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すがりたいもの

 藤川校長は淡々と話を進める。予め新入生の言葉なる紙を渡される、これを話せということか……つまらない学校だと感じる。


「あのー、藤川校長。これ読むだけなんですか?」


「それは任せる。別に思ったことを言っても構わん。あまりハレンチな内容意外ならな」


 内容はお任せの様子。ヤマトはどこまで自由になるかを試したくなった。ミクが言う通りの学校なら大概の事は許されるはず……


「わかりました。それと……恐らく私宛に多くの著名人から祝電やレターが届きますが、ひとつビデオレターを流してもよろしいでしょうか……」


「ビデオレターか……ここは生徒の自主性を重んじるカトレアだ。内容が問題なければ許可するが、事前に教えて貰えないか」


 内容の確認は無理というものだ。恐らく本人がライブでつなげてほしいと言い出す人だから。あまり言いたくはなかったが校長先生には伝えておこう。


「あの、恐らくアメリカから生配信で来ますので……事前の確認は難しいです。でも箔は付きますよ(笑)」


「で誰からだ」


 ヤマトは小声で校長先生に耳打ちをした。さすがの校長先生も驚いている。


「こんなに驚かされるのは久しぶり、どういう関係なのだ……」


「そうですね、友人というか、私が日本語の先生をしてますから、生徒さんですかね。本人も日本語の実践をしたいのでしょう」


 新入生の言葉のカンニングペーパーを渡されたときは諦めていたが、ビデオレターもすんなり通った。生徒の自主性はホンモノである、国立中学のスタンスとはまるで違う、学校に聞くと却下されるのでよくサプライズしたものだ。


「確かに学校の格が上がるな。それは大いに結構なことだ。よろしく頼む。ところで桜井くん、君は部活などは決めているのかね」


「特に決めてません。ここでの3年間は人生の息抜きって決めてますので。大学はもう決まってますし」


「それは面接の時に聞いたな。それなら生徒会をやってくれないか」


 中学の時、生徒会にはあえて入らなかった。それよりもすべき事が多かったと言える。小学校高学年から中学卒業までの間、ヤマトは人脈を作った。若い、というメリットを最大限活かしに活かし多くの方と知り合ったのだ。


「生徒会長なら別に構いませんけど……あまり指図されたことがないもので……」


「なるほどな……会長選挙は7月にある。今まで7月の会長選で勝利した1年生はいないがな。チャレンジする派なのか? それは大いに結構。立候補の為にも生徒会に誘われたら入ってみたらどうだ」


 それは良いかもしれない。ダラダラ学校生活をしても仕方がない、色々やってみよう!


「では誘われたら入ることにします」



△△△△△△△△△△△△△△△




(久々に凄い生徒が入ってきたものだ。交友関係はかなりのもの、立ち居振る舞いも立派。その割には素直な面がある。大成するタイプだ)


 藤川はそう考えた。昨日、藤川の教え子である伊集院の事故の知らせを聞いた。どん底の精神状態であったが、校長としての責務がある。そこで思わぬ出来事……桜井ヤマトという少年、何者なのだろう。


「お疲れ様です」


「あら、渡邉先生。今日は新入生受け入れの準備とかしてるの?」


「はい。これから3年間一緒ですから……」


「さっき新入生の言葉を担当する桜井くんと話していたんだけど、あなたのクラスよね?」


「はい、恐らく」


 渡邉先生は藤川がまだカトレアで担任を持っていた頃の教え子。とても物静かで可愛らしい学生であったが、当時と変わらぬまま教師になった。男子生徒には絶大な人気がある。


「では渡邉先生、彼のことで問題が起こったらすぐに私に相談するように。トラブルメーカーの匂いが……」


 トラブルメーカーといえば……伊集院。ここでこの言葉を使ったことに藤川は後悔した。


「あの……だな。伊集院……残念だな……」


「はい…………実は…………3月の頭に姫から連絡貰ってて……何があっても心配しないで、って言われました。その言葉……で、勇気を貰って前を向けてます……」


 渡邉は特に姫とは親しかった。伊集院のその言葉……何かを予感していたのだろう。軍事産業と真っ向敵対する平和産業として名を馳せた㈱ミライ、これで関係者の死は公に出来ない者も含めると25人目になる。伊集院も覚悟しての入社だと藤川は聞いている。


「そうだな。伊集院のことだからな。明日あたりひょっこり学校に現れてもおかしくない。私も信じてみることにするよ」


 藤川も何かにすがりたい気分である…………



△△△△△△△△△△△△△△△



 ヤマトは家に帰った。道中、ずっと伊集院姫の事を考えていた。確か藤川校長は彼女の担任だったはず、悲しい素振りも見せずに淡々と仕事をしていた、尊敬に値する。気丈でないと校長は務まらないという事か……。


「ヤマト、帰ったの? ご飯出来てるからね」


「わかった。今いくよ」


 この3年間は親孝行をすると決めている。小学生の時から9年間別々に暮らしていた。そして、アメリカの大学に進学か決まっている。どんな言葉も受け入れてくれて、ここまで育ててくれたミク、大切に出来る時間は限られている。


「はやくしなさい!」


「オーケー」

 みなさんいつもありがとう


さすがに最初は見られませんねそんな中、ブッマークをしてくれた方ありがとうございます。今日もどうにか1話投稿できました。

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