生徒会、温泉旅行IN熱海
3学期が始まって2週間、土日を利用して生徒会慰安旅行を企画した。伊集院さんの件は、会ってアイドル衣装を着てもらう、という目標にグレードアップ? した。そして、今横浜で生徒会メンバーは特急を待っている。
「宏太さん、男子2人は旅行だと肩身狭いですね」
「ヤマト、実は……去年もあったんだよ、温泉旅行が。ここは女子主導なので、場所から予算まで男子は絡まない。言いたいこと分かるか?」
「いえ?」
「要するに、男は楽しめない……女子が行くような場所しか回らないし旅館も女子優先なんだよ。男子は……そうだな、荷物持ち? ポーターさんだよ(笑)」
なるほど、宏太さんは前回つまらなかったのか……。だが今回は結構な大荷物である。
「凄い荷物ですね。何を持ってきたんですか?」
「それは内緒だ! 暇つぶしかな(笑)」
「はーい、男子は荷物番ね! 私達買い出ししてくるから、よろ!」
宏太さんの言うとおり。そうだ……執事になろう!
「宏太さん、この際なので女子達の執事になりませんか? どうせ色々頼まれるので(笑)」
「ヤマトはオモロいな 畏まりました、お嬢様的な?」
「じゃあ、賭けしません? 執事ならざる言動が少ない方が勝ち、それでどうですか?」
宏太さんと約束をした。負けた方が手作り弁当を作ることになった。その条件なら本気にならざるを得ない。
「ごめんねー。待たせちゃって!」
「みのりお嬢様、お帰りなさいませっ。」
「ヤマト! 何よそれ!」
「今回は私共はお嬢様の下僕となり仕えようという事になりました。どうぞ、みのりお嬢様、よろしくお願いします」
静と美優はどこか喜んでいる。桐乃はつまらなそう、な顔をしている。
「宏太さん、今日はずっと荷物番なのでしょうか。さすがに碧々しますね……」
「ヤマト、少し待ってろ。旅館に行けば開放されるから。チェックインまでの辛抱だよ」
熱海に着いてからも買い物や美術館巡りの間はずっと荷物番をしている。ヤマトはどちらにも興味が無いのでどうでもいいが……2年連続の宏太さんは飽き飽きしている。
「もしかしたら、旅館に着いても荷物番なんてことになりませんかね?」
「去年はなかったが……あり得る」
やっとチェックインをした。荷物番は女子の部屋に運んでやっと開放された。
「ヤマト、これからオレの趣味の時間だ。これから軽犯罪を犯すからヤマトは参加するか考えてくれ! 1年間で作り上げたオレの作戦なんだ(笑)」
宏太さんは大きな荷物から何かを取り出す。何かの球体……ドローンでは……。
「これ、ドローンですか?」
「そう、これは只のドローンてはない。オレが試行錯誤して開発した……ステルスドローンだ。ヤマト、よくドローンって分かったな(笑)」
スパイや特殊部隊の人に見せてもらったことがある。様々な形をしているドローンの一つに似ていた。
「これ、自作ですか? で……飛ばす……」
「そう、飛ばす……」
「やります! 逮捕されたら退学ですね(笑)」
「それはないだろ……標的は貸し切り温泉の時間、だが、一つ難点がある。望遠レンズを搭載できなかった……だから見れても米粒みたいな感じになる。だから腹いせに雰囲気を楽しむくらいしか……」
その程度のお遊びなら笑って済ませられそうである。
しかし、自作とは凄い。それに男子っぽい悪戯がたまらなくいい! 犯罪ならいくらでも揉み消せるのでここはトライしよう……
「宏太さん、僕もやります、が一つお願いが……買い取りますから3台くらいドローン作ってくれないですか?」
「おうよ! 契約成立な!」
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「じゃあ飛ばすぞ……」
中庭の物陰に隠れてコッソリ飛ばした。不安定ではあるが……とんだ。グングン上昇する、人に気付かれない高度まで上昇、貸し切り温泉のタイムリミットは30分。
「どうだヤマト、画像はいけてるか?」
「取れてますけど……スマホの画面だし、もっと高度を低くしないと肝心なところが見えなそうです!」
「ではいざ、貸し切り温泉上空へ!」
タロニアでの作戦のようだが、同じようにドキドキする。たまらない……
「宏太さん、標的確認! ですが……米粒程度です。クリーム色の蟻が動いているようにしか見えません!」
「どれ……こりゃだめだな。人の認識も出来ん。高度下げるか……」
ドローンは高度を下げた。
「ヤマト、どうだ……標的視認できるか……」
「視認はできますが、依然大きめの蟻にしか見えません。人物特定やスリサまでは視認不可」
それは仕方ない。市販のカメラを搭載しているのだから。望遠付きの高性能カメラなど高校生では購入出来ない。もし、衛星回線にリンクさせれば……色々露わになるが……。
「もう少し下げてみようか……」
その時であった。いきなり画像が乱れる……何かに当たった、ではない、鳥である。トンビかカラスか……宏太さんのドローンは咥えられてしまった。
「あー、制御不能……」
「鳥に……撃墜されましたね…………」
「あぁ、オレの自信作が……25万もかかったのに……」
宏太さんは泣き笑い状態、撃墜されたのはかなり笑えるが、恐らく回収不能になったドローン製作者として、涙も出ている。
「宏太さん! 僕、宏太さんのドローン製作に300万くらい出資しますから! また作りましょう!」
宏太の作ったドローン初号機はこうして撃墜された。
みなさんいつもありがとう
久々温泉回です!




