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シャロンの授業

 シャロンはほぼ毎日働いている。平日月曜から金曜までは学校に行く。土曜はジャックからの依頼がくる。今のところジャックの依頼は隔週なので、休みはある。休みの日はトレーニングと訓練の進め方のマニュアルをチェックする。もっと妹達やヤマト様と行動を共にしたいが、そういう訳にはいかない。


「シャロン先生本日はお願いします」


 今日は2年生A組とB組合同の訓練の時間。護身術を教える事になっている。妹達やヤマト様と同じ年代、体格はいい。栄養状態は良さそうである。


「はい、では護身術の訓練を始めます。まず皆さんにお聞きします。この中で戦闘経験がある方いますか?」


 経験者は貴重である。シャロンは経験者を募り補佐をさせようと考えた。ヤマト様のような歴戦のツワモノでなくていい、敵に対した事がある生徒が望ましい。


「(笑) 先生! それ男性経験ってことですか?(笑)」


 神聖な授業だというのに……コイツラふざけているのか……それにしても盛り上がっている。


「そうではない。そうか、皆は日本人だから司令官という立場なのか! でも今日は護身術、実践的に教えていくからな」


 勝手に理解を口にして、早速手ほどきを始める。まずは誰にでもできる、腕を取って関節を決める体術、見本を示すと全員が笑顔で取り組んでいる。体格もあるので上手く決まる、上達するのは早そうである。


「みんな体格もいいし、栄養状態も申し分ない。それに実戦経験がないのに体術も習得出来そうである。とても素晴らしい!」


 生徒はシャロンが褒めると盛り上がる。タロニアで同じ任務にあたった時は殆どの兵士が死んだ目をしていたが、ここは違う。やる気に満ちている、訓練を重ねれば強力な対人特殊部隊が編成出来そうである。


「シャロン先生! 質問なんですけど、シャロン先生って彼氏とか居るのですか?」


 それ、よく聞かれるヤツだ。妹達に汚れ仕事をさせまいと、女を武器にする仕事を請け負ってきたシャロンにとっては、到底理解が出来ない質問である。


「そんなものはいない。出来たこともない」


 シャロンが発言する度に盛り上がっているが、今日一番の反応を見せる。更に目が輝いている女子生徒もいる。更なるやる気がみなぎっているみたいである。


「ではそろそろ時間です。体術は反復が大切です。今日の動きを忘れないよう、訓練の時間以外にも練習しておくように。では解散!」





 一通り学校での訓練が終わり、残務処理をした。割と早く終わったので久しぶりに妹達のマンションへ寄ることにした。




「いらっしゃい、シャロン姉さん!」


「ニーナ」


「今日はヤマト様もいらしてるわよ。全員集合ね!」


 部屋に入るとリーナとヤマト様がいた。


「珍しいわね、お姉様。なかなか学校ではお話できてなくて、とっても気になってたの。お変わりありませんか?」


「うん、何もない」


「いつもありがとうな、シャロン。ところで授業はできてるの?」


「授業? 訓練のことかぁ。問題はない、タロニア時代の新兵教練をやってるだけだ。それも超劣化版かな」


「どんな…………怪我人とか出てない?」


「怪我するようなことはしておりません。少年のそれも予備兵に教えるような護身の基本だけです。でも生徒たちのやる気が感じられて……楽しく教えていけます」


「それは良かったな。オレはその授業受けないけど、よろしく頼むな」


「わかりました」



△△△△△△△△△△△△△△



 ヤマトは生徒会室にいる。みのりと2人きり、変なモーションもかけられず、静かな時間がすぎるだけ……。


「ヤマト、シャロン先生って知ってるでしょ? あなたのクラスの副担任とか言ってたけど」


「シャロンがどうしたの? 何かしでかした?」


「先生なんだから呼び捨てはダメよっ! 2年生の体育て習ってるんだけど、大人気なの! 女子に……カッコいいって」


 カッコいいかぁ……。彼女はそのカッコいい技術を使って命を繋いできたというのに……何故こんなに違うのか。


「美人で若いし、格闘全般の達人ですからね。女子が憧れるのも無理ないですよ」


「へー、ヤマトはああいうお姉様がタイプってこと?」


「それはないですよ。彼女、本当に従軍してたんですから……変なことしたら縊り殺されます!」


「大袈裟ね(笑) それにシャロン先生って大真面目な顔して冗談ばっかり言うのよ(笑) こうすると兵士が苦しまずに死ぬとか、エッチの最中がオトコを殺す最大のチャンスだとか(笑) 真面目な顔して……それも楽しいの!」


 ヤマトはうまく表情が作れない。シャロンが体験してきた地獄の日々……それが楽しいもの、と認識されている。普段もシャロンからは悲壮感が感じられない、双子の妹を守ることが最大の望みで、それが励みになったからであろう。そして、その望みは今、達成されている。


「みのりさん、その事が事実だったら……どう思いますか?」


 ヤマトは怖い顔をしてみのりさんに問いかけた。


「なわけ…………」


「シャロンの体験が授業を受ける生徒とのコミュニケーションに役立ってるなら別にいいですね……忘れてください」


 これ以上は言うまい。

みなさんいつもありがとう。


三姉妹の物語を入れました。本当は姉妹を色分けしたかったのですが、双子は基本の色を揃えるべき、と考えてます。

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