スーパー公約
中間試験は想定通り楽勝であった。間違えている問題など皆無、余裕で学年トップになるだろう。放課後は生徒会室へ行く。試験勉強と同時に進めていた公約がほぼまとまったのだ。推薦人に報告に行く。
「こんにちは」
「桜井くん、待ってたよ。今日は会長も一緒だが、いいかな?」
「抜け駆けにならないなら大丈夫ですよ」
「桜井くん、一応私もチェックしておきたいと、みのりにお願いしたんだ。申し訳ない」
「わかりました。ちょうど企画書が3部ありますので」
ヤマトは2人に企画書を渡す。2人は……表紙を見て驚愕の表情
「指定校推薦の拡大について」
「桜井くん、これ本当なの? 名門7大学で25名の指定校推薦拡大、ニューヨーク工科大学への留学枠確保」
「はい、これを見てください!」
学校に提出する企画書には教育担当省の蓮見大臣の判子が押してあるお墨付き許可証がついている。これがあれば拒否は出来ない、これは公約というより実績になってしまうが……。しかし工科大学への留学枠に関しては確保条件にヤマトが生徒会長になった場合と明記がある。
「その許可証、偽造とかじゃないよね?」
「もちろん! 蓮見さんは知り合いでして。事情話したらあっさり許可証くれました。でもこのことは内緒にしてもらっていいですか? あくまで努力したことにして下さい」
誰だって驚くだろう。人気の私立6大学、そして、目玉は……東京国立大学の1名という枠だ。これが一番苦労した。
「カトレアでトップの成績を取った学生は東国大に推薦で行けるってことよね?」
「そうです。でも東国大だけ出願要件がベラボーなので該当者が出ること自体が大変かと思います。それでも目指せるだけ学校内の学力は更に向上しますから有効ではありますね」
東国大の出願条件、評定4.9、ほぼオール5で英語検定2級、生徒会又は部活動の副部長以上を歴任していて、学校長が相応しいと認めた者。無茶苦茶な出願条件、完全に嫌がらせだ。東国大の学長、相良め……あいつにだけはいつか復讐してやろう。
「みのり、あなた、ヤマトくんと争わなくて良かったわね。こりゃ誰も勝ち目がないわ」
「そうですね…………」
ヤマトは今中さんの横顔をみた。ふとした表情が、とても可愛く思えた……気のせいだろう。
△△△△△△△△△△△△△△△
中間試験から1週間、カトレアでは各学年の成績上位者が発表される。発表は各自が持つタブレットからであるが、それと同時に生徒会会長選挙の第一回演説が行われる。人気や知名度だけでなく、学業成績も判断材料にするためである。
「やべーな、ヤマト、ブッチギリの学年トップじゃん」
「それは言うな。試験全体で6問も間違えてるし。物理基礎を1問を間違えたのにはかなり不満が残る」
「ホントに頭良いんだな。これならヨメさん候補たくさん来るよ(笑)」
「勉強が出来るってだけだから。次回はもう少し本気で試験に取り組むよ(笑)」
「嫌味に聞こえないのがいいよな(笑)」
そんな話をしているヒロシも成績上位で載っている。18番目だが、立派なことだ。
「ちょっと桜井くん、お話してもいいかしら……」
話したこともない女子がやってきた。たしか……花京院静さん。ミクの同級生の娘さんだと聞いていたが、名前の通り大人しく静かな感じだったので、入学2ヶ月経っても話したことはない。茶色の髪の毛はクルクル巻き髪になっている、フランス人形のような見た目で、あおいと人気を二分する美女である。
「花京院さん、ですよね。母の同級生の娘さんだって聞いてます。なかなか話す機会なくて……」
「私もママから聞いてるわ。桜井くん、勉強凄いのね。私、完敗してるし」
成績上位者の1位はヤマト、離されてはいるが花京院さんが2位になっている。ヤマトが本来の進学先に行っていればトップということになる。なかなか優秀、そして容姿も素晴らしい……性格クソってことなのか。
「たまたま、とは言えませんね。僕、勉強得意なんですよ。数少ない取り柄です(笑)」
「悔しいけどこの先の勝てそうにないかな(笑)。私も唯一の取り柄だったのに……」
何を言うか……フランス人形風情が、とは思った。優秀なのは分かった、ヤマトに勉強では敵わないと一度の試験で感じ取ったのだ、何度も挑まれた中学時代とは違う。それに、大人しい割にはハッキリした性格のようである。
「会長選挙もあるので1位は外せなかったからさ。今日の夕方、特別ホームルームの時間に演説するので応援宜しくね」
「分かりました。精一杯応援させて頂きます」
もっと突っかかってくるかと思ったが案外だった。美しくて勉強が出来て、物分かりが良い。ヤマトは同級生に恵まれた、と感じた。そして……6時限目
「これから生徒会会長選挙、候補者の紹介と各候補者からの演説が行われます。各自端末で視聴するように」
会長選挙がスタートする。
みなさんいつもありがとう
学年1位の頭脳、そしてスーパー公約を実現させる人脈。ヤマトの実力の片鱗がみえますね。
現在、30話のストックがあります。ちょうどカトレア祭(文化祭)の場面を書いてますが、前作も同様に、楽しく書けてます。ご期待ください。