事後処理
ロア大統領は以降のスケジュールを全てキャンセルして逃げるように日本を去っていった。次の日、ジャックは事件の収拾にあたっていた。
「ジョージ、参ったよ。結局、ロア大統領を襲撃したのはヤマトだったとか……洒落にならないよ」
「ジャック、それは予想外だったな。あそこまでロアが馬鹿で愚かな奴だったとは…………ヤマトの行動は予測できただろ?」
「だから命を奪うことはないと分かっていた。どっちに転んでもあの場の裁判官はヤマトだ。彼に一任したよ」
ヤマトやヤマトの学校関係に危険が及ぶことは想定していた。ネオユニシスから守るために、ヤマトから例え確率が低くとも、ロア大統領が帰国するまでは警護して欲しいと言われていた。それがまさか……大統領側の人間が襲ってくるとは……
「そうだな。もし……ヤマトの同級生や家族に実害が出ていたら命はなかったな(笑) まぁ、合衆国が付いている限りそれはないが……」
「で、ジョージ。ネオユニシスが全面投降の用意があると言われたのは本当か?」
「ああ。元々穏健派だからな。今回のヤマトとロアの事件を彼らに伝えた。そして合衆国はロアを指示しない、とな。恐らく人質でも送ってくるだろう……面倒なことだ」
「ネオユニシスのトップは……北欧で複数の国籍を持っていたな……人質が女だったらヤマトの所にでも送ろうか(笑)」
「そりゃいい(笑) 今回の追加報酬だ(笑)」
ジャックは今回のヤマトとロア大統領の会談がサラの意向によって行われた事だと知っている。ロア大統領は会いに来た訳でなく、会わされたのだ。そして、ロア大統領の処遇の最終判断について、ヤマトの判断を聞きたかった。何せ、ヤマトはタロニアを救った英雄なのだから。しかし……サラが意見を聞く前に、判決は下ってしまった。
△△△△△△△△△△△△△△△
「あおい、昨日の帰りは怖い目に遭わなかったか?」
「うん、大丈夫だった。リーナとニーナとニカと静の4人で帰ったんだけど、途中でリーナとニーナが仕事があるってその場を離れて……静とニカ、3人で帰ったわ(笑)」
「そうか……よかった」
「どうしたの? あの後トラブルとかあったの? なかなか電話繋がらなかったし……」
「単に忙しかっただけよ。蓮見大臣も来てたしね(笑)」
「ヤマト、現職の大臣と知り合いなんだ……すごいね」
「大丈夫! もっと凄くなるから! 来年は蓮見ちゃん総理大臣になるらしいし」
「うそー! 最強の友達ね(笑)」
「でも……蓮見ちゃんより、あおいの方が大切だから!」
「もう、やめてよ(笑)」
「ごめんな、さすがに今日は疲れたから明日に備えて英気を養うよ。華々しいパーティなんだろ?」
「ダンスタイムはないけどね(笑)」
ヤマトは任務を完了した。今回は最後のひと幕でどっと疲れた感じがある。何事もなかったのに、全く残念でならない。なので今日は自分を甘やかすと決めている。
「あおいか隣に居てくれればそれでいいよ(笑)」
「ねえ、ヤマトさぁ、まだ疲れてるでしょ。愛の囁きがイマイチよ(笑)。電話切るからゆっくりと休んで。明日までに元気になってね!」
「あおいもいい嫁さんになるな。ありがとう…………」
あおいには昨日の状況確認をするために電話をした。恐らく危険を感じ取った双子姉妹があおい達を守ってくれたのだろう……2人には改めてお礼をしなくては……。
ジャックとジョージから提案があったオンラインでの会話は疲労を理由に断った。ジョージからは今回の報酬としてスイス銀行の貸金庫に金塊が納入されることになっている、これはサラからのお礼だそうで断れない。
(とにかく、今日は休もう……)
ヤマトはダラダラを過ごす事を決意した。
△△△△△△△△△△△△△△△
ジャックが双子のマンションに車で迎えに来た。今回の身辺警護の労をねぎらう為に妹達も含めてお食事に連れて行ってくれるという。妹達のリクエストは……ファミレスだそうだ、ヤマト達との夏の思い出が忘れられないのであろう……。
「シャロンはやはり最強ね! 襲ってきた相手って大丈夫だったの? 咄嗟の襲撃じゃ、手加減なんて出来ないでしょう……」
「そうそう、その事なんだけど、襲ってきた相手は首の骨を折ったが回復しそうだ。任務とはいえ、死んでしまっては後味悪いだろう」
シャロンはホッとした。ずっと気にかけていたことであった。せっかくヤマト様から頂いた平穏、それを打ち壊す事になるのではと懸念していたのだ。それに……この日本では殺人は一般的に言うと犯罪、そして人の命を奪うことにシャロンは罪悪感を感じていた……日本とはそう思わせる平和な国なのである。
「リーナとニーナも同級生守ってたよね」
「当然でしょ! 私達のクラスメイトなんだから」
「君たちは本当に強いよな。特殊部隊も傍観してたらしいぞ……不意打ちしてあっという間だったって(笑)」
三姉妹が共通して持っている特性、それは危機回避能力。リーナやニーナも危険を察知する能力に長けている。その能力があるため不意打ちという常勝戦法が使える訳である。
「これ、美味しいね……普通っぽいのがいいかも」
「3人とも……本当にここで良かったのか?」
「ジャック、私達は普通がほしいの……普通の日常、食事も仕事も……恋も(笑)」
ニーナは天使のような笑顔で話している。
みなさんいつもありがとう
事後処理も済んで次は事務所の納会です。重大発表もあります。




