1−3 依代
今、僕はこの生き物と入れ替わって...いや、取り込まれたかのようになっていた。
体の自由も効かず、ただ五感だけが伝わってくる。
何がどうなってるんだ...?
「ん?ああ、これは僕の魂を君の体の中に割り込ませてそこから魂を転写して、その魂に合う形に体を作り直したのさ。肉体は魂のデータに保存され続けているからね。この方法は僕の魔力が君の魂に少し取り込まれてしまうけど、まあ誤差の範囲さ....難しかったかな?」
何を言ってるかさっぱり....それにしても思考が読み取られるのか。
「流石に強い思考までしかわからないけれどね。えっちな妄想とかしてもボキには伝わらないから安心してくれ。」
….しませんけど?...しないけどとりあえず言っておく。ありがとう。
「因みに、逆もまた然りだ。ただ、チミの五感は伝えようと意識しない限りはわからないけどね。元の体にも戻れるよ。」
原理はわからないが、さすが妖精と名乗るだけのことはあるな...
「それじゃあ、ここに居続けるのもあれだし、案内するよ。」
…どこに?
「我らが拠点...『ホーム』だよ。それっ!」
そう言うが早いか、こいつは小さな狸の顔のようなものを取り出して見せた。
なんだこれは。だんだんこんなのに慣れている自分がいる。
「ボキ専用のアシストユニット、『ミニタヌ』。ちょっと待ってて...」
…何をするのだろうか。...これに乗って飛ぶ?いや、それはないか...
「ミニタヌ、『扉』展開開始。目的地はホーム。」
『了解...展開完了シマシタ。』
合成音声が流れると見る見るうちにミニタヌの口が広がり、人一人が通れるくらいに伸びた。その奥にはやけにSFチックな空間が広がっている。これはつまり...
「だいたい君の考えてる通りのものだよ。さて、それじゃ帰還しよう。」
そういうと、こいつはゲートを潜り、辺りをキョロキョロと見回し始めた。
「もう戻ってるはずなんだけどなぁ...と、いたいた。おーい、イチゴー。」
カツカツという音と共に遠くに見えていた少女が駆け寄ってくる。
「なんだ、マミか。我を呼びつけるとは何事だ?」
こいつの名前はマミか。お互い名乗っていなかった事実に今更気づく。
というか...我?
「今回、新しい人材を迎え入れることにしてね。と言っても魔法戦士じゃないんだが...」
何を間違ったら僕の扱いが人材になるんだろうか。一度問いただした方がいいのか?
「ほう、それでその人材はどこに?」
ここですが。
「ああ。紹介するよ。...ええと、名前なんだっけ...?」
「?誰に話しかけている?」
あ、僕の名前か。雪落幸翔だ。改めてよろしく。
「これからボキ達の仲間...もとい、ボキの入れ物になってくれる、雪落幸翔くんだ。」
言い方が...とか思ってるうちに体の感覚が元に戻っていくのを感じる。
視界が塞がれたような感覚を味わい、目を開けると体ももとに戻っていた。
「マミが別の男になったぁ?!何が?!」
うん、何があったか知りたいのは僕もなんです。はい。
「あっ...えっとその...よろしく?」
「お、おう...」
何この会話。