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15話 ガストンの過去とリコメット

「宰相様。此方が報告書になります」



「ご苦労だった。まさかあんな場所に工房を作るとはの。それに規模も信じられない規模だ。それにこれが事実とは到底思えんな。しかし見た者の証言はみな同じか」



口答でも聞いたが信じられない仕組みだ。魔力感知の刻印で個人を識別して、扉が自動で開くと。



勿論欠点はある。扉が開いた時に一緒に入ればよい。しかし、扉の前には必ず警備員がいる。荷物に紛れて入れるのも格納庫と呼ばれている所までだ。



それに誰かを脅して協力させたとしても、個人で入れる場所にも制限がある。



それに誰かに秘密裏に接触したくても、工房で働く者は基本的に外に出ないで生活している。



買収したくても、大金があっても手に入らない便利な生活をしているからなびかない。



人を送り込みたくても、少しでも怪しい者は弾かれるし、基本近しい者同士で紹介している。



怪しい者を紹介した人は直ぐにクビになる。だから皆こんな贅沢な暮らしを捨てたくないから身内に対しても厳しい。



取引しているノーラン商会も今は人を新しく雇ってない。それに出来たばかりの商会のため諜報員もいない。



八方塞がりだな。しかし逆に他国にはもっと厳しいとも言える。



それに採掘されていると思われる鉱石達。一体どこから?いや、恐らく工房の奥の何処かだろう。



後は販売はして居ないが、金やゴーレムコア等の貴重な素材。恐らく何処かにダンジョンの入り口でもあるのだろう。



この国ではもう殆ど金は取れない。ゴーレムが出るダンジョンもこの国にはない。



それにこのダクターと言う少年。最初はガストン殿の弟子としか思って無かったが、この施設を作ったのもこの少年だと言うし、魔道車の設計もこの少年が書いているらしい。



それにこのやり取りからして頭も回るようだ。



「情報屋からの情報は?」



「此方も全く」



此方も不可解じゃ。この情報屋も10年以上前にゴタゴタがあったようだが、トップが変わった事でかなりの団結力になり、あらゆる所にこの組織の目が入って居ると言われている。



それなのに、この辺境の村の情報は何一つ無い。あからさまに情報が無いのはおかしい。



だが分からない事は考えても仕方ない。



「ダクター殿に秘密裏に金とゴーレムコアの事で相談したいと伝えて貰えぬか?」



「よろしいので?」



「正面から行くしかなかろう」






ーーーーーーーーーーーー




「この報告書は本当なのか?」



「はい。多くの者が見ております」



馬車より早く、それでいて揺れも小さく、魔力の使用量も極端に小さい。更には鉄の外装で頑丈。そんな魔道車があんな田舎の国で開発されたとか何かの冗談か。



「これを信じろと?帝国でもこんな物は作れんぞ?それとも何か?帝国が魔道具開発で田舎の国に遅れているとでも?」



「それが、この魔道車を開発したのはあのガストン殿らしいので」



「あの爺か?散々帝国の邪魔ばかりしたあの忌々しいくそ爺め」



昔放浪の魔道具職人ガストンと言う職人が居た。各地を巡り、様々な技術を習得していた。



それに目を着けたのが先代の帝国皇帝。国に貢献する事を条件に自由な研究と莫大な予算を与え、様々な魔道具を開発させた。



そして帝国の魔道具開発の技術は発展していき、国は豊かになった。



そして次の皇帝が即位してから状況が変わった。皇帝は魔道具の技術を戦争に転用し、次々に戦争を起こし、周辺国を武力により征服していった。



そして魔道具開発の責任者のガストンを監禁し、軍事利用出来る魔道具を作らせようとした。



しかしそれを予期していたガストンは他国へ亡命した。



それからガストンは自身の魔道具開発の技術を周辺国にばらまいた。



それと同時に帝国周辺の国では対帝国連合が結成され、技術力でも並ばれた帝国は敗戦を続けた。



それから帝国は各国との停戦協定を結び戦争は終結した。



しかし帝国の国土は広く、いまだに強大な力を持っているのも事実だった。



「あの爺が逃げ出さなければ、今頃帝国は大陸最大の国家になっていたと言うのに」



「その話は散々聞きました。ですからあのガストン殿なら可能と思われます」



「あの疫病神はいつまで生きているんだ」



「ハーフエルフはかなり長生きですが、最近は体力も衰え引退したと聞いていたのですが」



「あの爺の話はもうよい。して、あれは順調か?」



「はい。小飼の商人達を使い各国に商品を輸出して金貨を集めさせております。今の所問題はありません」



「それならよい」





ーーーーーーーーーーーーー



「お父様。どうかもう一度あの魔道車に乗せてください」



「リコメット、いくら侯爵家とは言っても国王様の魔道車にそう何度も乗せる事は出来ないんだよ」



「そんな事はありませんわ。お父様なら必ず出来ますわ」



全く。うちの娘は困ったものだよ。



ローグランド侯爵家の三女が魔道具好きとの噂は有名になってしまった。



元々は読書好きな大人しい娘で見た目も美しく、髪は妻の赤い髪と、私の金の髪を合わせたような透き通るようなピンクブロンドで、透明感のある白い肌も相まって、小さい頃から注目の的だった。



それが8歳の時に受けた祝福で変わってしまった。



リコメットは美の神からの加護を与えられていた。そして非常に珍しい付与魔法の才能があった。



加護の話は何処にも漏れないように手を打った。しかし、付与魔法は隠してもいつか分かるだろう。



何しろリコメットは付与魔法の練習をし始めたのだ。だが出来るだけ隠すようにさせている。



そこから魔道具に興味を持ち始め、知識だけなら既に大人顔負けである。



かろうじて自身で作らないのは幸いであるが。



「分かったよ。とにかく話だけでもしておくよ」



それから国王様に謁見して、娘の事を話してみた。



すると違う方向から話が進んだ。どうやら最近この国の金貨が少なくなっているとの事。それを一時的にも解消するために協力して欲しいと。



そこで役にたったのが先代が購入したヒヒイロカネ鉱石だ。私は鉱石など興味がないし、熱に強い金属と言ってもそれほど使い道もない。



その販売で集めた金貨を国が保管し、侯爵家には金盤での支払いとなった。


それと侯爵家の魔道車の優先購入と、娘には特別に国王の魔道車を自由に見学する権利と、ガストン殿とその弟子との接触を許可された。



恐らくローグランド侯爵家の娘と親しくなって欲しいのだろう。



娘には黙っていたが、どうやら上手く行ったようだ。どうやら金塊との取引になったとか。



それから宰相が開発者との交渉に赴く時に、私と娘も一緒に同行する事になった。



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