それぞれの初詣
「姉さん、とっても似合うわよ!」
「何言ってんの リーナもニーナも最高よ! さすが、私の妹!」
シャロンはご機嫌である。クリスマスの警護任務のご褒美として、日本の着物が贈られた。しかし自分達では着れない、というなんとも不思議な服。年末に贈られてきて、ネットで着方を調べてチャレンジしたが袖や裾がテロテロになってしまいイマイチ、結局美容院でセットしてもらうことになった。シャロンは深緑地に牡丹があしらわれている着物を着ている。リーナは梅や竹のような柄、ニーナは桜の柄だろう、双子なので薄いピンクの生地が主体になっている。
「みなさん、とてもお似合いですよ! これから初詣でも行かれるんですか?」
美容院の店員さんに質問された。とても上品な中年女性、その完璧な仕草、どこかの国のスパイかも知れない。
「えぇ、これから浅草へ行こうかと……」
シャロンは日本人を装った。いかに平和と云おうともロア大統領も襲撃されていて襲撃者は合衆国の特殊部隊に数名殺されている、やはり常に警戒が必要。
「3人ともとても美人なので、外人さんとかに囲まれちゃいますよ(笑)」
なるほど……敵国のスパイではなさそうである。浅草という場所には敵対する勢力の外人部隊がいると、警告してくれている。
「いや、私達強いので大丈夫ですよ」
「? そうなんだ…………」
しかしシャロン行き先を変更しない。銃火器の携行が許されないこの日本においては他国のスパイに遅れを取ることなど考えられない。それもリーナとニーナもいる。
「もし誰かに囲まれたら死なない程度に半殺しにしておきますから、安心してください(笑) ありがとうございます」
シャロンは同盟国のスパイとおぼしき人物に感謝を伝えた。
「姉さん、さっき店員さんと何話してたの?」
「情報交換だよ、浅草にはわが祖国に敵対する勢力のスパイ部隊が潜伏してるらしい、2人とも気をつけて」
妹達に注意喚起をした。そして、敵地、浅草に乗り込む…………。美容院から浅草はタクシーで30分程度、大きな赤い門のところで降りた。人が多い、ニュース等で見たことがある風景そのもの、これは格好のテロ標的になる、シャロンは警戒を怠らなかった。
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ニーナは心から嬉しい。とても素敵な日本の民族衣装を着ていて、髪も可愛らしく、たくさんの髪飾りを付けてもらっている。シャロン姉さんがさっきから変なことを口走っているが、それはどうでもいい。軽く受け流している。
「リーナ、凄い人出よね。お参りってここから並ぶのかな?」
「そうみたいよ 最後尾って書いてある」
タクシーから降りると一気に視線を感じる。今日は日本の特別な日、民族衣装を着ている人が多いかと思いきや……かなり少ない。そんな中、3人で民族衣装を着ているので注目を浴びている。
「ニーナ、人混みに紛れたいところだが、この格好では厳しそうだな……不穏な輩が近づいてきてら先手必勝だぞ」
「はい?」
またシャロン姉さんが意味不明なことを……まあ放っておこう。そして、参拝するのに赤い門の外あたりから並んでいる。門をくぐると華やかな商店街になっている。カワイイ物がたくさん売っている……これが、平和というものなのか……。
「しかし長いわね。遠くにまた門が見えるわよ」
リーナは列に並ぶ事に飽きている。リーナのことだ……所々にある甘い匂いに心が動いているのであろう。袖が長いので歩くときには気を遣う、そして、相変わらず注目を浴びていた。
「もうちょい我慢しようよ、せっかく来たんだから!」
ニーナはお参りを終わらせた後の買い物が楽しみでならない……可愛いものかたくさん売っている。ストラップも髪飾りも、今着ている民族衣装に似た色合いのものがある。
二度目の門をくぐってからはすぐにお参りができた。アジアにあるお寺の匂いは同じである。お参りするときお金を入れるようだが……
「シャロン、お金って持ってる?」
「あるわ、これでいいよね…………」
大きめの札である。
「みんな硬貨投げてるけど持ってない? 硬貨投げて音するのが醍醐味じゃない?」
シャロンはなんと隣にいたカップルに声をかけ、札を硬貨を交換してもらっている。なんと、カップルは硬貨を渡してくれたが、札は受け取ってくれない……貰ってしまったようだ……。
「可愛いからって、貰えたよ。着物っていいな(笑)」
シャロンが笑う。そして3枚の硬貨を3人で分けて周囲と同じように木箱に投げて手を合わせる……お願いは……ヤマト様の幸せ……である。
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神頼みとは、かなり無駄な時間を過ごしていると思っていたリーナも、参拝を終えてから目を輝かせた。たくさんの屋台を発見したのだ。さっきの商店街にも甘い匂いが漂っていて興味をそそられたが、その比ではない。
「姉さん、ニーナ、何か食べよう……あのオムレツがいい! それと……丸い奴ヤツ、たこ焼き? それとそれと…………」
知らない食べ物ばかりである。まるごとリンゴが売ってたり……。興味をそそられたのは雲のような食べ物……わたあめ と書いてある。
「リーナはここでも料理人だな(笑)」
「姉さん、これは興奮しますよ。ところでニーナは?」
3人が和服でよく目立つ。ニーナはある屋台にかぶりついて見ている。
「どうしたの、ニーナ」
「リーナ、姉さん、これ…………」
ニーナが見ていたのは可愛い鶴、飴でできていて食べられるみたいである。中国圏でも飾りの為の包丁技術はある、が、これは……手作業、そして製作時間が短い!
「これは買って帰ろう!」
日本の食文化は奥深い、リーナは日本の料理をもっと勉強したいと、心から思った……。
みなさんいつもありがとう
新年になりました。執筆は第一章の最後を仕上げています。第二章の冒頭のエピソードは決めていて、第二章のラストのエピソードも決めてあります(笑)。第二章では新しいキャラ(後輩)も登場させます!




