってどこだかわかります?」
「なんだ、よそから来たのか、ようこそ始まりの街ナチユシティへ」
聞いたこともない街だ。
やはり、ここがどこだか見当がつかない。
「この辺り、近くに駅とかあったりします?タクシー乗り場とかでもいいんですけど」
「駅?タクシー?っていうのはわからないが、竜車の乗り場なら、ここを出て道なりに行ってすぐにあるよ」
うすうす気づいてはいたが、交通機関がないようだ。
どうやら簡単には帰れそうにないみたいだ。
竜?今竜っていったか?
「そうですか、情報ありがとうございます。では」
「ちょっと待った、お代は」
「はい」
僕は財布から一万円札を取り出したが、使う事が出来なかった。
東に向かって進んだ大通りで。
「あー、さむ。冷えてきたな。」
あの店主一文無しって知っても、全く譲らないから、物々交換することになったのだが、この黒いペンダントと上着、本当に対等か?
ちなみにここでは、円はゼニフというらしい。
ただで泊まれるところがないか聞いてみると、孤児院を教えてくれたので、そこに向かってる途中だ。
辺りは人が減り静かになってきた。
客観的に自分の置かれている状況を振り返ってみる。
マンガやゲームなどの娯楽に浸ってきた僕だからか、少しずつ現実味をおびて、わかってきたのだけれど、ここは日本でもなく、外国でもなく、ファンタジー異世界だ。
なぜこんなことになったのか、理由はさっぱりだが、よく知っている物語の主人公はこういった状況から、冒険を始める。
フィクションにしかないと思っていたのだが、僕がその主人公として異世界に来てしまうとは、驚愕している。
異世界ファンタジーといったら、ど派手な技を繰り広げていくバトルアクションである。
さっきの鎧や剣を見る限り魔物とかもいるのかもしれないな。
と、少し怖くはあるがわくわくしてきた。
そうこう考えながら歩いているうちに、孤児院へ到着し僕はドアをノックする。
「どうしたんだい?こんな夜遅くに」
「寝泊まりするところがないんです。部屋を貸していただけませんか?」
「部屋か、一部屋空いてるし、かまわないよ。どこから来たんだい?」
「綺麗な湖畔がある小さな島国から来ました。日本ってわかります?」
「知らないな、どこだいそれは。まあいいか、えっと名前は?」
「前田夏雄って言います」
「夏雄君、どうぞあがって」
僕は小部屋を紹介された。ベットはないけど絨毯がひいてある。野宿と比べたら十分すぎるほど豪勢だ。
お金を持っていないと打ち明けてみたら、チラシをたくさんくれた。
チラシは一言で言うとファンタジーといった感じだ。
冒険者募集だったり、魔法使える人募集だったり、薬草の採取なんてものまであった。
僕の予想は的中する。
「ここはまがいもなく異世界ファンタジーの世界だ!」
お腹が空いてどうしようにもないが、その日は眠りについた。




