SS〜永久(とこしえ)の恋 由美子と薫
「杉田くん、またサボり? リモートばかりで出席しないで大学にも来なさい!」
「由美子ごめん、忙しいんだよ。バイトが……出席だけお願い! 埋め合わせするからさ」
由美子にとっては毎回のこと、大学の映像サークルで知り合った杉田薫くん。自称苦学生の彼は毎回のように由美子に出席代行を頼んでくる。身長は175センチくらい、短髪でメガネを掛けている……決してイケメンの部類ではない。でも由美子は頼られると何となく手を貸してしまう質、出来の悪い弟のような杉田くんのお願いはついつい聞いてしまう。
「まあいいけど、私、誕生日近いから、誕プレ期待することにするわ(笑) 嫌よ、去年みたいにスパイグッズとかは……」
「あれ、いいと思ったんだけどなー」
昨年も杉田くんから誕プレを貰っている。盗聴器発見器と護身用防弾チョッキ、どうだ! と言わんばかりの勢いで渡されたが……普通に使い途がない。今やテーブルの上にあるオブジェになっている。
「あのね、もっと私を思いやってプレゼントは決めてね。あるでしょ、私が欲しがるもの……ネックレスとかネックレスとかネックレスとか……(笑)」
「分かった! なら強力な魔除けになるネックレスを探すよ! 任せて……」
由美子はこのやり取り自体をいつも楽しんでいる。何処か気が合う。バイトばかりしているがきっと馬鹿ではない、優秀なはず、と由美子は思う。
「なに? また頼まれたの? アイツ、ナメてるよね。由美子さぁ、まさか好きなんて事ないよね? あなたモテるんだからもっと上玉ゲットしないと」
「みゆきこそどうなの? 田中くんから告られてもう3日よ? 返事したの?」
「断ったよー。やはりルックスと身長がねー」
「みゆきこそ、容姿とか育ちとかで選別してるとロクなことにならないわよ(笑)」
「私、イケメンに求められて苦労するならそれでもいいの! てか、それが狙い(笑)」
小野みゆき、彼女は由美子の親友。高校から同級生、明るい髪の色をした、如何にもギャルという容姿。彼氏もお洒落アイテムと考えている根っからの面食い、そして化粧で変身する術を持っている。
「田中くんもいいヤツだと思うけどね、みゆきの事大切にしてくれそうだし……」
「貰い手なくなったら声かけてみるよ(笑)」
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一年ほど前、薫は由美子と出逢った。一目惚れであった、だが、吉原由美子は超のつく美人、中学から高校3年生までバレンタインのチョコを一度も貰ったことがない薫にとっては高嶺の花。ところが、何故か仲良くなった。由美子が薫のことを彼氏とか異性として意識していない事は分かっている。なので薫は心を押し殺してでも友人として関わることを選んだのである。
「杉田って大田と仲いいよな。案外モノに出来るかもよ?」
「軽く言ってくれるなよ……アイツ美人だし、彼氏くらい何人かいるだろ(笑)。それに、俺にとっては身代わり出席してくれる関係が最重要だから。下手に振られて関係崩れたら失うモノが多すぎる(笑)」
話しかけてきたのは同じ学部の岡部孝、映像サークルでも一緒なので話す機会が多い。身長は173センチ、ウェーブのかかった茶髪、かわいい系男子で女にはモテる、が、将来を決めた彼女がいる。羨ましい……。
「日本では一人ずつしか選べないから彼氏も居て1人だろ(笑)、でも確かにそうかもな……見た目も気立ても上玉だから競争率も高そうだし、友達の方がメリット大きいかも(笑)」
「まあ、日頃お世話になりっぱなしだから、今回せびられている誕プレは少し素敵なものにするよ」
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由美子の誕生日当日がやってきた。由美子はいつものようにみゆきと一緒である。薫はみゆきが苦手、だが、このタイミングで渡さないと誕生日にプレゼントは渡せない。何を言われようと渡すのみ……
「由美子ー。はい、約束の誕プレ! 毎週本当にありがとう。気に入らなかったら質屋に売ってください!」
「杉田くん、ありがとう! 開けていい?」
由美子がプレゼントを開封している。中身は……シルバーのネックレス、ペンダントヘッドはひまわりか象られている。
「あら? 杉田にしてはいいセンスじゃん!」
「みゆき様にお墨付き貰えるなんて光栄でございます」
ペンダントヘッドは小さなものにした。チェーンもなるべく細いもの……金属が重いからだ。
「付けてみていい?」
由美子はネックレスを首にかける。うん、ひまわり、由美子が似合う花。花言葉はたくさんあってよくわからないが、由美子を花に例えるとひまわり。
「なに、似合うじゃん!」
「杉田くん、本当にありがとう!」
プレゼント作戦は大成功であった。これで当面の間、いつもと変わらぬ友達として大学生活を送れる……薫はそう思った。
みなさんいつもありがとう
今作初のショートストーリーです。この作品はスタートを間違えましたね……ヤマトが誕生するところから投稿するべきでした!




