SS〜永久(とこしえ)の恋 気の合う友達
由美子は前日眠れなかった。何故か……それは気付いてしまったから。自分が杉田くんのことが好きだと……。明日は杉田くんより早めに待ち合わせ場所に行こう、そう思うと胸が高鳴る。どこが好きなのか……はわからない。少なくともプラチナネックレスの影響ではなさそうである。
「姉ちゃんどうしたの? 大丈夫? 顔が真っ赤よ」
「別にー」
ななこが話しかけてきた。ななこは由美子より4つ年下の高校生、芸能事務所にも所属していて、今回晴れて役付きで映画デビューである。
△△△△△△△△△△△△△△
「いやー、あの映画は微妙だったけど、妹さん凄いね、普段からあんな嫌味な感じなの?」
「なわけないし(笑) いい子よ〜でも、ちょっぴりワガママかな、気が強いというか……」
低予算で制作した映画で、内容は、主人公がイジメられ続け、最後にどんでん返し。醜いアヒルの子的な話、由美子の妹さんは徹底的に主人公をイジメる役柄であった。気分が悪くなるような演技である。
「どこか体に力が入る映画だったから、ちょっと体中痛くなったね、歩こうか!」
「じゃ、恵比寿まで歩きましょ。原宿だと私、たくさんスカウトされちゃうから(笑)」
由美子と恵比寿まで歩いている。途中はほぼ妹さんの話、薫には兄がいるが話題になるようなエピソードはない。吉原家はとても仲が良い家族みたいである。
恵比寿まで由美子と歩いた。途中、可愛いカフェに入ったり、ウインドショッピングをしながら。気付くとあたりはすっかり暗くなっている。楽しい時間は過ぎていく。そして、恵比寿ガーデンのタワー前に。イルミネーションが綺麗で……光に照らされた由美子の横顔に見惚れていた。
「私ね、ここ好きなの……あのチャペル。懐かしドラマって、よく観るんだけど、ここで結婚を申し込む素敵なドラマがあって……」
恵比寿ガーデンのタワー前にあるチャペルでそんな話をする由美子。キラキラと目を輝かせながら話す。薫は……気持ちを抑える事が出来なかった……
「由美子……それなら……ここで俺が由美子に愛の告白したら……迷惑かなぁ……」
薫の方に振り向く由美子。口を開く。
「うーん、分からないかなー、告白を実際に聞いてみないと……ね、告白してみてよっ(笑)」
「由美子……その言い方、意地悪。姉妹で似てるのかな(笑)」
「え、何かホザいた? 早くう、実験しよ(笑)」
薫は跪いて手を差し伸べる。由美子の表情は分からない。
「由美子、好きです。付き合ってください……」
沈黙……薫は顔を上げた。どうせ舌でも出しているのだろう、と諦めて……。
「はいっ。喜んで……」
由美子は薫の手を取った。初めて手を繋ぐ。何か夢みたいな事が起きている。よく告白できた……泣きそうだ。
薫に人生で初めての彼女が出来た瞬間であった。
△△△△△△△△△△△△△△△
「でもまさかねー。由美子が杉田と付き合うなんて……2年経ってもラブラブって羨ましいなぁ」
由美子はみゆきと2人だけの卒業旅行に来ている。場所は韓国ソウル、1日に遊んでホテルのバーで2人で飲んでいる。来月からはお互いに社会人であるが、結局みゆきは一度振った田中くんと付き合っている。散々痛い思いをして、結局愛されることを望むようになった。
「みゆきも良かったね、幸せそうで。やっぱこのまま結婚とかしちゃうのかな?」
「社会人になると結婚の話とかになっていくもんね。田中くんも薫も一流企業だから経済的には安定するかも(笑)」
「あとは成り行きね(笑) 由美子は遠距離恋愛になっても大丈夫そう! 杉田は一途だし、対してモテないし(笑)」
由美子の彼氏になった薫はエンジニアとして一流企業に就職する。全国に支店があるので当面は遠距離恋愛になりそう。
「そんなことないわ。最近ななこが薫のこと狙ってるのよ(笑) 薫さん素敵〜って」
「あら、姉妹してオトコを見る目が高いこと(笑)」
こうして由美子の大学生活は終わりを告げた。
由美子は都内の銀行に総合職として就職した。研修は多岐にわたった。毎日忙しいが夜に必ず薫から連絡がある。それを糧に毎日を乗り切っている。
「薫、最近さぁとっても疲れやすくて……もう年かなぁ」
「なんだ? 腰でも曲がってきたか?(笑) 曲がってるのはココロだけにしてくれ(笑)」
「ひどーい、あなたこそ曲がってるじゃん(笑)」
「またそれ……」
薫るとの癒されタイム。何故か話が尽きない……薫は恋人であり親友、尊敬できる同級生、由美子にとってはどれも当てはまる大切な人。
「ね、今度はいつ会える? お盆は帰ってこれるの?」
「大丈夫だと思う。遊び行くなら由美子の方で企画していいからさ、由美子のやりたいこと全てに付き合うよ」
薫は研修で長崎にいる。赴任先は九州のどこか、らしい。わかっていたとはいえ、遠距離恋愛は寂しい。
「なら……温泉かな」
「よし! そうしよう。予約は由美子、出資は俺で!」
みなさんいつもありがとう
この物語は新作で投稿した方がご覧になる方多いかも知れないですね(笑)




