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SS〜永久(とこしえ)の恋 異変

 遠距離恋愛も3年が過ぎた。相変わらず毎日電話がある。昨年4月から薫はニューヨークに赴任、由美子が見込んでいた訳ではないが、エンジニアとして大成功を収めている。エンジニアとして、だけでなく、生物科学の分野まで参加しているようだ。


「吉原さん、健康相談員から電話が入ってます」


「わかりました……はい代わりました」


「吉原由美子さんですか? 健康相談員の立川と申します。前回の健康診断の結果で……直接お話したい事がありまして……」


「わかりました」


 嫌な予感がした。すぐに精密検査、そして……即入院となる。最近急激に増えている血液に関する病気、幸いにも日本では死者は出ていないが……すぐに薫には連絡を入れておいた。退院するまでは電話ができないから……。



「姉さん、どう? 体調は……」


「うん、特に変わらないかな。私って本当に病気なのかなぁ……」


「だよねー。元気そうだし。後でさ母さん来るの、主治医の先生と話すみたいだから、早く退院させるように話してくるよ!」


 ななこには言えなかった。体調は悪くなっている。目眩が酷い、すぐに疲れる。自分なのでよく分かる……とにかく療養が必要だという……。



 由美子は少し眠ってしまった。話すのがダルい。まだ母さんとななこは戻ってきていない。時計を見ると一時間半ほど経っている。


 ななこと母さんが戻ってきた。


「由美子、なんか眠そうね……」


「母さん……そうね。ちょっとゆっくり寝たいかな……」


 母さんと話をしたが……ななこは一言も言葉を発しない。そして…………由美子はとても重要な事に気付いてしまう、ななこに……涙の跡がある……この時、由美子は自身の人生を悟った……。



「変異型ヘルペスウイルス感染症」


 体内に常駐しているヘルペスウイルスが強毒性を持つウイルスに変化する。症例は昨年まで世界でたった3例、しかし、最近は全世界で症例が急激に増えている。昨年までに発症した3名の患者は治ることなく人生を終えている、不治の病、というより未知の病である。薫に入院したことは伝えたが、病気の事は伝えてない。話さなければ……だが、話せない。世界で活躍しつつある薫、話をしてしまえばきっと由美子の側に居てくれるだろう……でも……



「来週の火曜日、実は急に日本に帰ることになったんだ! たまにはホテルで食事でもしよう! あ、でも病み上がりだったな、無理はしなくていいからね」


 薫と直接話す機会が巡ってきた。ここで話そう……由美子は決意した、そして、2日間の一時退院の許可を貰った。



△△△△△△△△△△△△△△△△




 いよいよ明日、由美子と再開する。準備は万全、このタイミングで由美子にプロポーズをする、ニューヨークでは多くの研究機関からのオファーがあったが、やはり日本で由美子と過ごす事を選んだ。今のプロジェクトが終わったら……日本に戻る。



 待ち合わせは恵比寿ガーデンのタワー前。疲労で一時的に入院したらしく、病み上がりと聞いているので、商業施設内のプラネタリウムを見て、夕食、そして……プロポーズの予定。婚約指輪と結婚指輪までも早々と用意してしまった、早く由美子を驚かせたい。


「由美子、久しぶり……」


 由美子は薫より先に来ていた。何となく元気がない気がした。


「薫! おひさー」


 軽い掛け合い。いつもの由美子、思い過ごしだろう。そしてプラネタリウムを観た。夕食は軽くイタリアンを……由美子の仕草、横顔、全てが薫にとって宝物に見える。そして……


「少し歩こうか……」


「そうね。でも少しだけね(笑)」


 いよいよプロポーズ。場所は決めている、例のチャペル前と。何気なくチャペルの方向に歩を進める。


「ここ、変わらないよなー。覚えてる? 初めてのデート、ここで告白したっけ(笑)」


「もちろん! 薫、勢い凄かったよね……(笑)」


 昔話をしている。由美子はチャペルを見つめている。どことなく寂しそうな横顔……何故だろう。でも今しかない!


「由美子さん、僕と……結婚してくださいっ! 必ず幸せにします、それと、一つだけ約束してほしい……私よりは長生きして! 由美子には幸福が似合うから!」


 由美子が入院と聞いて薫は心配で仕方なかった。だから、健康でいてほしい。そう伝えたかった。大学時代、告白した時のようにひざまづき、返答を待つ。


 何故か……長い時間が流れた…………まさか…………


「薫くん、ごめんなさい。実は……私、今違う方とお付き合いしてて……入院してたでしょ……その時もずっと側にいてくれて……」


 薫は目の前が真っ暗になった……そりゃそうだ、こんな素敵な女性、放っておく方が悪い……仕事が順調すぎて、自身を過信していた、そう思った。泣く訳にはいかない、笑顔で由美子を見つめる。


「そうか……ゴメンな……。由美子が選んだオトコならきっと由美子を幸せにできると思う。だから……幸せになれよ……」


「うん」


「では、お別れだな 今までありがとう……由美子」


 プロポーズのハズが……心に大きな穴が開きながらも由美子に笑顔を向けた。



△△△△△△△△△△△△△△△



 由美子は泣いた。病気の事が言えなかった。プロポーズされるとは思ってなかったし……自分より長生きして欲しいという約束……はきっと果たせない。だから……嘘を付いてしまった。それに……薫の人生を縛るわけにもいかない、そう咄嗟に思ってしまったのだ。


 由美子は今日の想いを手紙に残した。もし、薫が真実を知ってしまった時の為に、薫への愛を書き記した。

みなさんいつもありがとう


 本編を書き始めたので、こちらは毎日更新は厳しくなりました。とりあえず第一章終了までは毎日更新します。

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