澤口桜井会談
「シャロン、今日は頼むな」
「はい、本日はヤマト様とお呼びしてよろしいでしょうか……」
「任せるよ。まさかオレもシャロンを先生なんて言えないし。先生と生徒ってのもあり得ない話だしな(笑)」
相手は恐らく銃を所持しているだろう、なので双子を連れて行く事は出来ない。シャロンは強い、銃の所持を見抜くのも早い、今まで生き延びてきたのは伊達ではない。
会談は市ヶ谷本社内で行うことになっている。前回はビルの裏側でコソコソしていたが、今回は堂々と受付に向かう。ビルは20階建て、至って普通のビルであるが、すぐ裏には防衛省がある。ここは……日本の防衛の要。
「シャロン、そろそろ警戒してくれ……まず相手の人数と銃所持の有無、脱出経路も頼むな」
「はい、相手が瀕死になる程度に暴れてもいい許可はくださいねっ」
17階の応接に通された。割と小さな部屋に通された。だが、応接セットは豪勢でゆったりしている。暫くすると、男が4人やってきた、澤口さんそれと強そうなボディガード2人、佐藤さん。
「どうも改めまして、澤口です。本日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、お時間を頂きありがとうございます。桜井ヤマトと申します。こちらは私の秘書をしてますシャロンです」
「お初にお目にかかります。シャロンと申します」
シャロンからメモが回ってくる。秘書の佐藤さん以外の3人は銃を所持しているが、ダミーの可能性高い。扉の外には人影なし、敵対した場合の逃走経路の確保は容易。メモには暗号化されている、これで今のところ安全と危険が半々ってところか……。
「桜井さん、早速ではありますが、お越しになった本題をお話願えないでしょうか……」
「そうですね。では回りくどいこと抜きにお尋ねいたします。昨年3月の飛行機事故の件なのですけど……」
澤口さんは一瞬安堵をしたのか、緊張が解けた表情を浮かべた。安全保障会議のメンバーに知られたくない事があるのは確定した、だが、今はそんな事はどうでもいい。
「それについては秘書である私がお答え致します」
「わかりました、佐藤さん。ではまず、あの墜落は撃墜なのか、そうでないのか、お答えください」
「撃墜されたとは認識していません。何らかの技術的トラブルで起こった悲劇と言う他ないです。逆に質問なんですが、何故事故のことをお聞きになるのですか?」
目の動き、そして隣の澤口さんの様子を見ると嘘はなさそうである。
「私は今、カトレア高校に通っておりまして。伊集院姫さんについて調べているんですよ、個人的に。そうそう、御社の従業員で伊集院さんの親友だった相川さん、宮崎に滞在しているみたいですね」
ヤマトは先に仕掛けてみた……相川さんの名前が出た時、驚きの反応が微かにあった。
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(華ちゃんのことは機密事項、何故……やはりオーラスーツ関連か……)
佐藤は一気に緊張した。既に潜伏場所も知っている……どこの犬か分からないが要注意である。
「相川がどうかされました?」
「いや、相川さんも私の先輩だしね。私は相川さんが何を作っているか、なんてなんの興味もない。ただ、アナタが私を軽く思われないように、私の権力の一例を話したまでです。この情報は合衆国からもたらされました」
合衆国関係者であるからにはオーラスーツの事は把握されているはず。
「なるほど……キミは合衆国のスパイという訳だ」
澤口さんから、身柄確保の合図、スパイ、の言葉が発せられた。しかし……一瞬の出来事であった。3人が動く前に、シャロンと呼ばれていた秘書が3人を制圧してしまった……。顎と腹に一撃を喰らった2人のボディガードに意識はない。澤口さんは羽交い締めになり、為す術もがない。
「佐藤さん、そりゃないだろ。銃を所持してる時点で敵対行為、更に身柄確保の動き……何か申し開きはありますか? 佐藤……いや澤口さん」
「分かっていましたか……この度も本当に申し訳ない」
「もし、私が害されたりしたら……合衆国を敵に回すことになりますよ。出来れば自重してほしかった……」
澤口はもうお詫びをするしかなかった。替え玉の澤口は秘書に絞め殺されそうになっている。
「申し訳ない、許してくれ……」
「では誠意を見せろ。まず、私の問いに答えろ、飛行機事故、そして伊集院姫さんの安否の事だ」
「それは……」
「シャロン、殺せ」
「はい……では……」
「わかった、もう止めてくれ……。姫は……生きている、それでいいか……」
シャロンも桜井という青年も……人を殺すことに躊躇がない事がわかる、あの目、澤口は何度も命を狙われているので、よく分かる。
「そうか、やはりな……では会わせろ」
「それは無理だ……私も所在は知らない。相川くんなら知っているだろう……相川くんに会わせるという事で手を打ってくれないか……」
「そうか、残念だ………」
桜井という少年は懐から銃を取り出した……。何という事だ、今まで替え玉として4人が殺された。涙を呑んで生きながらえて平和産業の維持のみを掲げて生き恥を晒してきたというのに……
「最後に言い残すことはないか……」
「私の身代わりになって死した4人の替え玉に申し訳ないと……伝えたい……」
澤口は目を瞑った。
「目を開けろ……では……」
トリガーが引かれる…………
小さな音と同時に……銃口から何かが飛び出している……ドッキリ成功と………書いてある。
「澤口さん、ここは日本だよ? 殺せるわけ無いやん(笑)」
桜井という少年は……なんと爆笑している。秘書も澤口の替え玉を開放した。
「なんで……こんな事を……」
「だってアナタも用意してたでしょ、フザけた銃を……どうせカラーボール弾とか入ってたんだろ(笑)」
全てお見通しってことか……逆らうのは無駄なようだ。
「澤口さん、コードゼロって知ってますか? それは私のことです。私は個人的に伊集院さんに会いたいだけなので……それと私に全面協力するなら、日本政府とアナタの企業に特別に協力してやってもいい どうかな?」
「分かりました、桜井さん」
「いや、ヤマトと呼び捨てにしてください。」
みなさんいつもありがとう
定例更新します。第一章で完結させるか……考え中(笑)