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6話 宰相とドワーフの鍛冶師

「宰相よ。本当にこれで良かったのか。私から見ればそのまま国に取り込んで、国の為に色々な物を開発させた方が良いと思うが?」



「国王様、普通の者ならばそれでも宜しいでしょう。むしろ感謝して国に貢献してくれるでしょう。ですが、あのような特殊な方達は権力や名誉などでは決してなびきません。それは過去の歴史からでも明らかでしょう」



「帝国の話か?あの時は状況が悪かったのだ。他の国が帝国を恐れていたからこそ、あんな状態になったのだ。それに話とは大抵大袈裟に伝わるものよ。だがガストン殿の弟子は違うであろう?国の為に尽くすのは当然だし、国王を敬うのも当然だ」



「仮に国民全員がそうなら、犯罪をおかす者等現れませんよ。それにガストン殿に執拗に迫っていた者達の末路をお忘れになったのですか?それに他の国も黙ってませんよ?」



「忘れる訳が無かろう。あの事件でどれだけの貴族が取り潰しにあったか。どれだけの被害があったか。その後掃除で私がどれだけ苦労したと思っておる。しかし、まああの時亡命しなかっただけましか」



「そこまで分かっているなら結論は決まっているはずです。たった一人の為に国を滅ぼす危険を犯す必要はありません。それにガストン殿も特には国や貴族を蔑ろにもしていませんし。むしろ多大に貢献してくれています。放置していても、勝手に国の為に働いてくれるのですから何が不満なのですか?」



「あんな物を見せられてはのう」



国王の目線の先にはガストン殿とその弟子が開発した魔道車があった。



確かに凄い。まさに常識を覆すような画期的な魔道車だ。



だがしかし、だからこそ恐ろしいのだ。もしも彼らが他の国に行く危険性が。その自由奔放さが。



きっとこの国王は更に自分好みの魔道車を作らせたいのだろう。そしてそれを軍事利用し、さらに国の力を高めたいのだろう。



しかし、それらは自らの首を締める事にもなりかねない。かつての帝国のように。



「元来魔道具職人達は好きな物を作れればそれで良いと言う者が大半です。なので自由に開発させるのが何よりの褒美になります。さすれば更に素晴らしい作品が献上されるでしょう」



「弟子だけでも国で抱えておきたかったが。まあ宰相の言う通りかも知れぬな。貴族達にはあの者達には手を出すな。お家取り潰しもあり得ると伝えよ。余計なちょっかいを出されて此方に飛び火されても敵わん。ただ周辺に他国のスパイや工作員が居ないかはしっかりと調べておくようにな」



「かしこまりました」








全く。


この王様は決して無能では無い。だがしかし、自らの欲望には忠実過ぎる。甘やかされて育った弊害でもある。



さっきのアホみたいなやり取りも、分かってはいるけど駄々をこねたかっただけなのだ。



今回は取り敢えずなんとかなった。しかし。



私は例の魔道車を見つめる。



あの魔道車は素晴らしい。そして性能は大分落ちるが、量産化された魔道車も本当に素晴らしい。



ただあれほどの魔道車だ。何が何でも欲しいと思う者は居るだろう。それほどの魅力がある。




そう。素晴らし過ぎるのだ。



人を惑わす程に。




この新たな魔道車たちが、新たな争いの火種になるかもしれない。





ーーーーーーーーーーーーーー








「おやっさん、大分前に作ってた謎のパーツってガストン様が発注したパーツなんだろ?それってあの魔道車のパーツなんじゃないですか?」



「俺が知るか。一体どんだけの量の発注があったと思ってるんだ。しかも半分以上は精度が悪いって突き返して来たんだぞ?どのパーツを何に使ったかなんて俺が知るかよ。人様の情報を詮索するな」



「おやっさん、そんなに怒らなくても良いじゃないですか。ただ興味本意で聞いただけなんですから。良いなー。俺もいつかあんな凄い作品に貢献出来るような鍛冶師になりたいぜ」



「そんな口を動かしてる暇があるなら手を動かせ」



「分かってますよ。じゃあこの納品分届けに行ってきます」



あの日、魔道車作りに貢献したってことで乗せて貰った。



衝撃的だった。150年も生きてきて、これ以上ない程の衝撃だった。



きっと酒の入ったグラスを持っていても取り落としていただろう。そう。何よりも酒が好きなこの俺が。それほどまでの衝撃だった。



この魔道車にゴーレムコアを使用しているのは知っていた。何しろ俺が仕入れてきたからな。



魔道車なんかに貴重なゴーレムコアを使うなんて信じられなかった。



だが違った。



絶対に必要だったのだ。あらゆる機構がゴーレムコアに接続され、状況に合わせてゴーレムコアが判断する。まさかこんな使い方をするとは思わなかった。



魔道車に乗り込む時は乗りやすいように車体が沈んでいて、起動させるとゆっくりと車体が上がる。



暗くなると自動で光を照らし、暑い時には涼しい風を出すことも出来る。



走行スピードも恐ろしかった。そしてその安定感。全てが信じられなかった。



俺は夢でも見ていたんじゃないかと錯覚する程に。



あの光景が忘れられない。



毎晩夢に出てくるくらいには。



もし、もしも、もしも叶うなら、もう一度、あれほどの作品に関わられるのなら、移住しよう。



俺はそう心の中で決意した。



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