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天使の歌声

 みさおは神妙な心持ちである。ヤマトくんから送られた真実、とてもじゃないが受け止めきれない。香港からたまたま旅行に来ていて、拉致され両親は殺され、三姉妹は暗殺の特殊訓練を受ける。そして、ヤマトくんに保護される迄、何度も死線を乗り越えてきた……死体の山を築きながら……。


「みさおさん、そろそろヤマトくん着きますよ」


「あおい、ありがとう。ちょっとね、考え事しちゃって」


 これから会うのは、その当人である双子の姉妹。正直会うのが怖い。ヤマトくんは何も触れなくても大丈夫だという、哀れみの言葉も優しい眼差しも必要ないと……。




「どうもこんばんは、はじめまして、リーナ榊と申します。こちらは妹のニーナ榊です。よろしくお願いします」


「よろしくね。リーナちゃん、ニーナちゃん。早川みさおです」


 みさおは双子の2人が緊張しないようにと、同級生のあおいも同席させている。ヤマトくんを含むと応接室には5名、意外にも双子の2人は正反対な性格にみえる。


「ニーナです! この絵素敵ですね! あ、これも! 芸能事務所って聞いてましたので……とってもビビってました(笑) 早川さんもとてもお綺麗……」


 ニーナちゃんは絶えずニコニコしている。好奇心が抑えきれないようで、矢継ぎ早に話をしている。対してリーナちゃんは冷静で……いい意味で落ち着いている。


「ニーナちゃんは好奇心旺盛なのね! それはね、姫が遺した絵なのよ。今回ニーナちゃんにも歌ってもらおうと思ってる」


「私も……ヒメリンの大ファンなんです。感激です!」


 ニーナが涙を流す……それをとてもあたたかい目てリーナが見つめている。


「ヤマトくん、ニーナちゃんは姫の音源を聴いてるのよね? では早速レッスンルームで歌ってみましょうか!」


「あのー早川さん。私、この絵の前て歌いたいです。いいですか?」


 確かにヤマトくんから送られてきたのはアカペラ。みさおが頷くと、ニーナは大きく息を吸う……


「♪ ♪ ♪ 通い慣れた坂道 角を曲がると見える白い校舎 ♪ ♪ ♪」


 みさおは息を呑む……素晴らしい歌声〜透き通る高音、優しい低音、一番素晴らしいのは……その表情、まるで天使そのもの……衝撃を受けたのは、みさおだけではない。あおいは……涙を流している。



△△△△△△△△△△△△△△△



 ニーナは歌い終えた。歌ったのはヒメリンのアルバムにあった曲、カトレア。この歌は上手に歌える、何せいつも見てる風景か歌詞になっている。


 ふと見渡すと……あおいが涙流してたからを流している。そして、みさおさんも一言も発してくれない。


「ニーナ、相変わらず上手だな」


 一番に声をかけてくれたのはヤマト様。どこか満足気な笑みを浮かべている。リーナはいつものようにニーナを見守っている。


「ニーナ、素敵 私、感動しちゃって……」


「え? そうなの? あおい……」


 ニーナは分からない。歌とは楽しいもの、勇気や希望の象徴であり、愛を語るもの。悲愛の悲しい歌もあるが、これは違う。やはりプロは目の付け所が違うのであろうか……。


「ニーナちゃん、歌うの大好きみたいね。ヒメリンの歌、本格的に歌ってみない?」


 ニーナは自身の歌声が認められたことを悟った。でも……歌はニーナにとって3番目に大切なもの。1番はヤマト様と2人の姉さん、2番目は心を癒やす花々、そして3番目にやっと歌がくる。


「はい! ヒメリンの歌のカバーなら是非お願いしたいです! ヤマト様もリーナも喜びますし! あおいも一緒に歌うんでしょ? それなら安心(笑)」


 何より自分も楽しい。カトレアに来てから楽しいことばかり、ヤマト様にまた感謝しなければ……。



△△△△△△△△△△△△△△



「あおい、どうしたの?」


「みさおさん……さすがに衝撃で。私なんか足元にも及ばない、プロとして恥ずかしい……」


「何言ってんの! あおいはあおいでしょ、しっかりしなさい!」


 あおいはニーナの歌声に衝撃を受けた。アイドルで歌を歌ってます……なんて恥ずかしすぎる。ヤマトと双子には先に帰ってもらった、一緒には帰りたくない。


「自信とか崩壊しました……精一杯頑張ってきたのに……」


 みさおさんには本音が言える。今までの努力が全て無駄に感じた……。


「あおい、なら良いこと教えてあげる(笑) あのね、私が初めて姫と会ったときも衝撃を覚えたわ。心が強く気配りも完璧、そして歌は国宝級なのよ……私だって、今のあおいみたいに感じたのよ」


「え? みさおさんはヒメリンの師匠って……」


「そうね、姫にはそう呼ばれてたけど……歌も声優としてのポテンシャルも私より遥かに上だったわ。そして、思い出したように弾けるようになったピアノなんて……世界レベルよ……」


「ヒメリンの伝説、本当なんですね……サッカーの日本代表経験あるんですよね。実在したのですか(笑)」


「あおいは、そう! 笑ってないと! ちなみに中学生時代は100メートル走の中学生記録も持ってたみたいよ(笑)。他人との比較ってあおいの年齢だと無駄かもね。努力を重ねられること、これは大きな才能だから!」


 みさおさんの言葉にあおいは視界が晴れたような気分になった。

みなさんいつもありがとう


 自宅療養辛いです……。

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