夏の夜空
「凄い料理だったね、本格的というか……」
「それは……多分食材のせいだよ。勝手に好きもの取り寄せていると思うから」
あおいはヤマトと2人で星空を眺めている。心はドキドキ、でもニーナ達の事を思い出すと胸が痛くなる。それを直接ヤマトに聞くような度胸は……ない。
(メイドさん達ともこんな夜空を見てきたのかしら……)
「星、少しだけど出てるね……」
「星かぁ、眺めたこともなかったな。心に余裕がないとなかなか気付かないもんだね、星なんて……ところで最近は大丈夫なの?」
「うん! ヤマトのお陰かも。仕事を少しセーブしてるけど、夢に向かってると思う」
「あおいの夢はデッカイからな。いつも応援してるぞ」
話の流れからすると……メイドさん達とはロマンティックに夜空を眺めたことはないらしい。そんな小さな事も幸せに感じる。ニカは静を連れて2回目の露天風呂、ヒロシは気を利かせてお手洗い……戻ってくることは無いだろう。
「あおいにはちゃんと話しておくね……あのメイドさん達は、戦争孤児なんだ。親を殺され、拾われて戦闘員になった……敵兵と戦い、命をかけて生き延びてきた。そして……敵兵の死体の山を築きあげた。ニーナは敵兵に捕まり捕虜になった。抵抗したため、目を潰されたんだ。大切な自分を守るため……」
あおいは話を聞いていて青ざめた。自分の世界とは程遠い、戦争、を体験している。想像も出来ない、あー駄目だ、両親を殺されて……敵を殺して……、涙が出てくる……止めどなく。
「私……」
「彼女達はここで社会勉強をしてる。オレはいつか3人がこの平和な日本で穏やかに暮らしてもらうことを臨んでるんだ。あおいの涙、綺麗だ……きっと心が虹色なんだよ」
ヤマトの言葉には優しさが籠もっている。この人、鈍感人ではない、私の気持ちが分かってて……。ついに夜空の星が見えなくなってしまった。
「いいよ、星が見えるようになるまで待ってるから」
あおいヤマトの胸の中で泣いた……。
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「あの2人なかなか戻ってこないわね……」
ニカは静とヒロシと3人で同じ部屋にいる。
「いい雰囲気になることは先ずない。オレも少しだけメイドさんのこと聞いたけど、ここでは話したくない」
「なによそれ…………」
「静、一言だけ言っておく。静は人を殺したことがあるか? 自分が撃った銃で脳ミソが飛び出す、そんな経験をしたことあるか? それだけで察してくれ」
静は顔を押さえた。ニカも泣きそうだ。テレビの中の出来事としか認識していない事を体験してきている、それは……
「2人とも泣くな! それは違うだろ。俺たちが彼女達の不幸な過去を悲しむのは筋違いだ。もっと建設的にいこう! オレ達、何か彼女達にしてあげられないか……考えてみようよ」
ヒロシは良いことを言っている。チャラくてお調子者だと思っていたニカはヒロシを見直した。ヤマトと同じ優しい心の持ち主なのだろう…………
暗い時間が流れた。どれ位経ったのだろう、ヤマトとあおいが戻ってきた。部屋に全員が集まった。
「あの、ごめん………」
「いいの……私達もニーナさん達のことを聞いて……あおいも同じだっのよね」
「うん」
「なら話は早い、今ここで話し合う議案は……ニーナちゃん達を喜ばせる企画だ! 伊集院さんの調査は後日話し合おう!」
ヒロシが真っ先に言い出した。ニカも賛成である。こうして明日の予定はミーティングではなく、みんなで遊びに行くことに決定した。
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次の日になった。朝食はリーナが高級食材で作る和洋中混合オリジナル料理、独創的な味だ。食事のあとに5人はニーナが管理する庭園に招待された。庭園は花畑になっている。色とりどりの花、しかしヤマトは花の名前は詳しくない。
「みなさん、これ、私が育てたんです。これは紫陽花、菜の花、…………」
ヤマトはニーナが女性陣に花の名前を嬉しそうに解説している。ヤマトにとってはニーナの笑顔こそが花であり、華があると感じた。
話をしている途中で出発の仕度が出来たシャロンとリーナが庭園にやってくる。
「ヤマト……この庭園、絶景だな!」
「なんだまた下ネタか(笑)」
「いやいや、あの6人美しすぎるだろ。どこの坂道グループより上だよ(笑)」
「言われてみれば……」
これから全員で買い物に行くことになっている。車は8人乗りのバン、迷彩柄になっていてかなり目立つ。これで渋谷まで繰り出そうという。大丈夫なのか……
「ではみなさま、車にお乗りください」
「ヤマト……シャロンさんってこんな大きい車運転大丈夫なの?」
静が小声でヤマトに聞いてきた。
「全くもって問題ない……はずだよ。彼女は自走砲や戦車も操縦できるから…………」
しかし、実際は違っていた。高速に入るとかなりのスピードを出す。運転の技術は相当なものなのだろう、車の間を縫うように走り抜けていく……。
みなさんいつもありがとう
夏休みイベント継続中! 次回はみんなで渋谷へ!




