集合
ゆりさんはとても気さくな方、ではなくフワフワした雰囲気である。人を包み込むような……あおいはすっかり話に夢中。あの笑顔、この世のものとは思えない。
ふと気付いた。ボディガードの2人がいない。クライアントを残して何処に行ったのだろう? まさかカトレア祭を観に行ったとか…………。舞さんはサッカー部の部室に行く、と言い残して出掛けている。今頃サッカーファンに囲まれている事だろう。話していると、宏太さんと美優が来た。
「宏太さん、ちょっと見回りしてきていいですか?」
「分かった。ここは任せなさい!」
ヤマトは校舎の方向に向かった。旧校舎3階、そこだけ回っていなかった。漫画研究部と写真部が個展を開いている。ここを視察するとヤマトの受け持つ視察は完了である。
3階について各部活の個展を回る。回り終えて階段に向かうと渡邉先生が階段を上に上がっていた。渡邉先生はヤマトに気付いてない……その上は屋上へ繋がる扉がある。気になった。そっと跡をつけることに。
やはり渡邉先生は屋上に出た、扉が開いた音がした。ヤマトは扉が完全に閉まる前に扉を押さえる。隙間から様子を伺った…………
「久しぶりねー」
そんな話をしてるのか……楽しそうな雰囲気で数人が話している。だが会話の内容までは流石に聞こえない。ここで待っていても見つかるのを待っているようなもの、ヤマトはそっと扉を閉めて3階へ降りる。
(誰だろう……渡邉先生と会ってるのは……)
屋上の扉から誰が降りてくるか確認したい。そのまま3階で張ることにした。
15分ほど待った。扉か開いた音がする。数人が出てきたようで、鍵を閉めている音がする。3階を通りかかる時に見た人影…………渡邉先生、舞さんは確認できた。あとは、男性ボディガード、もう一人は全く分からなかった。人数は4人くらいか多くて5人、とても警戒してるようなので、これ以上の追跡は諦めた。
ヤマトは可能性を考えた。恐らく同級生の集まりであろう、渡邉先生と舞さんは同級生、そして男性が1人、恐らくあと1人だと思われるが……女性っぽい。男性が2人いるなら話し声の中に必ず男性の声が入るから。確か、渡邉先生の学生時代から男性がカトレアに入学しているはず。ヤマトの推理がロジック的に成り立つ。この追跡はここで終わろう…………。
予定より30分以上遅れてプリンセスホールに戻る。ゆりさんの控室に行くと……カレコン出演者で満杯になっている。即席の撮影会、ゆりさんは笑顔を振りまいている。撮影が終わった出演者はそのまま控室を後にする。
「あおい、どうなってんの?」
「えーとね、ヒメリンのこと色々話してたら……ゆりさんが突然出演者全員と記念写真撮りたいって……。それで集合させて記念写真撮って、あとは個別撮影になって……」
「ゆりさんってそんなフランクな方だったのかな?」
「分からないわ、急に始めたから……思い出したように」
写真撮影が終わってからヤマトはお礼の挨拶に
「本当にありがとうございました。みんな大変喜んでました」
「いえいいのよ。あおいだけ贔屓したとか、言われたくないし。ヤマトくん、そろそろ私の着替えるから……」
ゆりさん、着替えると言っていたが……控室に戻っていたあの男性ボディガードはそのまま控室に残ったままだ。女性ボディガードも……。
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ゆりさんとお話をした。そしてヒメリンのことも。ユアプロに所属してると話したら、連絡先も交換してくれた。日本のトップ女優が友達になった……。思い出すとボーッとしてしまう、窓の外を見ると日が落ちつつある。
(そろそろ準決勝だ……)
準決勝が始まった。あおいは撮影で使っている思い切った水着を着ている。赤、それがあおいの好きな色。赤いビキニ、今日は無敵な感じがした。スポットライトが当たっても全く恥ずかしくはない。男性の目線はやはり特定の場所に集まる気がしたが、それもへっちゃら。気づいたらアピールタイムが終わっていた。
「清水あおいさん、ありがとうごさいました! 今一度大きな拍手をお願いします!」
歓声が、拍手が、胸に響く…………。
決勝が終わり最終審査を待っている。あおいの周囲のには決勝まで残った6人が揃っている。ブレザー部門は3人、いよいよ発表だが、結果は……負ける気がしない。ヤマトがグランプリを発表する。
「それでは先ず、ブレザー部門の大賞の発表です……カトレアビューティーコンテスト、ブレザー部門、グランプリは…………清水あおいさん!
涙なんて出ない。気分爽快である! これで……どうしても欲しかった副賞も手に入る。これはユアにとっても大きい、と思っている。
「ではブレザー部門のグランプリを獲得しました清水あおいさんには、武田百合さんから副賞が贈られます」
「さぁ、清水さん、どの副賞を獲得しますか?」
「はい! これが欲しくてカレコンに出場しました! ヒメリンの複製原画をお願いします!」
会場は一瞬静かになるが……笑いと納得の大拍手! そして、ゆりさんが複製原画を持ってあおいの目前に……
「あおいさん、本当におめでとう(笑)」
ゆりさんは……なんと! その複製原画にキスをしてから渡してくれた…………原画にゆりさんのキスマークが付く、その瞬間、地響きに似た歓声が起きた。
あおいは感動のあまり泣いてしまった…………
みなさんいつもありがとう。
謎の会合を目にしたヤマト……正体は、まだ分かりません。第二部に分かるかな(笑)




