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一話


 人が操れる大いなる神秘、魔法。この国は優れた大魔法使いを輩出してきたので魔法の国と呼ばれ、その力を使うことで栄えてきた。

 この国以外では魔法が扱える人物は十人に一人いるかいないかなのだが、この国ではなぜかほとんどの人が扱える。もちろん、扱える魔法の強弱はあれどほとんどの人が扱えるというのは利点だ。

 ただ、我が国では他国のよりも魔物が非常に強い。魔物はどこからともなくひょっこり現れては人を襲う厄介な敵だ。そんな奴の数も質も揃っていたらしい。

 そのせいで国家の発展には苦労したそうだが、逆にこの土地はどの国家も欲しがらず侵略を受けることがなかったと習った。


 この国では国家や街の防衛から、農業や漁業、果ては日常生活まで魔法を使用することで効率を高めてきた。

 しかし、この魔法はよく解明されていない。この魔法をよく使う人は寿命が数倍に跳ね上がったり、老化が遅くなったりする。

 これらの理由や、魔法の発生する原理など未だ魔法の根本的なことは何も分かっておらず、それ故に人の心を引き寄せているのだろう。ちらほらと魔法は神秘だ!とする宗教が割とありふれているくらいには。


 この国に住む少年少女らは必ず著名な魔法使いの童話を聞いて育ち、魔法使いごっこなんかでは、有名な魔法使いはいつも誰が演じるかで喧嘩となるのが日常である。


 そんなこんなで育つ子供たちはこの国に認定された魔法使い、魔道士となることに憧れる。

魔道士にはいくつか種類があって、全部で3種類。

 魔物の討伐や国家防衛なんかの戦闘面で活躍する戦闘魔道士。

 魔法の開発・研究を行って国民の生活を豊かにする研究魔道士。

 魔道具の開発・生産を行う生産魔道士。


 とは言っても、大体こんな感じ、といったざっくりとした分け方でどれが一番得意かで分かれているらしい。大体のどの魔道士もある一定ラインで他の魔道士の仕事をこなすことができるそうだ。


 そして、僕――ルティーは戦闘魔道士のフィーエンさんに憧れている少年である。

 フィーエンさんの噂では心は優しく、穏やかだけど口調や語気なんかのせいで初対面の人にはよく怒ってるの?と言われるらしい。……その度に怒ってねぇよ!と返す非常に面白い人物でもあって、戦闘魔道士としてよく魔物の討伐を行い、いろんな街を救ってきた英雄だ。

 あと放浪癖があるらしく数ヶ月から数年ほど帰ってこなかったりするらしく、その度になんらかの成果をひっさげて返ってくるからなんも言えない、とフェーエンさんの知り合いの魔道士から聞いた。寿命が人よりも数倍ある魔道士らしい行動だ。

 僕はフィーエンさんに会いたくて魔道士になりたい


「ねぇ、ジーク?どうしたら魔法は上手くなる?」

「ア?んなもん……まぁ、頑張れば上手くなるだろ」

 ジークはそっけなく返してくる。意識がこっちを向いていないのがバレバレだ。大体、ジークも体の輪郭が曖昧だとは言え顔はどの辺についてるか分かるから物理的にもこっちを向いてないことなんて一目でわかる。


 このジークは本人曰く魔道具である魔導書の中に封印されている悪魔らしい。やたらと豪華な装飾がされた分厚い本の真ん中のページ辺りから黒いモヤモヤが出ていて、そのモヤモヤが体を作っている。

 本から出ないの?とか聞いても無理、と言われて終わる。


 悪魔という存在は結構身近だ。かつてはバチバチに戦争してた時期もあったらしいけど、今は仲良くしてるそう。

 魔法と悪魔って親和性が高く、魔法にも精通してるから魔法の研究にも協力してもらってるんだってさ。

 悪魔の習性として契約を重んじるから、フットワークの軽い彼らに情報を渡したとしても情報漏洩を禁止しておけば、絶対に漏らさないからそういう意味で助手にしたりする魔道士も多いらしい。あと、街を歩いているとたまに見かける。


 ある時、僕が近所の森で迷子になっていたらこのジークが森を出る手伝いをしてくれて、ジークの意向もあってそのまま持って帰ってきた。それからはずっと一緒に過ごしていて、僕のおにぃちゃんみたいな感じ。

 

「そんなこと言わずにさぁ……ほらっ!ジークって魔法得意でしょ?教えてよ!」

「教える、カ……俺は大して教えるのが上手くないしナァ」

毎回こう言って断ってくるけど、今日の今日ばかりは譲れない。

「そこをなんとかっ!ほんとーになんでもするから!」

「……毎回毎回よく飽きねーナ。何故ここまで言ってくるんダ?」

「大魔道学校に入りたいんだよ!でも、ほら。僕ってあんま才能ないでしょ……落ちたくないんだよ。行きたいんだよ!」

「行ってどうする?何をしたいのかで決める。特に何もなく漠然と行きたいだけ、なんてのは行くだけ……」


「フィーエンさんに会いたくて!」

 ジークとの押し問答を遮るように言い切った。

 後から思えば実質的に漠然と行きたいだけ、みたいなことを話しているけど、

「フェーエンに会うカァ……。なるほド、まぁいいんじゃないカ?魔導学校に行くぐらいまでは手伝ってやロウ」

と答えてくれた。何がジークの琴線に触れたのか分からないず、脳の処理が追いつかずに思わず出てきたのは

「……は?」

という弱々しい声だけだった。

 悪魔と人間の感性は若干ズレてて、ほとんど同じなのに決定的なところが違うせいで気持ち悪がったのが戦争の始まりだっけか?実感したけど本当によく分からない。

「嫌ならいいガ」

「嫌じゃない!お願い!」

「契約の内容を考えるカ。オイ、悪魔と契約する時の注意するとこなんかを教えてヤル」

 そして、ジークから悪魔と契約するときはの注意点を教えてもらった。どこか契約に穴が有れば、その穴を突いて契約違反だ!と言わせてから契約に書いてないと言うのが趣味なやつが一定数いるらしい。


 そんなこんなで僕はジークと契約をして魔法を教えてもらえるようになった。期限は僕が大魔導学校に行くまで。見返りはいらない、とそっけなく言ってくれた。この時ばかりはこのそっけない返事をかっけぇ、と思ってしまった。


 こうして僕は魔法をプロとも言える悪魔から教えてもらえるようになった。

 


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