友人
「ありがとう、ジョージ」
「ドウイタシマシテ ヤマト ニホンゴ ウマク ナッタデショ?」
入学式が終わった後に合間をみてすぐジョージにお礼の連絡を入れた。普通のネット回線で話すときはあまり長くジョージとは話せない、盗聴の懸念がある。
「みんなビックリしてたよ。さすがですね。ところで頼んだ件はどうですか?」
「ヒコウキジコ ノ コト? シリョウ オクッタヨ アトデミテネ」
「いつもありがとう。学校終わったら読ませてもらう」
やはり持つものは友だ。伊集院さんの事故はアメリカの領海で起きている。これで詳細がある程度分かるだろう。その調査の見返りが今回の挨拶である。早々に携帯を切る、あまり長く話していると危険もある、友人と言えど相手は元合衆国大統領なのだから……。
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「みなさん、昨日の入学式、お疲れ様でした。今日から早速授業が始まります。その前にクラス全員で自己紹介をしていきましょう!」
(しかし可愛い先生だな……カトレア卒業生間違いないかも。周りの子も可愛い……)
あおいは渡邉先生や周囲の女子を眺めていた。男子には興味ない……噂によると男子は女目当てで猛勉強をしてきたクズが多いと聞く。だが、さすがに自分の目の前に座っている桜井ヤマトくんは気になる。新入生代表ってことは試験が首席ってこと。容姿は……至って普通、身長は180くらい、ナチュラルな黒髪の短髪で目鼻立ちは整っている。秀才には……見えない。
「では次、桜井ヤマトくん」
「桜井ヤマトです。カトレアには花嫁探しに来ました。よろしくお願いします」
やっぱコイツもクズか……と、あおいは思う。
「桜井くん、どんな子がタイプなのですか?」
「うーん、共通の趣味がある方がいいです。容姿はあまり気にしません」
「趣味ってなんですか?」
「音楽が好きです。ジャンルはロック系ですね」
まあ典型的なカトレア男子って印象だが、悪い気分はしない。何せ首席である、生徒会にも入るであろうし、人気者になりそうだ。でも……タイプではない。
「では次、清水あおいさん」
「はい!」
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自己紹介、普通を装った。花嫁探しなんて言ってしまったがまあいいだろう。
「清水さんって、もしかしたら有栖川あおいさんですか?」
「はい」
教室から歓声があがる。後ろの席の清水さん、芸能人らしい。よく見れば確かに……有栖川あおいだ。ソコソコ歌のうまいハッピーハッピーという3人組のユニットで所謂センター的な存在である。肩まで伸びる髪は茶色、白い肌で整った顔だが、笑顔が印象的だ。嫁候補にはピッタリだが、世間の注目を集めたくないので……仲良くなる候補からは除外だ。
「ヤマト、芸能人がクラスメイトってさすがカトレアだな。勉強頑張って良かったよ(笑)」
「ヒロシは女目当ての入学だったもんな。頑張れよ!」
「なんだよヤマトだってヨメさん探しって言ってたろ」
「あれは、目立たないようにする為のカモフラージュだよ。あまり学校では目立ちたくないんだよ」
「それ、もう無理(笑) 首席で入った時点で諦めた方がいいぞ。さっきもヤマトの話ししてた女子いたぞ! ヨメ候補に立候補されるかもな(笑)」
とにかく普通の男子学生と思われればいい。面倒事は厄介だし、モテたいとは考えてない。残念ながら日本の法律では1人しか選ぶことはできないし……。
「勉強で目立つのは仕方ないな。瓶底メガネ美人でも見つけてヨメにするよ(笑)」
今日は入学2日目。ホームルームのあとは新入生歓迎会があり、午後からは早速授業である。
新入生歓迎会は主に部活動の勧誘の場である。運動部の紹介もあるのでホールではなく体育館で行われる。女子サッカー部と吹奏楽部は全国レベル、最近は放送部も全国大会に出場してるらしい。様々なレクリエーションが終わり、勧誘合戦が始まる。
「あの、桜井くん。是非生徒会に入ってくれないか! 校長から話は聞いてるかな? 私は生徒会長の疋田だ」
早速現れた。生徒会の勧誘。今の生徒会は女子のみ、以前は男子も必ず入れていた様だが、昨年からジェンダー公平というスタンスから男子だという理由で勧誘するのは禁止されている。
「疋田さん、校長先生からは聞いていますが……」
「私も聞いてるよ、人の下につくのが苦手なんだって? なら一旦生徒会に入って、7月の会長選挙に出ればいい。もし、落選しても副会長にはなれるぞ。
「校長先生との約束なので入ります。よろしくお願いします疋田会長」
「ありがとう!」
ヤマトは疋田会長に抱きしめられた。疋田会長はスラッとした美形、長い黒髪、今にも見えそうな短いスカートからスラッとした足が伺える。ヤマトはドキッとした。
「あまねさん! その癖やめてっていったじゃないですか。ごめんなさい桜井くん、会長ってすぐ抱きつく癖があるの、気にしないで、好意があるとかそういうんじゃないから」
そう話してきたのは背の小さな女の子。いかにも秀才感がある、メガネをかけているが似合ってない、とにかくヘンテコりんな子だった。
「あー、ごめん、みのり。嬉しくて! これで会長選挙の人員も確保できたし! みのりのライバルね!」
この人達、まあまあ面倒くさそうである。
みなさんいつもありがとう
間違えて前作の追加を先程こちらに投稿してしまいました。これがホンモノです。