12話
目を開くと僕は孤児院にいた。
「おはよう、夏雄くん。なかなか目覚めないから心配したわ」
丸1日僕は寝ていたようだ。
優奈が気を失った僕を見つけ出し、助けを呼んでくれたらしい。
僕は何故気を失ったのか。
対価の技、あれを使った直後に気を失った。持病はないしな、技の代償か?
あやふやの中、この世界に来て初めて出来たファンタジーを思い返し少しにやける。
「優奈、依頼に行こう。準備して」
「もう夕方よ、遅くなると強いモンスターが出るかもしれない。明日からの方がいいわ」
残念だが、優奈の言うとおりだ。
「それもそうだな。そうだ、強いモンスターといえば・・・」
いい機会だったので、僕は優奈に草原に出る、とんでもなく強い熊の話や、タイムトラベルの話をした。
日本にいた時の娯楽のおかげというのもあるのだと思うが、優奈は飲み込みが早く、わかりずらい状況も難なく伝わった。
「適材適所。その熊、私たちが相手にする必要はないわ、もっと強い他の冒険者にまかせましょ」
「ギルドに報告してみるか。だけど、証拠がない。もし信用してもらえなかったら、その時は僕たちでなんとかしよう。草原は初級者が多く使用する。ほうってはおけない」
優奈は少し悩み一息つき微笑む。
「しょうがないわね、おひとよし・・・・」
僕らはギルドに報告したが、案の定信じてもらえなかった。
一応依頼の掲示板には注意喚起を促しておき、僕らだけで熊を討伐することにする。
その日は帰って眠ることにしたのだが。
「優奈、起きてる?」
「起きてるよ。眠れないの?」
さっきまで寝ていたというのもあるが、熊の事でよけい眠れなかった。
「明日から熊討伐に向けてレベル上げだ頑張ろう」
「うん、そうね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
目を閉じるが意識がはっきりとしている。
当分無理だな。
「・・・優奈は小説とか読むんだっけ?」
「読むわ」
「僕は、文字苦手だな。どこが面白いの?」
「見たことのない世界観に浸るのは楽しいものよ」
「そうかな、勉強みたい」
「勉強は大切だけど全然違うよ。私、楽しみ方があるの」
「どんな?なっ何?!」
優奈は僕の手を握る。
距離が近いっ!
呼吸が荒くなり、優奈に聞こえてないか少し心配になる。
「想像してみて、風当たりのいいベランダなんかがいいわ、ジュースなんか用意して、読むものは紙の冊子、一枚一枚ページをめくる感覚を指で味わいながら、読みたいものを読むの、どう?読みたくならない?」
優奈の手は細くてやわらかかった、美少女最高!
「なるかな・・・」
アニメやゲームを娯楽にしていた僕だが、読んだら読んだで面白いものなのだろうか。近い娯楽には思えないが、少し興味が湧いた。
「夏雄くんは、モンスター怖くないの?」
「ゲームなんかと全然違うから怖いよ。優奈は?」
「夏雄くんと一緒なら怖くないよ。倒す事できないけどね。」
ゲームでは、画面の敵をボタンで一押しだが、リアルでは、動物園の檻の中に入り込んでしまったような感覚だ。
小さいころよくごっこ遊びをよくしたが、予想とははるかに違い驚いたものだ。
冒険者は楽じゃない。
一時間もすると優奈は寝てしまった。
寝顔は天使のようだ。
明日からまた、戦いが始まる。
レベルは全然上がらないが気を取り直して行きたいと思う。




