卒業式
「おめでとうございます」
ヤマト達生徒会のメンバーは校門で卒業生の登校を見守っている。ヤマトはあまり3年生とは面識がなかった。精々不意にキスされたあまねさんくらい。それでも丁寧に対応する。
「ヤマトって3年生でお世話になった人っているの?」
「宏太さん、実はあまねさんくらいで……だから今日はあまねさんの為に頑張ることにしました」
「そりゃ、チューされたらそうなるな。あー、羨ましいぜ、オレならこうしてこうして……あんな事も……」
宏太さんには未だに彼女がいない。男の友人としてはこんなに楽しい方はいない。イケメンな変態……カトレアの女子生徒は見た目に騙されない、素晴らしい!
「僕、とっても宏太さん好きです! つるむ男友達としては抜群ですよ!」
「なんだそりゃ、褒められてるのか? ヤマトがどんなに好きでも、ケツだけは貸さんぞ(笑)」
出迎えも終えて、卒業式の準備をする。ヤマトが行う仕事は……在校生代表としての言葉、カトレア勲章の授与、この2つ。今回のカトレア勲章の叙勲者は疋田あまねさん、前生徒会長である。
「只今より第117回、県立カトレア高等学校卒業式を行う。卒業式入場!」
卒業生が入場する、一糸乱れぬ入場、マーチングバンドのようである。カトレアでの最後の行事なので3年生も本気で取り組んでいるのだろう。
全員が座ると開会宣言、国歌及び校歌斉唱と続く。そしてクラスの代表が卒業証書を渡され、その後にそのクラス全員の名前が読み上げられる。
藤川校長先生の話、来賓の祝辞と続く……そしてこの緊張感の中、カトレア勲章の叙勲が行われる……
「それではカトレア勲章の発表をする。カトレア勲章とは卒業生の中から特に優秀な生徒を選出し、それを称えるものである。本年度の叙勲者は1名、勲章の授与は現生徒会長から行われる 生徒会長、桜井ヤマト、前へ」
「はいっ!」
ヤマトは返事をして登壇をした。
「では本年度、カトレア勲章の叙勲者は……疋田あまね」
「はい!」
いつもはフザケ気味のあまねさんもさすがに緊張しているみたい……少し声が裏返ってしまった。あまねさんが登壇しヤマトの前へ。授与者が叙勲者に一声かけるのが習わしになっている。
「あまねさん、カトレア勲章、叙勲おめでとうございます。裏返ってても素敵な声でした……」
「ありがと、ヤマトくんには私からファーストキスっていうあまね勲章あげたから、これお返しね(笑)」
場内がざわめく……恐らく、このやり取りの為に生徒会室で全員集合している時にキスしたのだろう……やはりあまねさんは変わらない。最後まであまねさんであった。
「在校生感謝の言葉、在校生代表、1年A組桜井ヤマト」
次は感謝の言葉言葉である。困った……あまねさんのキスの弁明をしなければ……。
「卒業生の皆さんご卒業おめでとうございます。在校生を代表しまして、感謝の言葉を述べさせて頂きます……」
考えてきたつまらない内容を淡々と話す。でも…が最後にはアドリブ入れたい……
「あの、最後に一つ、カトレア勲章の叙勲者である疋田あまねさん、とても素敵な思い出をありがとうございました。尊厳する女性からキス、一生の思い出にします、決しておカズになどしません。大切に心のうちに仕舞うことにします」
あまねさんに逆襲した。敬愛する宏太さんを真似て卒業式で下ネタをぶち込んでみた。卒業生の緊張の糸が一気に取れたような……とても微妙な雰囲気。生徒会として参加している宏太さんの笑い声が響く……。
卒業生の挨拶はあまねさん、必ず仕返しが来ると思ったが……しかし何と……挨拶の最後の方で泣き出してしまった……。その後には3年生による合唱、絆、である。実は今回、録音することにしている。2年F組の合唱とどちらか一つをカバーアルバムに入れるためである。
「これで第117回県立カトレア高等学校、卒業式の閉会とする。一同起立! 礼!」
卒業生が退場していく……啜り泣いている者、笑顔の者、それぞれが心の赴くままの表情をしている、緊張感はなくなっていた。
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「あー、終わったね。あまね、珍しいじゃん、挨拶の途中で泣いちゃうなんて……ヤマトくんと別れるのがそんなに辛いの(笑)」
クラスメイトであまねの親友、みなみが話しかけてきた。自分でも何故涙をしたのか不思議である。エゲツナイ下ネタを返してやろうと思っていたのだが……。
「多分……みなみと違って男性経験ゼロで卒業することが悲しかったんだよ(笑)」
「泣き出さなかったら、そんな話を卒業式て話したんでしょ(笑) このやり取りも思い出になるね(笑)」
「さすが我が親友だ! そのとおり、あまね大勲章を生徒会長に進呈したいって話すつもりだった……」
あまねの高校3年間はバラ色の日々であった。大変なことも苦労したこともあったが。心残りなどはない……が唯一最後に自分らしく挨拶出来なかったのは悔しかった。
「あまねさん、ご卒業おめでとうございます」
「あらヤマトくん、ありがとう! まさか、あまね大勲章を受け取りにきたの(笑)?」
「なんですか? それ……(笑) いや、私からあまねさんへ卒業のプレゼントです。これ4枚ありますから、お友達にあげたりして思い出の品にしてください」
「ありがとう、開けていいかしら……」
中には4枚の金貨が入っている。洋蘭のあしらわれた金貨、確か北欧のどこかの国で発行していた。もちろん、年号は今年のもの、これはとても良いプレゼントだ。
「こんなにいいの?」
「こんなんじゃ足らないくらいですよ……本当に素敵な思い出ありがとうございます」
「ありがとう!」
あまねはヤマトを抱きしめた……。
みなさんいつもありがとう
コロナで体調不良になってから毎日更新出来なくなってます。ごめんなさい。これも校正してませんが……。




