1-5 相棒
「...ってなわけで!俺は橘虎徹!一応苺の相棒ってことになってる、よろしく!」
「ああ、僕は幸翔。これからここでお世話になると思う、よろしく。」
なるほど。彼がマミの言う質量攻撃を得意とする相棒か...ぜひ見てみたいものだ。
「興味津々って顔してんな、大方マミから聞いただろうが俺の魔法は『鋼鉄魔法』。魔力の限り鉄を生み出し操るんだ、こんな感じでな。『流れる鉄』。」
キンッ、と澄んだ音が虎徹の右腕に嵌まる腕時計から鳴り響き、たちまち溶けたような鉄が
左手から生成される。ぐちゃぐちゃと蠢いたそれは、虎徹の意志に呼応して姿を変え一振りのナイフへと成った。
「どうよ?」
「...すごいな。それに汎用性も高いだろ、これは。」
虎徹が自慢げになるのもわかる、これを大量に出せて、近距離なら自分で、遠距離なら苺の念動魔法で打ち出すとか...はっきり言って、戦力だけなら軍隊にも匹敵するぞ?
「ま、俺はどっかのアホ娘とは違って一人でも戦力になるしなー。魔力量も俺らの中じゃトップクラスだぜ?流石に先輩方に勝てねえけど...」
「おい、それは我のことか?数学23点にアホとは言われたくないな。」
「んだと?お前だって現文自慢げに見せてきやがったくせに俺に負けてやんの〜。」
「よし、わかったから一旦落ち着いてくれない?」
仲悪いんだろうかこの人ら。これでよくコンビやってるね、組ませた人も大概だけど。
「「コイツが悪い!!!」ぃんだ!!」
訂正、やっぱ仲良いね君ら。ここまで綺麗にハモってお互いを指しあうことってあるんだ。
「....今日という今日は許さん、決着をつけてやる。」
「は?お前単体性能じゃ俺に負けてんのもわかんねぇのか?」
「ふっ、悪魔に勝った数は我の方が多いが?」
「カッチーン。いいだろう、俺の獲物よくもハイエナしやがって。ボコしてやr」
「やめて、ほんとやめて。確実に僕が巻き込まれる!」
魔法が使える者同士の喧嘩とか洒落にならない、絶対。ろくな自衛能力も持たない僕が流れ弾で死ぬ未来しか見えない。
「ん?つったって幸翔も魔法は使えるだろ?基礎の防御魔法さえ使えばたいした怪我しねぇだろうし。」
「僕は魔法は使えないよ?そもそもここで僕が何をするべきなのかもわからないし。」
だって体を貸してくれとしか言われてないし。
「な....おいおい、じゃあ戦力にはならないのか...?」
「僕は非戦闘員だよ。まあ、やれるだけ努力はしてみるけど、君たちに釣り合うほどの力は持ってない。ごめん。」
「....いや、謝ることではない、狭量な虎徹が悪い。」
「なんっ...」
あーあ、また始まった...
「喧嘩はそこまでだよ、二人とも。」
またこの妖精が僕の体からすり抜けてきた、止めてくれるのはありがたいけど少々遅い気がする。
「マミ?お前が仲裁してくるなんて...」
「厄介なことに、悪魔共がこちらに攻め込んで来たようだ。人員が手薄な今、早いところ迎え討った方がいいね。」
「「「!?」」」
もしかしなくても...まずいのか?
「...いくぞ苺。マミ、どこから来る?」
「ご丁寧に正面からだよ。敵影は一体、かなり自信がありそうだ。」
「一体か...気張っていくか。」
「虎徹に言われるまでも無い。我が力で終焉へと導いてやろう...」
「慢心は禁物だよ、イチゴ。」
「わ、わかっている!」
「ならいいんだ。コウカ、体の主導権をこちらに戻してもらうよ。」
「...ああ。」
そう僕が返事した途端、しゅるんという音とともに僕は意識だけの存在に戻り、マミの肉体に入り込む。
「さて、迎撃と行こうか。」
「おう。」「ふっ。」
その言葉と同時に、3人とその中の僕は外へと向かった。