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三話

「ハァ、全くどこ行ってタ!心配したじゃないか!」

 お姉さんに森の外に出してもらい、家に帰ると珍しく声を大きくしてジークが怒っていた。

基本ジークは興味無さそうにしているから新鮮だった。

「何を希少な動物を見るような目で見やがっテ!こっちは本の中にいるせいであちこちに動き回ることが出来ないんダ。急に走られると……」

 カンカンに怒っているジークにごめん、ごめんと言うしかなかったが、お姉さんに出会って練習にがんばろうという気になって、少し嬉しくなっていた僕は、少し口角が上がってしまい、それを見てさらにジークが叱ると言うループができてしまった。


「マァ無事に戻ってきてくれたのならイイ。それで、どこほっつき回ってたんダヨ。たしかに俺も少し……言いすぎたと言うカ……なんと言ウカ...」

 ひとしきり怒ってジークは疲れたのかそんなことを言い出した。

 僕は、自分が逃げた理由――自分が天才ではないことを自覚しつつもコンプレックスであること――や、逃げた先はジークと出会った思い出の森であること。そして、そこでお姉さんと出会ったことを話した。


「ほぉん、俺のことを良い師匠と言っていたノカ!なかなか見どころのある奴のようダナ」

「魔導学校の生徒のようだし、多分すごい人だよ!」

「そうダナ」


 ひとしきり会話をしたところで僕は切り出した。

「……でね。もう一度魔法を教えて欲しい……です!もう逃げない!魔導学校に行くんだ!」

 すると、ジークはさも当たり前のことのように

「何、まだルティーは魔導学校に行ってないダロ?まだまだ契約期間中ダ。明日からも変わらずビシバシ行くからナ」

と言ってくれた。それだけで幸せになれた。


 次の朝から昼まては座学――魔法の発見から現代までの歴史についての総復習をしてくれた。

 今までの僕はイヤイヤしていたせいであまり内容が入っておらず、ほとんど忘れていたけど、分からないところが出てくる度に、ジークは補足してくれたりと親切に教えてくれた。


 昼から夕方までは、僕の逃げ出した原因である、基礎の基礎の魔法を出し続ける練習だった。

 この日は魔法一つ一つに集中して魔法を使い、ジークにどうだったかを聞いていた。だからかどうかは知らないけど、少しだけ魔法の出が良くなった気がする。寝起きのガラガラの喉よりも水を飲んだ後の方が声が出やすいみたいな。ジークも

「ルティーは努力を続けることで華開くタイプダナ。だから途中で諦めてはいけナイ。このまま続ければ魔導学校なんて余裕ダ」

と言ってくれた。ジークに褒められたことなんてそうそうないからすごく恥ずかしくなった。


「ナァ、どうしてルティーはそんなにフィーエンって奴に会いたいんだ?」

 練習が一段落ついたときにジークが聞いてきた。

「それは……実は僕、ずっとここにいたわけじゃなくてさ。前に住んでた町があったんだ。そこで、暮らしてたんだけど魔物に襲われちゃってね……町が壊滅したんだ。その魔物にあわや食われるって時にそのフィーエンさんがやってきて助けてくれたんだ!そこからもう憧れで……その時は僕もまだ小さくて、恐怖でありがとうって言えなかった。だから、会ってありがとうって言いたいな!って」

「ホォ……なるほど……ナ。命の恩人ってわけカ……」

「そうそう、フィーエンさんは覚えてないかもだけど、僕がお礼を言いたくて……あと単純に憧れ!」

 ジークはマァ、頑張れよと言ってくれた。その後またすぐに練習を再開した。


 夕方からはお姉さんに会いに行こうとして準備していると、ジークもついていきたいと言うので一緒に会いに行った。


「お姉さん、こんばんは!」

「ん。こんばんは。随分と元気そうで何よりよ。昨日は泣きそう……というか泣いてたんじゃないかしら?」

「い、いや!そんな訳ないじゃん。確かに泣きそうではあったけど泣いては……ないかな?」

「そうだったかしら?」

 相変わらずいたずらっ子の印象を持たせるお姉さんと挨拶を交わす。


「で!そんなことより、こっちが僕の師匠のジーク!今日、会いたいって言ったら一緒に着いてきたんだ」

「ん?師匠?一体どこに……」

「ヨォ、俺がジークだ。よろしくナ」

 ジークが急に本からモワモワっと出てきてお姉さんはびっくりしている。突然本からモワモワっとなんかよく分からない霧が出てきたらそりゃビックリするよね。僕が慣れてるから何も考えずに出しちゃった。


「これ……いやぁ、違うこの方が師匠なの?てっきり人間かと思っていたわ。魔導学校には座学があることなんかや、魔法の安定感の話とか……悪魔なのによく知っているわね」

「イヤ、色々とあってナ。まぁどっちでもいいじゃないカ。俺のことをいい師匠だと言ってくれたようで少し会いたかったんだヨ」

 お姉さんは最初こそ驚いていたけど、すぐに慣れていった。

 曰く魔導学校には様々な悪魔が居るから割とすぐに慣れる……というか慣れないとしんどいらしい。急にわって言われるのとかまじで悪魔でしょ……悪魔か……


 お姉さんがジークに慣れてからは早かった。お姉さんが学校で疑問に思っていることをジークに話して、ジークがそれに返すというようなことをしていたのだけど、何を言ってるのかさっぱり分からなかった。お姉さんは

「まぁ、まだ魔導学校に来てないんだし、別に分からなくてもイイんじゃない?それより、ジークさんって凄いわね。私も弟子にして欲しいくらい!」

とか言いだした。僕はよく分からなかったけどその場で

「ダメ!ジークは僕の師匠!!」

と大きな声を出してしまった。その後はジークに、取られたくなかったんカ?取られたくなかったんカ?俺のこと好きだナァ、といじられるハメになった。

 そして相変わらずお姉さんは悪戯っぽく笑っていた。



 また二人で話を再開し始めた。

 僕は魔導学校ではこんなに難しい内容をするのか、と聞いてみたかったので、話が終わったなという雰囲気を感じた時に聞いてみたところYESと返されて驚いた。その時ジークは

「ナ?座学しといて良かったロ?」

と言い出したが、確かにやっといて良かったと思った。


 ちなみにジークには何故かイラッときたので黙秘という返事をしておいた。

 ジークはナ?ナ?としきりに聞いてきたけど、ようやく諦めたのか

「もう座学は教えんカラナ!」

と言い出したので、僕は

「いやいや、まだ僕は魔導学校に入ってないでしょ?まだまだ契約期間中だよね?」

と返して置いた。

 拗ねたジークはお姉さんの方に近寄って、

「やっぱ、コイツも弟子にしようカナ?」

とか言い出した。

 お姉さんも止めてよ!これ止めないと僕がまたいじられる!そんなフフッと笑わないでよ!

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